渋井哲也のレビュー一覧
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ネタバレ多くのケースが紹介されていて、自殺の実態の一端を知れる。また自殺を防ぐ難しさもよく伝わってくる。
印象的だったのは、ネット心中で複数人で集まったものの色々な理由で場所を変えていったケース。葛藤の現れだったのかも知れない。
「おわりに」で「遺族は家族だけじゃない」としているが、その通りと思う。著書の取材対象で既遂となった方は40名に上るとある。著者ご自身の精神的負担も相当なものであろうに、これからも取材は続けると宣言されており、頭が下がる思いだ。大変重要な仕事をしておられるが、くれぐれもご自身の心身の健康も大切になさって頂きたい。
最後に、個人的に強く共感した箇所を引用する。
「当初、私 -
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渋井哲也『ルポ 座間9人殺害事件 被害者はなぜ引き寄せられたのか』光文社新書。
座間9人殺害事件を再検証するルポルタージュ。
普段は文庫を中心に読んでいるのだが、たまたま書店で目にした新書のタイトルが気になり、手を伸ばした。
2017年に発覚した僅か2ヶ月の間に9人もの若い男女を殺害し、遺体を損壊した上で自宅アパートに遺体をクーラーボックスに保管していたという類い稀なる猟奇的な犯行。犯人がSNSで被害者を選定していたという恐ろしい事件の詳細が犯人との面会を含めた綿密な取材により浮かび上がる。
誰もが匿名で自身の心中を吐露できるSNSは悩める者にとっては精神安定剤のような役割を果たす反面 -
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2019年のいじめの認知件数は、前年度より6万8,563件増え、過去最多の61万2,496件となった。
そして、自殺した原因が、いじめと認定された小中高生の数は317人いる。
これは、驚くべき数字だろう。
ただ、この数字は、多分過少されているだろう。教育委員会は、「基本方針として」いじめと自殺を結び付けたくないからだ。
日本は、今も、昔も、いじめに対して、自浄作用などない。
大人たちが、本当に解決しなければいけない問題だと思っていないからだろう。
また、これは、学校だけの責任だけではなく、日本人全体の問題として、
捉えられていないからだろう。
日本では、毎日1人以上の中高生が、自ら命を -
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【目次】
序章:子どもの自殺者数はなぜ過去最多を記録したのか
少子化にもかかわらず増え続ける子どもの自殺/10代自殺の象徴「トー横」のリアル/子どもの自殺はどんどん増加している/子ども・若者の自殺にはどんな特徴があるのか/自殺とは何か/「生きづらさ」と自殺
第1章:こども家庭庁と自殺対策室
こども家庭庁の誕生と子どもの自殺対策室設置/「こどもの自殺対策緊急強化プラン」は本当に有用なのか/こども庁設置の動きはどこから始まったのか/「子どもの権利」は与党には浸透していなかった?/地方議員の会も自殺問題に声をあげる/こども大綱での「子どもの自殺」の扱われ方
第2章:虐待と自殺
虐待 -
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とても後味が悪い本。
筆者はネットや自殺に詳しい人だし、取材も尽くされているはずなのに、この筆者をもってしても事件の背景が掴みきれない、得体の知れない気持ち悪さが残る。事件の残虐さに結びつくような、加害者の生育歴だとか認知の歪みとかが出てこない。一方で死にたい人の孤独感が簡単につけ込まれてしまうのはよくわかる。
支援職として自殺予防にも取り組む上で、自殺を防ぎたいし、関わった相談者が危うい人間関係に取り込まれて傷つくことも防ぎたい。支援者の手の届かないところで、白石のような人間の動きがあるのが現実の社会だし、怖いけど、支援者としてはできることを精一杯やるしかないのだな、と思う。 -
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死にたくて死にたくて死にたくてどうしようもない時、白石のように漬け込まれたら、自分だったら絶対助からない。
相手の都合なんか知らない、自分の「死にたい」を早く片付けたいと思うだろう。
その気持ちが一時的なものだったなんて、その時にはわからない。
自分が白石のような人間に出会わなかったのは、ただの偶然に過ぎないと思う。幸運と言うべきかも迷う。
犯人の白石については、殺意と性欲ががっちり結びついたケースだと思うけど、まともにやれば女にも金にも困らなそうなのに、なんでこんな手法に辿り着いてしまったのだろう。
普通に働くより9人やるほうが大変だと思うけど、そっちの方が楽なことなんてあるのか。
理解 -
Posted by ブクログ
この事件の怖さは、犯人の過去を遡ってもどこに猟奇的な事件を犯す背景(犯行に至るまでの真の動機)が見つかっていない事だと思う。
SNSの普及によって、より簡単に自分と同じような感覚や考えをもつ人を見つけて交流できるようになった。
日常会話ではしないような希死念慮(タブーとされる死の悩みなども)知らない誰かが共感し、弱みにつけ込んで巧みに相手をコントロールしていく。
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■2ヶ月間に9人殺害。
事件の流れ、裁判の様子が詳しく書かれていたが、被害者との出会い方から殺害までが流れ作業のように全て一貫している。
『自分がヒモになれる人探し』ゲームをしているように -
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事象の羅列、文章の前後関係がわからなかったり事象がどこから切り替わったのかわからなかったりするが、得てして自殺するものの心理を考察している。
死にたいというより消えたいという感覚になるということだが、消えたいと思うことは誰しもあるのではないだろうか。そこでしばしの死んだあとの妄想で粛々と現実を生きる人と、決行してしまう人との差は何なのか。そこにはあまり差がなかったりするのだろうか。原因追及については現在も進んでいない状態とのこと。
いずれ死ぬのだから、死ぬまでこの世を楽しめばいいと思う。それは私が恵まれた環境で健全な心の持ち主だからそう思えるのであって、家族や環境に恵まれなかったりすると違う -
Posted by ブクログ
自殺者やその遺族のインタビュー、自殺の種類、社会と自殺、国や学校での自殺対策など、自殺についてのルポ。
前半は自殺に関する統計や法律等々で少し読みづらい感じだった。また、自殺に関する出来事が羅列されているような印象。こういう人はこういう方法で死んだ、のような。
後半から自殺対策の話や、子供、女性の自殺について書かれている。
SNSのホットラインに相談する人のほとんどが女性だということに驚いた。コロナ禍でも女性の自殺が多いということで、もしかすると「話をする場」が奪われてしまったことも原因なのかもしれないと思った。
自殺者をどう防ぐか。「自殺や自傷はしてはいけない!」と言い続けることが、