スヴァンテ・ペーボのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
邦題はダイレクトだが、原題は“Neanderthal Man: In Search of Lost Genomes”。原著は2014年刊。著者スヴァンテ・ペーボがノーベル生理学・医学賞を授与されるのは、この8年後の2022年。
ネアンデルタール人のゲノムを取り出し解析するという冒険の一部始終が語られる。自伝的なエピソードもたっぷり入っている。それにスウェーデン人で、ドイツで研究。それらが混然一体となって、ふしぎな読後感がある。
時系列で書かれた研究の進展はスリリング。快いほどのスピード感がある。ネアンデルタール人と現生人類が交配した可能性については、かなりの紙幅を割いている。2014年の刊行な -
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Posted by ブクログ
とてもおもしろく、一気に読んでしまった。そもそも読んだきっかけは、ResearchatというPodcastでおすすめ本として紹介されていたからだ。気軽に読み始めたのに本当に惹き込まれてしまい、ページを捲る手もわくわくも止まらなかった。「ネアンデルタール人は私達と交配した」ということは教科書やニュースで聞いており、更にアフリカを起源として人類がどう世界に発展してきたかも既に現在図説などでは当然の知識として載っている。その当然のものがどのようにして明らかになったのかと問われた時、「DNAを比べたから」という非常に簡潔な言葉一つで普通は終わり、そこにあまり感動もなければ驚きもない。しかし実際そこに行
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Posted by ブクログ
まず、この本は非常に面白い。『イヴの7人の娘たち』や『アダムの呪い』のように、遺伝子解析によって人類の歴史をたどる話は、自分にとってはほぼ外れなく面白いのだけれど、この本は特に研究界の競争の実情がよく伝わる内容になっていて興味深い。
本書では、著者のスヴァンテ・ペーボが、古代生物のゲノム解析の研究者として成功し、マックスプランク進化人類学研究所を率い、その分野の第一人者となる物語が自身の手で描かれている。その過程では、古代生物解析におけるDNA汚染の回避に向けた地道な闘いや、他研究機関との協力や競争の内実、研究者としてのテーマ選択やキャリア形成、メディアとのやりとりなどが描かれていて実に面白 -
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Posted by ブクログ
ノーベル生理学・医学賞を受賞されたということで拝読しました。
そこまでDNAに詳しいわけではありませんが、高校生物に毛が生えた程度の知識でもとても楽しく読み進めることができました。DNA分析のカギを握るPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)はここ最近よく聞いた言葉の一つではないかなと思います。
興味深かったのは、ペーポ博士が元々はエジプトのミイラの研究をしたいと思っていた点です。同じく研究していた医学とそれを組み合わせたことから、このDNAをめぐる大きな研究が始まったともいえます。
多分野に興味を持つと、往々にして「どれか一つにしておきなさい」と言われることがあります(本文中のペーボ博士もそうです) -
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Posted by ブクログ
生物をバックグラウンドに持っていないと難しいかもしれない。生物基礎レベルがあれば読めるが、実験レベルの知識はないと結構読むのむずいかも。
PCR黎明期なだけあってそっち方面の苦しみが多く描かれている。PCRは簡単じゃねえんだよワイドショー!
そしてさり気なく作者に暗い影を落とす東西冷戦。スウェーデンは第三世界にあったおかげでなんとかなっているけど、これ作者が西側出身なら絶対できず諦めるしかなかった内容だよなあ。
ネアンデルタール人と現代人の差の研究は面白い。ミトコンドリアが母系遺伝である以上、ミトコンドリアイブのものを受け継いでいるはずだが、当時(20年前程度)の技術は現代と比べると未熟 -
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Posted by ブクログ
分子生物学を古代DNAに適用したパイオニアが書いた自伝的な本。古代DNAと言ってもネアンデルタール人みたいに数十万年前のものまで。それより古いとDNAは失われてしまっているそうだ。恐竜のDNAを復元したなんてニュースも昔あったが、それはとんでもない誤りだったそうで。そういった試行錯誤も込みでの科学の現場が描かれていて読み物として楽しめるし、分子生物学の知見や古代のDNAを復元するむずかしさについても興味深い。
ただ理論的なところについては、半分わかったものの半分はハラに落ちなかった感じ。PCR法の説明なんかも昔読んだ福岡伸一の本のほうが分かりやすかったので、引っ張り出して復習してしまった。時 -
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Posted by ブクログ
ネットで見かけて。
9割ぐらいの部分はわかっていない。
ネアンデルタール人と現生人類が交配した、結論付けるまでのDNA解析の進歩や研究の過程が描かれている。
かなり噛み砕いて書いてあるのはわかるが、
それでももう少し面白い部分を増やしてくれないと、難しくて読んで理解する気にならない。
古代の標本からDNAを抽出するために、こっそりオーブンで子牛のレバーのミイラ作りをして、ラボの人々に臭いとばれてしまった話とか、著者の結婚に至る話とか、毎年自分はネアンデルタール人じゃないかと思うという手紙が届く話とか。
ネアンデルタール人から現生人類へDNAが流れ込んだ、つまり二つの集団が出会った時ネアン -
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Posted by ブクログ
「ジュラシックパーク」が上映された頃は、何千万年前の化石から恐竜のDNAが採取されたことが話題になったが、DNAは極めて変質、分解しやすく、恐竜のものの採取は不可能というのが最近の常識らしい。
当時「採取」されたのは、混入した他の(もしかすると採取した研究者本人の)DNAだったのだろう。
本書には、こういった「汚染」を除去しながら、前人が試みなかったミイラや化石からのDNA取得とゲノム情報解析を著者(とそのグループ)が、数多の困難を乗り越えていかに実現したかの、30年にわたる苦闘の歴史が記されている。
それだけでも感嘆するに余りあるのだが、本書には著者の性的嗜好というかジェンダー傾向も隠さ -
Posted by ブクログ
我々の中にネアンデルタール人のDNAが残っいる・・その事実については、まあだからどうした、というくらいの感想しかないのであるが、その事実を明らかにする過程がスリリングである。というか、真の科学者というのはここまで「科学」に対して誠実であることができるのだということに感動した。。
掘り出された古代のDNAにはすでに現代の微生物や人のDNAが混入している。それらから目的のDNAだけを取り出し、増幅する。だが、目的のDNAだと思ったものがやはり混入した現代人のDNAだったりする。様々な設備や装置や仕組みを自ら開発し、2重3重のチェックを自らに課し、そしてたぶん科学ではもっとも重要なことの一つ「再 -