スザンナ・キャハランのレビュー一覧

  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験。スザンナ・キャハラン先生の著書。正気と狂気を見極めることができない精神科医。精神疾患である人とそうでない人を見極めることができない精神科医。もしそうであれば精神医学に意味はあるのと疑問に思う人がいても不思議ではない。でも狂気に苦しむ人がいて精神疾患で苦しむ人がいることは紛れもない事実。精神医学や精神科医に完璧を求めたところで仕方のないこと。

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    2022年08月15日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    ローゼンハンの偽精神患者の実験は広く知られている。しかし、そのニセ患者が自分と院生以外はいたかどうかわからない、という結論である。サイエンスに掲載された論文とともにこれを読むことがいいと思われる。ただし、400ページの本文のうち250ページは偽精神患者実験の説明であり、残り150ページがそのニセ患者の真偽をめぐる話である。したがって、この本を読むだけでローゼンハンの実験の説明になっている。
     シンバルドや電気ショックの実験についても、それぞれ実験の過剰操作としての電気ショックの強要や、囚人役の過激な演技が記載されているが、これをもっとで説明している本が翻訳で必要であろう。

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    2022年04月29日
  • 脳に棲む魔物

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    感動的で貴著な本である。

    著者、スザンナ・キャラハンは本にある病気になった時24歳。
    訳者のあとがきにあるように、本書の構成は、前半が著者の次第に悪化していく詳細な精神症状と、医師による相次ぐ誤診、診断が確定されない中どんどんと精神状態が悪くなっていくさまと困惑する周囲の記述は、ホラー小説を読むかのよう。

    実は私は読む前から診断名を知っていたし、精神科医でもあるので、この前半は読み進めることが非常に辛かった。我が身を振り返っても、24歳という若さで幻覚・妄想が出て来た場合、統合失調症ないしは双極性障害と診断してしまう可能性は高い。あえて言えば、突然の発症、それまでの社会適応からして、『この

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    2015年05月22日
  • 脳に棲む魔物

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    ネタバレ

    発表当時は珍しかった、自己免疫性疾患が突然発症した女性の、ご本人による回顧録。
    こうした書物を読むときは、

    ・日本とは異なる保険診療/自由診療混合医療の国で起きた事である。
    ・書かれている内容は、現在また異なる基準で判定されたり、価値が変わったりすることがある。

    の2点に気をつけながら読みます。
    そして読み終えました。

    不幸な偶然が3個積み重なった人と、幸運な偶然が3個積み重なった人の差に想いを馳せざるを得ません。著者は後者でした。
    幸運その1.『ポスト』の正社員で、保険会社が診療費をカバーしてくれたこと。
    幸運その2.両親も、恋人も、経済的に自立しており、著者を支える余裕があったこと。

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    2014年10月03日
  • 脳に棲む魔物

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    一気に読めるミステリーを超えた一冊。

    これがフィクションではないということも驚きだが、
    この病を乗り越えた彼女が
    偶然にも物書きであり、
    のちに情報を集めて本書にまとめられたことは奇跡のようなものだ。

    既存のミステリーに飽きた人にぜひおすすめしたい。

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    2014年07月18日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    この本は閉鎖病棟の実験による不完全な論文が影響を与えた精神医療改革の光と影を追い続けた。
    著者は精神医療の傲慢さやいい加減さを認めつつも、なお精神医療が発展して、将来信頼にこたえてくれると信じている。
    精神科病院の実態だが、まるで刑務所の囚人のような閉鎖病棟に普通の人が入っても、出た時には精神病になっているんじゃないかというくらい、ヤバい場所だとわかる内容。
    一方で、社会心理学から精神科病院の質を調べるために偽装患者として潜入することは、不要な治療、不要な検査を受けたりしてしまうという点で、非常にリスクがあると感じた。
    詳細はぜひ本書で確認してほしい。
    映画を見ているようなスリリングな展開力で

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    2025年08月18日
  • 脳に棲む魔物

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    細かい描写が多いなぁと思ったらノンフィクションでした。冒頭から胸が痛む場面が続きますが、快復期に向かって主人公が本来の快活さを取り戻す過程はなかなかのカタルシスがあります。
    登場人物たちも小説?と思われるほど魅力的。変わってしまった主人公の周りは、それでも家族愛に溢れていて胸を打ちます(私/家族が病に侵された時、彼らのように愛を以て接することはできると言い切れるでしょうか?)。まぁ快復期に現れる無神経な親戚や友人も印象的ですが。
    病理を解明する専門医がいる一方で、(やむを得ないとはいえ)盆暗な町医者もいます。ノンフィフィクションだからこそ、良いですね。

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    2024年06月11日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    著者には脳炎を精神病と誤診された過去がある。危うく精神病棟に移送されかけたが、別の医師が脳炎を見抜き、事なきを得た。なぜ簡単に誤診が起きてしまうのか? 精神病とはいったい何なのか?  著者は自身の体験から、こう問い続けた。脳疾患と精神疾患の境目について調べていく内に、著者がたどり着いたのは「ローゼンハン実験」だった。

    ローゼンハンと実験協力者は、統合失調症の症状を偽って訴え、精神病棟への入院を果たした。入院後、自分たちの症状が「回復」するまでの経緯と精神病棟の現場における実態を詳細に記録した。研究成果は「狂気の場所で正気でいること」という論文に結実し、権威ある学術誌である『サイエンス』誌に掲

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    2022年09月21日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    1973年に行われた精神病院潜入実験「ローゼンハン実験」の真相を探求した刺激的なノンフィクションでした。本文にもある「もし正気と狂気が存在するなら、違いはどこにあるのか?」が本書のテーマでしょうか。結末がやや曖昧でした。偽患者として精神病院に潜入する体験談が(真偽はともかく)スリリングでした。

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    2022年08月25日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    めっっっちゃ読むのに時間がかかった。文章自体は凄い読みやすかったと思うんだけど、うーん…。
    内容は、二転三転していてスリリング。あらすじも覚えていなかったので、中盤以降の展開は実に面白かった。

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    2021年11月04日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    原題は『The Great Pretender』、大詐欺師やなりすまし役者などといったニュアンスの意味を持つタイトルの本書。本書は、1973年に科学誌「サイエンス」に掲載され
    たアメリカ心理学者デイヴィッド・ローゼンハンの「狂気の場所の正気の存在」という論文を巡る一流のノンフィクションである。

    この論文が主張は極めて鮮烈であった。それは「精神科医は、正常な人間と精神病の患者を見分けることができない」というものである。その主張を裏付けるためのアプローチが凄い。というのも、ローゼンハンは自らを含む8名の偽患者に、嘘の病状申告をさせて精神病院に入院させ、診察や治療のデタラメさなどを暴き出すというも

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    2021年05月09日
  • 脳に棲む魔物

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    映画「エクソシスト」さなからの狂気の症状になる脳の炎症を患った筆者の体験とその病のリポート。
    すごい勢いで悪化する病、異常な症状、ひたすら信じサポートする家族とパートナー。
    巻末の謝辞で平凡だがと感謝の言葉です残した筆者の気持ちが痛々しいほど伝わる。

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    2014年10月21日
  • 脳に棲む魔物

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    世界衝撃ストーリーといったようなTV番組で紹介されるようなタイトルですが、これはノンフィクションである上に、病気そのものから、そして病気による脳神経損傷からの快復をめざして闘いながら患者本人が書き上げた本です。語られる症状の重さを読み進めると、この事実だけでも驚くべきことでした。

    病にかかる前の日々においても、自分にとって大切なことを持つことが、快復への希望を持ち続けるために重要なのだと認識させられました。

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    2014年10月06日
  • 脳に棲む魔物

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    (No.14-17)  ノンフィクションです。

    内容紹介を、表紙裏から転載します。
    『マンハッタンでひとり暮らしをする24歳の新聞記者スザンナが心身に変調をきたしたのは、ある朝突然のことだった。
    最初は虫に噛まれたものと高をくくっていたところ、徐々に左腕がしびれそれが左半身に広がっていった。
    同時に、仕事への意欲を失い、部屋の片付けさえ出来なくなる。幻視や幻聴を体験した末、口から泡を吹き、全身を痙攣させる激しい発作を起こすまでになる。

    医師の見立てでは、精神障害ないしは神経疾患。てんかん、双極性障害、統合失調症の疑いをかけられるが、処方薬は全く効果が無く、検査でも原因を突き止められない。症

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    2014年08月14日
  • 脳に棲む魔物

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    ちょっとおどろおどろしさを感じる表紙写真でホラー小説か何かを想像してしまいそうだが、脳を侵すタイプの自己免疫疾患にかかった、ニューヨークポストの記者である著者の闘病記である。

    著者が「映画『エクソシスト』の主人公の少女が私の症状とそっくり」と評しているのを読めばお分かりかと思うが、想像を絶するほどの壮絶な症状の連続に、よくぞご家族は諦めず寄り添い、徹底的に原因の追求まで辿り着いたものだと思う。この病気が解明されたあとの発病だったことも幸運だったとは思うが、当時、まだ医療関係者にさえあまり知られていない病気だっただけに、本当にラッキーだったのだろう。
    また、壮絶な闘病のなか、周囲の人々が日記や

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    2014年08月11日
  • 脳に棲む魔物

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    ネタバレ

    ニューヨークポストの記者が自身の体験を書いた体験記です。
    著者は2009年に病気になるまでは、社交的で話し好きな有能な記者だった。しかし徐々に精神的におかしくなっていく。部屋にシラミがいるという確信が離れず、彼氏の部屋をあさったりし、徐々に仕事がうまく運ばなくなる。かかりつけ医や神経内科医へかかるが、異常なし。しかしついに痙攣発作を起こす。そしてニューヨーク大学に入院するが、その後幻覚などが出現し・・・
    前半は謎解きのようなホラーミステリーのような感じ。後半は、疾患から立ち直っていく姿。自身とは何か?のような哲学的話もあり、疾患の解説も含まれています。
    自身は、病気の間の記憶が曖昧のようで、様

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    2014年06月10日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    読み進むうちにどんどん期待していた方向とは離れていったけれど、それはそれとしてたいへん興味深く読みました。

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    2022年12月24日
  • なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験

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    これ、どこからチョイスしたのか分からん…。でも、興味深い内容だったからまあ良い。いかにも容疑者チックな表紙で、中身もそっち系かな、と思ったけど(なりすまし事件を起こした真犯人、みたいな)、違ってました。一義的には、精神科患者になりすまし、実際の入院生活を体験し、その暗部を告発する、というもの。ただ本作の場合、途中から別の顔を見せ始めるのがポイント。なんと、論文捏造の方向に話が展開していくことに。これは作者自身も狙っていた訳じゃないらしく、その動揺ぶりがうかがえる語り口も魅力的。読み応えのあるノンフ作品でした。

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    2022年03月24日
  • 脳に棲む魔物

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    ネタバレ

     悪魔にとりつかれる映画エクソシスト。実は類似の例が世界各地にあるそうです。ひきつけを起こす、手を奇妙な形に曲げる白目をむく、妄想にかられる・かと思うと正常に戻る。そしてこうした急激な変化と正常との間と行き交う。

     実は私の近しい人間(義弟の彼女)にこのような症状が出ました。物忘れが増え始め、ぼーっとしていることが増え、そしてある日突然意味不明なことをしゃべりはじめ、ひきつけを起こし、卒倒しました。錯乱の末階段から転げ落ち、前歯を一本折り、そのまま救急搬送されました。その後意識を戻ったものの彼氏のことも家族のことも認知せず、うめき声をあげるだけ。

     たまたま起きたのが旧暦のお盆の時期であっ

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    2021年05月10日
  • 脳に棲む魔物

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    ネタバレ

    NMDA脳炎の闘病記。
    2005年に症候群として発表され、2007年にNMDA受容体に対する自己免疫がその原因として特定されたばかりの病気。著者が発症したのが2009年で、テラトーマもなかったことを考え合わせると、発症したのはともかくとして、その後の経過はかなり幸運なものだったといえるだろう。

    新聞記者だそうだが、文章は特にこなれていないし、NMDA脳炎についての記載は自身でも消化不良なのでは、と思わせる内容なので、一般的な読み物としてはやや難が多い。NMDA受容体は海馬に特に多いため、記憶の錯誤などの症状が起こりやすいというのは納得。

    かつて野口英世が分裂病と診断されている者の一部に進行

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    2014年09月28日