大野典宏のレビュー一覧
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もう長いこと「泰平ヨン」だったから、変な名前だけどそういうものと受け入れていたが、これは最初の訳者・袋一平が、主人公の名前 Ijon Tichy をそのように訳したのが始まり。Tichyはロシア語の「静かな」を舌足らずにしたような感じらしく、苗字を「泰平」にして、名前のイヨン Ijon をヨンと表記したのだという。ニール・アームストロングが「腕強ニール」になるという感じか。泰平ヨンは『航星日記』、『回想記』のシリーズのあと、この中編『未来学会議』と長編『現場検証』、『地には平和を』で主人公として登場する、ピルクスと並ぶレムの重要登場人物である。
今回ヨンは宇宙飛行士ではない。タラントガ教授 -
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「ソラリス」の作者レムには泰平ヨンが主人公のシリーズがある。「泰平ヨン」とかいうダジャレ的なセンスが嫌いだった。「泰平」という字面は今も嫌いだ。そんな偏見で、こんなに面白い本を読まずにいたわけだ。
主人公の泰平ヨンはコスタリカで開かれる未来学会議に参加する。その会議のテーマは、破滅的に人口激増した世界とその増加の阻止だ。この人口増加による危機というやつは、原著が書かれた頃(1971年刊)には良く言われたものだったように思う。近頃なら地球温暖化になるのだろう。さて、ヨンが会議に参加する理由がよく分らないというのっけからカオスが突っ走るが、テロ事件が起きてあっと言う間に氾濫する。軍部の出動、薬 -
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p.189
「何事にたいしてももはや自然な反応をするものなどだれもいないのだー化学薬品の作用で学習し、人を愛し、反乱を起こし、ものを忘れるのだー薬物で操作された感覚と自然のそれとの間には違いがなくなっている。」
レムのSFを読んだのは、ソラリス以来かな?相変わらず一文一文奇妙な文章だらけなのに伏線が回収されなくずっと話が続いていく感じで捉えどころがない。でもとんでもない未来への想像力、予想もつかない展開、そしてちらりと見える社会問題への皮肉など読んでいて楽しい。
薬品がドラえもんの道具みたいで面白かった。
一層剥がれるたびに残酷な現実が、という瞬間が恐怖。 -
Posted by ブクログ
スタニスワフ・レムの泰平ヨンシリーズ。以前読んだ「泰平ヨンの航星日記」がとてつもないユーモアと深い洞察に富んでいたので、同シリーズのこちらを購入。
またしてもタラントガ教授の甘い言葉に誘われたヨンは、地球の人口問題の解決を目的に開催される国際未来学会議に出席するため、単身コスタリカを訪れる。ところが、会議の最中にテロが勃発。避難するヨンや他の出席者たちであったが…
いいオチです。というか、まさかここまできて、このオチがくるとは思わなかった笑 それまではレムの手がけるドラッグ社会の神秘と脅威が縦横無尽に飛び交っていたためか、もはや注意が逸らされてしまいましたよ。して、物語の中心となるそのドラ