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人と動物は、音声を用いて会話できるのか? はるかな目標を掲げた研究者と一羽の天才ヨウムが過ごした、長くて短い30年の物語。解説/鈴木俊貴
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Posted by ブクログ
学界の偏見と定説に挑む、女性研究者の奮闘。頼りの相棒は、一羽のヨウム……面白くない訳がない。しかもノンフィクション。 与えられた課題を楽々こなす姿に、しだいにアレックスの想像を超える知性が明らかに。想定を次々に覆される著者の驚きと発見を追体験できます。そうして愛した仲間との、別れの耐えがたい悲しみも...続きを読む。 結びとなるのは、アレックスがもたらした自然観、新しい人間観。単なる研究報告の枠を超えて、アレックスの生涯を意味づけようとする真摯な筆致が感動を誘います。
発達心理学、認知心理学、動物行動学、様々な視点から読めるお話で大変面白かった。また、他の側面では、女性研究者の生きていく難しさにも触れるし、もちろんヨウムの愛らしさ、賢さなども知れて、とにかく面白いの一言。 人間至上主義の概念をとにかく否定し続け、あらゆる動物たちの可能性について考えさせられるとても...続きを読むいい本。
鳥類のコミュニケーショ能力と認知を研究するアイリーンと、天才と呼ばれたヨウム、アレックスの実話。 アレックスの話というよりは、アイリーンの研究と研究人生がメインだったけれど、アイリーンの人生で、アレックスとの出会いがそれほど大きかったということでしょう。 アレックスは天才と言われていたけれど、果た...続きを読むして彼は天才だったのか。ヨウム、鳥類はもともと認知能力を持っているのではないか。それを我々が知らないだけで。 とりあえず「鳥頭」という悪口は成立しなくなりそう。小さい脳みそで、思考して、発語することができたのだもの。 「イイコデネ。アイラブユー」「アシタ クル?」 最後の言葉がどこまでも泣かせる。
アレックスに関しては、生前から動画などを見ていたので、その能力の高さには驚かなかった。 というか、動物を飼っている(という言い方も非常に不遜で嫌いだが)人は誰でも、彼らには我々同様感情があり、思考し、経験を蓄積して応用していることを知っているが、科学では「だってそう感じるもん」ということは許されず、...続きを読む繰り返し検証実験を行い、誰でも納得できる客観的データを蓄積することが必要である。 その大変な仕事に、果敢に挑戦した著者に頭が下がる。特にまだ欧米でさえ男尊女卑が強く、能力の高いことが証明出来る女性でも結婚や出産で退職するのが当然と考えられていた時代、動物は人間以下の存在、鳥が喋ってもそれは「オウム返し」してるだけ、と考えられていた時代にそれに挑戦したのである。 彼女の研究がいかにとんでもないと思われていたか、そのため研究者としては冷遇され続け、期限付雇用を繰り返し、最悪の状態のときは研究費も給与もなく、食べるにも事欠く有様だったことにショックを受ける。 アレックスの研究を支持する財団があったから何とか研究を続けていけた(生き物を室内で飼って研究しているのに、途中で投げ出すわけにはいかないこともあった)わけだが、その財団を支えてくれたのは、(もちろん企業もあったが)鳥を愛し、その能力を証明して欲しいと願う一般の人々であったというところに、希望を見る思いがする。 しかし、マスコミでも話題となったことで研究者たちからの凄まじい嫉妬も受け、財団があったことが全てプラスに働いたわけではない。 このような中で、著者ペパーバーグ博士が、アレックスに対して積極的に愛情表現しないように気をつけていたことも、なかなか凡人にはできない事だと感じた。もちろんそれでも愛情はアレックスに伝わっていたわけだけど。しのぶれど色に出にけりってあるもんね。恋愛でなくても。 著者はアレックスの知能は5歳児程度と言っているが、それは科学者としての発言であり、本当の思いとは違う。 「それぞれの動物には自分のコミュニケーションのやり方があるし、彼らの野生の生態の中ではそれで十分にやっていけるんです。だから私たちの方法でコミュニケーションさせるのはアンフェアなのです」(P314) 人間の「物差し」で動物を測って、その能力がどの程度、なんて話はおかしい。じゃあヨウムの物差しで、犬や猫の物差しで人間を測ったら?人間なんて「生後半年の犬の能力すらない」とかいうことになるだろう。 博士は続けてこう言っている。 「私たちのコミュニケーションのツールを与えることで、彼らの心をのぞく窓(略)から、彼らがどうやって情報を処理しているのか、どのような考え方をしているのかをのぞけるんです。」 そういうやり方でしか、客観的に証明する方法がないのだ。 アレックスの能力は動画でも見ることができるが、動画になっていないエピソードがとてもいい。 発音しにくい単語(彼らにはくちびるがないのでp,v,bは発音しにくい)はひとりで練習したり、物分りの良くない仲間のヨウムを叱ったり、ウソを教えて混乱させたり、本当に個性豊か。 「彼はエサや住居などを、完全に私と学生たちに依存していたのだが、一方で高慢なくらい自立しているという雰囲気を醸し出していた。」(P290)なんてところはうちの猫みたい。偉そうなところも。 ニシアメリカオオコノハズクを見たアレックスが非常に怖がって、見えないようにしても(いなくなったわけではないことがわかっていて)「カエリタイ」(研究室のケージに戻りたい)を繰り返た、とあったので、ニシアメリカオオコノハズクがどんな鳥なのか調べたら、思った以上に小さく、何ならヨウムより小さく、まともに戦えばヨウムが勝ちそうな気もするが、そういう問題ではなく(これは私の感想)、猛禽類=自分達を襲う恐ろしい生き物という本能があるのだ、という話なんかは、うちの猫も「そんなことが怖いの?」と驚くことがあるのに似ている。 これを読んで、人間の傲慢さや、女性の社会進出を阻む愚かさに気づいて欲しいものである。 自然破壊が人間社会以上に動植物の世界に影響を与えること、そしてそれは人間にとっても取り返しのつかないことであることも。
30年も毎日寄り添ったパートナーの物語だから、その別れのシーンはもちろん胸を打つ。研究者として、ヨウム一本に懸けるというその根性がものすごいな、とも思うし、研究者の厳しい環境についての物語としても読める。
研究者として一流だったのかもしれないがエッセイストとしては……。 喋るオウムについて詳しく読みたい方は第3章から読み始めることをおすすめする。 それ以前は読み進めるのが若干苦痛だった。 しかしアレックスの愛らしさには撃ち抜かれた。
とても苦労されたのだろうというのが伝わってくる。 研究を受け入れてくれる場所を確保する苦労話と業績を認めさせる苦労話が延々と続く。 オウムにも負担を与えたと言及されているけれど、愛があまり伝わってこない気がしました。 もう少し愛情物語かと期待したのが違ったようでした。
「動物の知能や認知力は低い」という考えに対する、一人+一羽のバディの挑戦 会話ができるヨウム(鳥)として有名になり、日本でもTV番組「どうぶつ奇想天外!」等で知られたアレックスと、動物の認知力の研究者である著者。当時の「動物の知能や認知力は低い」と考える科学界の権威に対する、一人と一羽のバディによ...続きを読むる挑戦の歴史です。著者の私生活や懐事情なども隠さず書かれていて、大学の研究員を続けるのって大変なんだなと気の毒に思う場面もありました。 アレックスが著者との訓練を通じて、信じられないようなコミュニケーション力、認知力を発揮していくのがなんとも痛快でした。「動物と対話する」と言葉にするとなんとも単純ですが、そこには「概念を共通させる」という高度な仕事が不可欠になってきます。「ものに名前を付ける」「色の違いを判別する」「形の違いを判別する」「数を数える」などは人間がごく当たり前に行っている行為ですが、その概念を持たないヨウムに教えるのは大変根気がいることだったろうと著者の努力がしのばれます。なんとアレックスの機嫌が悪い時には、あえて答えを間違えたり違うことを答えたりしたそうで、アレックスは相当高度なコミュニケーションをしています。そしてそれに素直に悔しがる著者の姿が、まるで反抗期の子と親のようで、単なる研究者と被験者の関係ではないことがうかがえます。 驚くべきことにアレックスは、寝る前に新しく覚えた単語をひとりごとで練習していたり、クラシック音楽を聞きながらリズムに合わせて体を揺らしトランス状態になったり、「ゼロ・無い」という概念も会得したそうで、私の想像を超える情報処理能力でした。実際にりんごの果肉を与えながら、りんご(apple)を教えようとしても、絶対に「バネリー」と返すアレックス。アレックスは、「バナナに似た味のチェリーみたいな食べ物」としてbanana + cherry = baneryと、自ら造語を作ったかもしれないというエピソードも出てきて、言葉を足し合わせるという創造性と、「名付ける」という概念をもっている可能性がアレックスにあることには本当に驚きました。 そもそも数十年前まで、動物は「オートマトン」という機械仕掛けの単純な反応しかできない、意思や思考がないロボットのようなものとしか思われてなかったとのこと。人間こそが生物として一番高等であり、他の動物は人間より下等であるという前時代的な考えがあり、それが宗教のベースになっていたりもします。神によってこの世の支配権が与えられた人間と、他の動物とは根本的にデキが違うというような言説がまかり通っていたのです。ましてやそれが科学界でも!この研究を始めた最初期、著者はおかしい人あつかいされ満足のいく研究環境を与えてもらえなかったことからも、当時の科学界の様子が分かります。 途中、知能の高い動物として有名な「賢馬ハンス」の話が出てきます。1900年代のドイツで、計算問題に蹄を踏み鳴らした回数で答える賢い馬として有名になったのですが、実際に計算していたのではなく、飼い主や周りの人間の無意識のうちの変化を読み取って、期待に応えていただけという話ですが、ある意味では数の計算よりも難しい「空気を読む」ことをしていたことになります。それだって結構すごいことだし、けっしてオートマトンにはできないことだと思います。私の実家の犬(愛すべきバカ犬)も、母が急な病気で苦しんでいる様を見たとき、心配そうにそばについていてあげていたそうで、こっちの予想以上に動物って雰囲気を読み取っているように思えます。 地道に結果を示し、科学界だけでなく世界中に驚きを与えたアレックス。これからどんな能力を発揮するのかまだまだ期待されていた中、突然約30年の生涯の幕を閉じてしまいます。訃報が流れると世界中から死を悼むメールが大量に届きました。アレックスから著者への最期の言葉は、毎日のお別れの挨拶「アイ・ラブ・ユー」だったというあまりにもドラマチック過ぎる展開にも驚きます。人間ですら簡単に正解を出せない愛の概念についてアレックスが理解できていたかは分からないし、単なる挨拶としていってただけかもしれないものの。 ペットに愛情をそそぐあまりにいきすぎた幻想をおしつけたくはないですが、心が通じ合えるような感覚が味わえたら嬉しいだろうな。でも動物の本音を知るってショックなこともかもしれないなあ。著者もアレックスが敢えて意地悪してくることに対して本気で苛立ってるし。でもホントの家族ってそんな感じですよね(笑)
オウムの一種のヨウムを使って、鳥の理解力を研究した著者の記録。日本でもよくきかれるが、研究職の女性の苦労は米国でもあるらしい。その上、ヨウムを使った研究が学問的になかなか認めてもらえないというハンディもあったようだ。鳥頭とバカにされるが、なかなか驚きの能力だということがわかってきた。読み物としても面...続きを読む白かった。
女性科学者への風当たりが強い時代に、数々の困難も乗り越え 「5歳児の知能を持つ」と称されたヨウムのアレックスとの研究に没頭した日々の記録です。 「オウムはただ人間の言葉を真似ているオートマトンに過ぎない」 という通説を覆し、ヨウムは感情や思考に基づいて喋り、 色や数量といった概念を理解する知能が備わ...続きを読むっていることを発見、発表しています。 アレックスの感情の表現は可愛くて・可笑しくて、そして切なくて 本文中にあるアレックスの死後に寄せられた暖かな多くのメッセージは、 人間が他の生き物たちを尊重する気持ちへと繋げていかなくてはと強く思いました。
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