魂の発電所 負けねど 福島 オレたちの再エネ十年物語

魂の発電所 負けねど 福島 オレたちの再エネ十年物語

ビジネス・実用
1,683円 (税込)

8pt

5.0

負けねど、福島!

原発事故に奪われたふるさとを取り戻すために
男達は立ち上がった。

福島の自然を武器に
「再生可能エネルギー」による
地産地消の電力会社をつくろう!

東日本大震災と東電福島第一原発事故から10年
電力の素人集団が歩んだ苦闘と希望の日々に
徹底密着した群像ノンフィクション!

放射能汚染で牛の肥育ができなくなった
飯舘村の和牛農家。

江戸時代から続く家業が風評で廃業に瀕した
喜多方の造り酒屋当主。

単身赴任先から妻の実家に帰省中に被災した
外資系サラリーマン。

元居酒屋店主、有機農家、温泉街の顔役
日本最奥にある出版社代表…
電力会社とは縁もゆかりもなかった人々。

小さな小さな発電所がもたらしたものは
「2050年温暖化ガスゼロ」を
大手電力会社に先駆けて実現する
大きな大きな希望だった――。

<目次>
主な登場人物

プロローグ 十年後の飯舘村で

第一章 二〇一一年三月十一日

第二章 転機

第三章 出会い

第四章 許認可

第五章 飯舘電力応援団

第六章 帰還

第七章 会津の水の力

エピローグ コロナを超えて

年表:原発事故やエネルギー行政の経緯と
福島の再生可能エネルギーを巡る動き

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魂の発電所 負けねど 福島 オレたちの再エネ十年物語 のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ

     本書は、福島の再生とエネルギー自立を描いた壮大な物語である。著者は東京新聞の経済部長であり、ジャーナリストの視点から、東日本大震災後の福島の挑戦や希望を綴っている。本書は、まるでプロジェクトXのような、困難に立ち向かう人々の姿と彼らの熱い思いを追った記録である。

     まず、福島の原発事故後、菅義偉首相は2020年に「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロ」と宣言し、安全を最優先としつつ原子力政策を推進すると表明した。これに続き、宮城県知事は2020年11月に東北電力女川原発2号機の再稼働に同意した。こうした国や県の動きは、クリーンなエネルギーとしての原子力の位置付けを示している。原発に頼らざるを得ない姿勢がある。

     一方、福島県内の飯館村にはかつて6,500人が暮らし、3500頭以上の黒毛和牛を育て、ブランド牛として名を馳せていた。飯館村は2010年に「日本で最も美しい村」連合に加盟し、「手間ひまを惜しまず。丁寧に」を掲げた「までい」という村おこしを進めていた。しかし、2011年の大震災と原発事故によって、放射能汚染により畜産は壊滅状態となった。

     この危機の中、故郷を取り戻すために立ち上がった人々がいる。飯館、喜多方、会津、土湯温泉を拠点に、自然の力を活用した再生エネルギーによる地域の自立を目指す取り組みが始まった。喜多方市の造り酒屋・大和川の第9代当主佐藤彌右衛門、飯館村の和牛農家・小林稔、外資系サラリーマンで被災から帰郷した千葉訓道、元居酒屋経営者の折笠哲也、奥会津書房の遠藤由美子、土湯温泉の加藤勝一など、多様な人々が参加し、それぞれの夢と行動力で地域を再生しようとしている。

     喜多方市は、かつて蔵が2600あった酒の町として有名で、良質な軟水を利用した酒造や味噌作り、明治時代の養蚕・製糸業の歴史を持つ。男たちは「40代で蔵を建てられないのは男の恥」と語り、伝統と誇りを守りながら、喜多方ラーメンや酒造りを発展させてきた。大和川酒造は、飯館村の米を使った「おこし酒」(村おこしとお越しくださいという意味を合わせる)により、地域おこしと交流を深めている。

     2003年から会津若松市の福島県立博物館館長の赤坂憲雄は、「東北学」を提唱していた。赤坂憲雄は2011年に、「国に頼っているだけでは、何も動かない。浜通り、中通りは原発事故の被害が大きくて動けない。だから、会津から福島県をなんとかすることが必要だ」と言って、佐藤彌右衛門と遠藤由美子と話をして、昭和蔵で会を始めた。佐藤彌右衛門は「福島はダメージを受けている。でも、白馬の王子なんてやってこない。誰かが助けてくれるなんて考えない方がよい」と熱弁した。

     赤坂憲雄には「福島県自然エネルギー特区構想」があった。赤坂は「すべては東京中心の発想に基づき、中央集権で行われていた。福島で作られる電気も全て東京に送られている。典型的な植民地型の産業である。原発に頼らない、中央集権的なエネルギーではなく、福島に根ざした地産地消のエネルギー産業を作り出すことが必要だ」と考えていた。

     土湯温泉では、東日本初の「バイナリー発電所」が建設され、温泉熱を利用したエコ温泉地として再生を図っている。2012年時点での日本の地熱発電潜在能力は2,300万キロワットであるが、実際に開発されたのは50万キロワットのみで、潜在能力のわずか2%にすぎない。アイスランドやフィリピンは、それぞれ28%、15%の発電を地熱でのエネルギーを利用している。エネルギーの多様性を示している。

     会津若松市の居酒屋経営者・折笠哲也は、2012年に「会津太陽光発電」を立ち上げた。当初、雪深い会津では実現困難ともいわれたが、実際にやってみた。まず高さを雪との関係で2mの高さにして、パネルの角度を45度だと雪の滑りがいいが、発電量を最適角度は30度だった。会津における太陽光発電の最適な設計を追求した。彼らは、2013年に「会津電力」を設立し、社長には佐藤彌右衛門、副社長には山田純、常務に折笠哲也が就任した。会津電力は、太陽光だけでなく、樹木や水、地熱、風など多様な自然エネルギーの利用を目指しており、地域の自然資源を活かしたエネルギー産業を推進している。

     2015年には、飯館電力も立ち上げられた。社長には和牛農家の小林稔、専務に千葉訓道が就任し、30人の村民の株主も参加した。飯館村伊丹沢太陽光発電所も運営を開始した。

     これらの取り組みにより、会津電力は2020年2月時点で87の太陽光発電所を運営し、合計約6,089キロワットの電力を生産している。これは、一般家庭約1,832世帯分に相当し、地域自給の電力供給を目指す確固たる意志の表れである。

     本書は、未来を切り拓く福島の人々の熱意と努力、その挑戦の軌跡を記録したものである。彼らの行動は、地域再生の希望を示し、自然エネルギーを軸にした自立の可能性を広げている。福島の未来は、彼らの魂と行動により、新たな希望の光をともそうとしている。

    0
    2025年05月20日

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