ロバート・ジェームズ・ウォラーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレたった一度の出会いを丁寧に綴った作品。
社会での役割と責任に捕らわれ馴らされる人と、束縛を逃れ群れを嫌う人。
愛に落ちた二人のどちらもが大人の常識に従って判断した結果、そこに居るべき人が居ないまま、人生を過ごすことになった悲しい物語。
形は変わっても現実にはよくある話だから、そんな状況とも付き合いながら生きていかなくちゃね。
というシンプルなストーリーを、見事なラブ・ロマンスに昇華させた小説。
重要な小道具としてNikon Fが登場する。
作者自身も写真が趣味らしく、表紙の写真は作者の撮影だそうだ。
それが関係しているのかどうか、一冊の写真集を見せられたような読後感でした。
Nikonで撮られた白黒の写真。その写真の隅から隅まで、饒舌に、緻密に、だけど分かりやすく順序立てて語ってくれる。
一点の齟齬も許さない程の正確な記述で、ロバートとフランチェスカの気持ちも行動もしっかりと伝わってくる。
語りすぎちゃうのん?
ま、設定がアルバムを見ながらということもあるし、でも本当はそれは再現映像だし、という多重構成。
小さなワン・テーマをこれほどまでに拡げて組み立てた作者の「構成力」に脱帽。
各パートをこの形式・順番に置くことができた時に、作品として成立したのだと思う。
勉強になりました。
なんだか小説はこう作れ!の見本のように感じた。
例えて言うなら、料理の先生が小さな小麦の塊を叩いて延ばして細く切り、湯がいて味付けをして魚介と合わせて作ってくれた、でも美味しい美味しいパスタかな。 -
Posted by ブクログ
12「あらゆるものが組織に組み込まれていくこの世界にあって、いまや自分は時代遅れになりつつある特異な男性的動物の一種」
14「日に日に無神経になっていくこの世界で、わたしたちは瘡蓋だらけの感受性の殻に閉じこもって暮らしている。どこまでが大いなる情熱で、どこからつまらない感傷がはじまるのか・・・わたしたちは大恋愛であるかもしれないものをせせら笑い、純粋な深い感情に感傷のレッテルを貼ってしまいがちだ。」
61 私もフランチェスカ。人々は温かく、自然に恵まれた田舎。でも、生活のこと、他人の噂しか耳にしない。芸術がない。それがつらい。こんな考えを持つ私は‘やわ’なのかしら?その営みに軽い反発を覚える私は、一人の人間として、まっとうかしら?そんな物足りない生活に、異国の地から、180cm以上の、痩せぎす、強靭でしなやかな、菜食主義の放浪詩人、進化の樹の末端の男、最後のカウボーイが来たら、必ず恋に落ちる。連れ去られてしまう。リチャードの大馬鹿野郎!欲情しろよ、こんないい女・・・。
85「太古からのしぐさ」
115「習慣は予測を可能にし、予測がつくということにはそれなりの快適さがある。」
128「世の中はどんどん組織化されていく・・・規則や、法律や、社会的な約束事、権威の序列、管轄、長期計画だとか、予算案。力をもっているのは企業だし、<予算>がすべてを支配しているんだ。」
129「機械を操作するのは人間だけど、それには勇気や体力は必要じゃない。人間はもう必要ではない。ただ精子銀行さえあれば済む・・・放し飼いはなくなり、わたしたちは組織化され、感情を素直に表さなくなっている。効率だとか、有効性だとか、そういう知的な小細工が蔓延している。」
130「現代の悲劇は、長期的な弊害が生じるおそれのある場所で、男性ホルモンが優位に立っていること。たとえ国家間の戦争や自然破壊がなくなったとしても、わたしたちが互いに近づくのを妨げたり、わたしたちを大切な問題から遠ざけたりする攻撃性はなくならない。」
132「思い出にふけるのを自制していたのは、生きてゆくためだった。」
146「わたしには忌々しい責任がある。リチャードに対する、子供たちに対する責任が。」「罪悪感が彼女を変えてしまうかもしれない。」
187「信じがたい、強烈な、すべてを超えた愛の営み」羨ましかった。愛って、太古からのしぐさって、こんなに素晴らしいなんて。こんなにも人の心を打つ、射止める。すごいんだ。他人事のように。切なかった。何で結ばれないの?この世のルール、責任、他の人を深く傷つけるから。悔しかった。そんな煩わしさに。愛が負けることが。でも、リチャードを殺してまでも、愛に身を投じられる?出来ない。「自分だけ」なんて耐えられない。罪悪感に押し潰される。きっと楽しめない。運命のばかっ!
愛しているから離れるというのが一番美しいかもしれない。4日間だったから、最高の愛だったのかもしれない。不倫が悪いなんて、誰が言える?ついていってしまったら、だめかもしれない。死ぬほど愛する。いいもんだと初めて思った。怖いけれど、そういう風になってみたい。
189「世界はあまりにも合理的になり、人々は魔術的な力を信じなくなってしまった。」
きっとどこかで、フランチェスカでもあり、ロバートでもある部分が存在する。ロバート・キンケイドが死んだ。私の恋人であるかのように、私の心は痛んだ。