大野典宏のレビュー一覧
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もう長いこと「泰平ヨン」だったから、変な名前だけどそういうものと受け入れていたが、これは最初の訳者・袋一平が、主人公の名前 Ijon Tichy をそのように訳したのが始まり。Tichyはロシア語の「静かな」を舌足らずにしたような感じらしく、苗字を「泰平」にして、名前のイヨン Ijon をヨンと表...続きを読むPosted by ブクログ
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「ソラリス」の作者レムには泰平ヨンが主人公のシリーズがある。「泰平ヨン」とかいうダジャレ的なセンスが嫌いだった。「泰平」という字面は今も嫌いだ。そんな偏見で、こんなに面白い本を読まずにいたわけだ。
主人公の泰平ヨンはコスタリカで開かれる未来学会議に参加する。その会議のテーマは、破滅的に人口激増し...続きを読むPosted by ブクログ -
コスタリカで開催される未来学会議に参加した泰平ヨンはテロ事件に巻き込まれ………。
ドラッグに満ちた未来世界を描きつつ、その世界を何度もひっくり返すことでディストピアっぷりを露わにしていく手際が鮮やか。他の作品同様、人間の "認識"や"知性"の限界というモチーフが見え隠れするのもレムらしい。
それに...続きを読むPosted by ブクログ -
自分史上いちばんエグいディストピアものだった。ドラッグで万能の理想郷に魅せられている間に、現実は地獄のように、自分の体がオリジナルじゃなくなっている恐怖。 映画『コングレス未来学会議』を先に観たんだけど、そのときは刹那的に世界や人間が変容していくことに対しびっくりするほど泣いた。ただ本作には泣く要素...続きを読むPosted by ブクログ
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p.189
「何事にたいしてももはや自然な反応をするものなどだれもいないのだー化学薬品の作用で学習し、人を愛し、反乱を起こし、ものを忘れるのだー薬物で操作された感覚と自然のそれとの間には違いがなくなっている。」
レムのSFを読んだのは、ソラリス以来かな?相変わらず一文一文奇妙な文章だらけなのに伏線...続きを読むPosted by ブクログ -
レムのユーモアものってちょっと苦手にしているのですが、やっぱりレムなので読んでみる。
70年代の冷戦時代に書かれた、ディックばりの薬物で現実がコントロールされてしまう世界。
トリガーが薬物なだけで、自分が認識している世界は現実のものなのか区別がつかなくなってしまうという点では仮想空間と現実の融合が...続きを読むPosted by ブクログ -
ただのほら話でも、クスリの見せる幻覚の模写でもなく
現代からみてリアルなところはないのに、
そっちの方向ではなく知恵を使って
現実の世界を変えていかなければ
とてもグロテスクな世界になるということ、
数々の造語と、言葉の変化で楽しませながら、
当たり前ではあるが、主人公よりぶっ飛んでいるのは
これを...続きを読むPosted by ブクログ -
スタニスワフ・レムの泰平ヨンシリーズ。以前読んだ「泰平ヨンの航星日記」がとてつもないユーモアと深い洞察に富んでいたので、同シリーズのこちらを購入。
またしてもタラントガ教授の甘い言葉に誘われたヨンは、地球の人口問題の解決を目的に開催される国際未来学会議に出席するため、単身コスタリカを訪れる。ところ...続きを読むPosted by ブクログ