福間良明のレビュー一覧

  • 「勤労青年」の教養文化史

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    ノンエリート層の「教養」について、戦後〜1970年代までを主な射程に、青年学級・定時制・人生雑誌への眼差しをまとめた本。おそらく資料収集に相当力を注いだのではないか。その苦労は察せられるが、引用とまとめが繰り返され、やや冗長に感じた。最後の歴史趣味への論考や、高度成長以降、ノンエリート層から「教養」が如何に見放されたのか、もう少し読みたかった。

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    2022年11月05日
  • 「勤労青年」の教養文化史

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     1950年代後半を中心に、上級の学校へ進学できなかった「勤労青年」たちの「教養」への渇望の実相と、何が彼らを必ずしも「実利」と結びつかない「教養」へと向かわせたか、農村では青年団・青年学級、都市では定時制高校や企業の養成所、さらにそれらからはじかれた若者たちの学習欲求の受け皿として機能した「人生雑誌」の盛衰を通して明らかにしている。50~60年代は中学校において「進学組」と「就職組」のコース別学級編成が進行した時期であり、家計の貧困や家父長制の圧迫故に進学できず、差別的待遇を受けることへの不条理に対する後者の鬱屈を重視している。当時の若者の「生の声」を通して見える当時の日本社会の矛盾は、ある

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    2020年08月10日
  • 「勤労青年」の教養文化史

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    戦後から高度成長期にかけての教育現場の一側面を、豊富な史料を繙きながら解き明かした労作。「人生雑誌」という出版文化を産み出した社会構造の析出は見事。しかし引用があまりにも多く、それらの合間に著者の主張を細切れに挟み込むスタイルは、「一体何を明らかにしたいのか?」という気分にさせられた。

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    2020年04月20日
  • 殉国と反逆 「特攻」の語りの戦後史

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     戦争末期の特攻に関して戦後おびただしい書物が編まれ、映画がつくられてきた。本書は特攻に対する批判『きけわだつみのこえ』とその後のわだつみに対する批判、反批判にかかわる言説を紹介する。特攻の映画をつくった人たちのスタンスが東映の任侠映画をつくった人たちのそれと同じであったというのも興味深いが、ぼくにはこの戦後の特攻をめぐる言説の仲で、安田武と野坂昭如の「死者の胸中を勝手に忖度するなど傲慢きわまりない」「その死が犬死にであったか、あるいは価値あるものだったのか、生きているものがえらそうに判定するべきものではない」ということばが印象に残った。また、戦艦武蔵の生き残り兵である渡辺清の場合は、命からが

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    2009年10月07日