久々にあらすじだけでときめいた小説。値下げもされていたのでその場で買って一気読みした。興奮した。
<1960年代の旧ソ連を舞台に、実験飛行で宇宙ロケットに乗せられる吸血鬼の少女と、飛行士候補生の少年が出会い訓練を供にする>という、抜群すぎるログライン! 読み終えても、ほとんど期待した通りの内容で、そ
...続きを読むうそうこういう感じ欲しいよね! みたいなのが素晴らしいシェフの献立のように用意されていた。二人がバディになるまでが早い分、訓練生としての日常パートは必要最小限かつちゃんと面白いものになっていて、ぐいぐいと最後まで読ませてくれた。ちゃんと資料をあたったであろう部分は特に出色だった。
逆に、ライトノベルだからなのかもだけれど、キャラクターの心情をかっこ悪いくらい明からさまに地の文に書いていたり、セリフが色々直接的すぎていたり、もうちょっと伏線が丁寧に出来るはずじゃないか、と思える場所がとにかくあって、「よしよし! ここからは大人の力でさらに直していけば完璧だね」みたいな……感じがあった。後半にあるどんでん返しもぜんぜんサプライズじゃないしな……。小説というより、超ー長いアニメ映画の初稿プロットのようだった。終わり方もロマンティックだけれど、盛り上がりには欠けていたと思うし、何より飛躍がまったくなかった。
しかしとにかく食材が一流なので、がっかりするというより充実感のほうがずっと上回るし、何なら自分ならさあどこを直そうか、みたいな建設的な頭の回転が始まるので、やっぱりこれはシンプルにいいアイデアの話だと思う。「ラノベでしょ?」って多少食ってかかれば、ちゃんと想定年齢の読者以上でも楽しめます。……どうしても『とある飛空士への追憶』がちらついたけれど。あっちは「小説」としてもパーへクトだったんだよな……(逆に言えば、あらすじだけならあの作品以来くらいの衝撃でした)。