小林正啓のレビュー一覧
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戦後の法曹界の内幕物。特に2000年前後の司法改革をめぐる弁護士たちの世界の状況や動向がよくわかる。著者自身が弁護士でありながら司法改革を傍観者的に眺めていたことから、業界の内部事情に分け入りつつも冷めた感覚で物事の成り行きを綴ることができたのだろう。正義はそれぞれの立場の数だけあり、大事なのは自身の立場を相手に受け入れさせていく権力闘争のスキル。そのぶつかり合いの中で形成されているバランスこそが社会正義である。それが著者の考えである。このスタンスからすると、日弁連は己の立場を政府・裁判所・検察に尊重させることのできなかった落第生ということなのだろう。著者は、人権派弁護士がこれまで社会の弱い部
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ともすれば陰謀論に陥りがちなテーマをバランス良くまとめられているという印象。中立性を保って歴史記録にとどめようとする姿勢は,世代は違えども同じ一会員として色々と思うところもあると容易に想像できる分,尊敬の念を禁じ得ない。
内容的にはさもありなんという感じで,驚きはない。もちろん,会務に携わる個々の弁護士の労力は相当なもので,そのエネルギーは素晴らしいと思うが,残念ながら組織として有効に機能していないという状況は今でも変わらない。給費制にせよ法曹人口論にせよ,過去から真摯に学ばなければ,失敗は繰り返されるだろうし,組織としての求心力はもちろん,制度の存続も危うい。
しかし,内容はともかく, -
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企業法務マンとして、司法試験合格=2000~3000人時代になったら、弁護士資格者が企業の中に入ってきて、資格のない自分なんて、淘汰されるだけではないか。。。。。という6-7年前くらいからの不安はあり、それは自分なりに心の中で解決してきたつもりであった。
しかし、何故司法試験合格者が2000~3000人になるのか?については「どうせアメリカの圧力だろう」程度で、深く考えては来なかった。
この本は、「司法試験合格者大増員」・「法科大学院構想」といった制度改変が、日本弁護士連合会(日弁連)が「法曹一元論」の達成という勝ち目のない戦いを行う際に、バーター的に進められたものであったが、日弁連の政治 -
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司法試験合格者が想定外に増えていないことはニュースで知っていたが、そもそも何千人も合格させる必要があるのかが不思議ではあった。
そんなに弁護士いるのかぁ?と。
その疑問に対しては本書を読んで理解した。
そう、いらないんである。
日弁連は、弁護士が増えれば職にあぶれることは十分わかっていた。そもそもは司法試験合格者を増やそうというのは、検事と裁判官を増やしたいお上の意向が働いているのである。
一方で、日弁連は法曹一元を実現したかった思惑がある。法曹一元とは、司法試験合格後はまず皆が弁護士となり、その中で適性あるものが検事、裁判官となることである。
弁護士から選ぶことで真の人権意識にあふれた検 -
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[ 内容 ]
弁護士の大増員を決めたのに、仕事はまったく増えず、法科大学院を出ても、司法試験に受かるのは一部のみ。
なぜ、こんな“ちぐはぐ”なことになってしまったのか?
東西冷戦、バブル崩壊、司法改革―骨肉の闘いだった法曹の戦後史をひもとくことで、「日弁連の姿」をはじめて明らかにする。
弁護士たちの追い求めた夢と挫折、そして、これからの弁護士の姿とは。
[ 目次 ]
第1章 なぜ日弁連と裁判所は仲が悪いのか?
第2章 日弁連が分裂する中、司法改革が始まる
第3章 日弁連、最大の失敗
第4章 迷走と抵抗
第5章 法科大学院構想
第6章 法曹一元と日弁連の熱狂
第7章 決戦、そして敗北
第8章 -
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法曹人口増員したのに仕事は全く増えず、ロースクール出ても合格するのはほんのわずか。そんな凸凹な法曹界の戦後史を追ったもの。
日弁連は悲願だった法曹一元と引き換えに司法試験合格者3000人増と法科大学院設立案を飲んだ。しかし、その実は法曹一元など実現されず、日弁連の敗北に終わった・・・という骨子。
読んでいると、司法改革の中で当事者意識の低さと意思決定の遅さが目に付く。今弁護士を目指されている方は日弁連という組織の中身を知っているのだろうか?知らないならこの本を先に読んでいた方が良い。多分失望する。だがこの組織、司法の歴史は知っておいた方がいいのではないか。
日ごろ、立法行政だけでなく司法にも目