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太平洋戦争勃発前夜、民間人・浜本は、マレーの英雄「虎」ハリマオを探し出すために、日本を後にした。その目的は何か……? 日独英のスパイが暗躍し、インドとマレーの独立運動が芽生え始めた激動の東南アジアを舞台に、人種を越えて生命を賭けて闘った男たちの運命は? アジアの独立に生命を賭けた男たちのロマンと波乱万丈の生涯を描く、雄渾の長編冒険小説、いま甦える!
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Posted by ブクログ
生島治郎は、1933年に生まれ、2003年に亡くなった。彼は、日本における正統ハードボイルドの創始者として知られる小説家である。上海生まれであり、1945年に長崎に引き揚げ、その年の6月に母の故郷である金沢に移住した。この経緯により、長崎での被曝を免れることとなった。その後、父親の職の関係で横浜に...続きを読む移住し、早稲田大学に進学した。卒業後は、早川書房に入社し、日本語版「エラリークイーンズミステリマガジン」の創刊準備に携わり、その後編集長に就任した。彼は1963年からハードボイルド小説を書き始めた。大沢在昌が、東海中学生の時に、生島治郎に手紙を書いたら、売れっ子だったにも関わらず、8枚の返事を書いたという逸話がある。そのことで、大沢在昌はハードボイルドの世界にのめり込んだ。 『死ぬときは独り』は、マレー作戦に反応した浜本とハリマオの物語である。主人公の浜本は実在の人物であり、その名は神本利男である。神本利男は満州国の警察官の時に亡命してきたロシア人の幹部を捕獲し、保護した後、陸軍中野学校で学び、日本陸軍のスパイとなった。 物語において、浜本はインド人三人をバンコックに届ける使命を担っている。そのインド人たちは後にインド独立連盟を結成する。また、浜本の目的は、マレーの虎を探し出し、マレー独立を支援することである。インドもマレーも当時はイギリス軍によって統治されていた。マレーには、イギリス軍の幹部以外にインド人が多数駐在しており、またマレー人の軍隊も作られていた。 バンコックで、浜本はクワンという裏社会のギャングの大ボスと出会い、マレーの虎の所在を尋ねる。そして浜本はマレーの虎と出会い、意気投合する。これまで、マレーの虎は窃盗団を形成し、イギリス人から金を奪う泥棒であったが、浜本は彼をマレーの独立のために働くように説得する。 子供の頃に見たテレビドラマ『怪傑ハリマオ』とは、大きく異なる印象を受ける。1943年の映画『マライの虎』においては、日本軍のスパイとなり日本のために働くことで、日本人として死ぬことに満足するハリマオが描かれているが、生島治郎の描くハリマオは全く異なる。 ハリマオはマレー人のために、マレー人として死ぬことが本望だと考えている。また、浜本は日本の軍隊がマレーに来た場合、マレー人に対して植民地意識が働くことを危惧していた。この物語の構成は、かなりの部分で実際の事実に即しているかもしれない。 さらに、12月8日に日本軍がマレー半島に上陸する準備として、地図の作成やイギリス軍の動向を浜本はマレーの虎とその手下たちに調査させ、その情報を福原大尉(F機関)に提供することで、マレーの正確な情報を提供した。 12月8日は真珠湾攻撃だけでなく、マレー半島への侵攻、そしてシンガポール攻略が始まる日であった。真珠湾攻撃は「ニイタカヤマノボレ」だったが、マレー作戦は「ヒノデハヤマガタ」だった。この暗号は、瀬島龍三が考案したという。本書によれば、上陸はマレーのコタバルでなく、タイのソンクラーとしている。 そして、浜本とハリマオはイギリス軍内のマレー人軍人を説得し、マレーシアの独立のために戦わせることで、イギリス軍内で反乱を起こす。福原大尉は、マレーイギリス軍のインド兵たちをインド独立を訴えイギリス軍の中で反乱を起こす。実に巧みな作戦でもある。そして、日本軍のマレー作戦は成功を収める。しかしハリマオはマラリアに倒れ、死に至る。まさに、死ぬときは独りだ。浜本はビルマに転出することとなる。 戦争とはある意味で、ハードボイルドの極限であるかもしれない。しかし、浜本(神本利男)もハリマオ(谷豊)も、軍という規範に従わず、個人として自由を求める姿勢が、本質的なハードボイルドな生き方を形成していると言える。
日本軍スパイとしての暗躍する男と、日本人でありながらマレー人として生き、マレー独立のために命を燃やす男の、ハードボイルドな冒険譚。 夢や目標に向かって直向きに生きる姿は純粋で、儚く散っていく姿は美しい。 実話がベースとなっており、日本軍スパイの浜本は神本利男、マレー人として生きる虎は谷豊がモデルであ...続きを読むる。 出来事ベースで物語が展開し、読み進めやすかった。 浜本は立場としては軍の人間であり、マレー独立という名目の元東南アジア統治を目指す軍に従い"仕事"をこなす一方、多くの要人と接する中で日本軍の野望は叶わないであろうことを知る。また、自らの夢を「チベットの素朴な人々とともに一生を暮らすこと」と語り、内地に残る想い人と子供をもつことを思い描きつつも、スパイである自分はろくな死に方はしないだろうと覚悟している。このことから、浜本は計り知れない虚無感に襲われつつも、ただ目の前の使命のために自らを鼓舞し続ける孤独な男である。 マレーの虎(ハリマオ)こと羽仁豊もまた、虚無感に襲われている孤独な男の1人である。虎は自らをマレー人だと称するが周囲からは日本人と扱われる場面が多くある。それはまるで、自分はマレー人なのだと言い聞かせているようにも見える。マレー人と同じ生活をし、マレー人を理解しマレー人から理解されたとしても、人はやはり見た目や生まれで最初に人を判断する。これがどれほど虚しいことか、虎はその虚しさを何度も乗り越えているのだと想像ができる。 解説を読むとよくわかるが、弱い立場・極限の状況でしか得られない関係、それを味わった者にしか分からない価値観がある。 人は弱い。だからこそ助け合わねばならない。それを知らない人は孤独である。相手を理解し尊重し、どんな時も義理と人情を忘れないこと、それがいつか自分の助けとなる。 そんなことを、教えられた一冊である。
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