繋渡り

繋渡り

1,540円 (税込)

7pt

3.6

作家の父と弟と暮らす少年・未智留。
凡庸な両親に育てられた少女・残花。

自らをほんの少しだけ優れた、でも大したことのない存在と断じる二人は、取るに足らぬ同級生を見下ろしながら、卑俗で平凡な住民を横目に見ながら、生活するにはちょっと不便で色々と物足りないこの町で、ほんの少しの諦観とともに退屈で停滞したささやかな日々を過ごしていた。

けれど。
ある日の未智留の一言をきっかけに、二人の平穏な関係は唐突に終わりを迎える。

近親相姦、同性愛、虐待――
少年が背負う過酷な真実が肌を晒した時、二人を中心とした歪な“家族”の物語が幕を開ける。


【もちぎ先生より】
この小説の登場人物は必死に生きる、ダメな思考すら持ったただの人間です。
だからそんなダメな人間を指差して非難して笑った時、自分が運良くダメじゃないというだけの事実や、自分だってダメになってしまうという事実を無視して、もっと生きづらくなる世界を歩むことになると思います。
打算も優柔不断も、依存も懐疑も、冒涜も支配も、うまくいかないコミュニケーションも、後からどうとでも言えるたられば論も、本人の中で矛盾する感情も、全部指摘するのは簡単だけど、人生ってそう簡単じゃないんだなと思って書き上げました。


【担当編集より】
もちぎさんのこれまでの人生、多くの方々との関係性の中で築いてきた自らという素材を削り、煮詰め、端整に組み上げた、彼の分身のような本。

爽やかで心地良く教訓的で、読後に万人が幸せになれる話ではなく、本を開いた瞬間に読者の心を鷲掴みし、力尽くでページを捲らせ続け、容赦なく胸を抉り消えない痕を残すような鋭利な物語。
苛烈で激烈でもちぎさんにしか、そんな彼にも一生涯で一度しか描けない初小説。
どうか魂に刻んでください。

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繋渡り のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    かつて子供だった大人が描く
    子供という形を借りた
    大人になり切れない大人たちの嘆き。
    もがき。あがき。
    家族といえども他人であり
    結局、人は誰もが孤独で
    だからこそ愛みたいなものを
    他人という不完全なものに求めてしまうのか。
    最後にこの本のタイトルが
    「綱渡り」ではなくて
    「繋渡り」であることの意味

    1
    2020年10月05日

    Posted by ブクログ

    父親に虐待される主人公とその周辺の人たちの話。
    あまりに人間の心の闇の部分をありのままに描写されているから、細かくてすごいなぁと思う反面読んでいて気持ちのいいものではないなとも思う。
    ニュースの中では毎日のように不幸な事件が起きるけど、それは確かに自分には関係ないドラマのようなものかと思う。実際に身

    0
    2020年12月09日

    Posted by ブクログ

    もちぎさんの初小説!
    家庭内の虐待、性暴力、虐待の連鎖。親子3代に渡って綴られる当事者目線の小説で、胸が苦しくなる場面も。
    今回が初小説とのこと。もちぎさんの想いはもっと深いところにあると思うから、さらに深めた第2作を期待。

    0
    2020年08月30日

    Posted by ブクログ

    家族の生い立ちを辿り、行き着いた先が誰も幸とは言えないが、不幸とまでも言えず、闇の中からかすかに光る道を進もうと必死に生きる姿が感じられるが、果たして光の射す方へ行けるのだろうか。そこに期待してはいけないように思った。この本の登場人物は家庭運に恵まれず育った人たちであるが、複雑な家庭環境のせいにして

    0
    2020年08月16日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「誰だって幸せになっていいんだよ」
    最終的にはこの言葉に収束するか。
    序盤は少し文章のリズム(というのか、語尾の処理というか)に引っかかるところがあったけれど、後半は引き込まれました。(編集が直さなかったのだから、僕の言語感覚とのズレなのかと思うけど)
    残花の性格が意外だった。
    名前がかなり独特なの

    0
    2020年09月25日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    幸せで満ち足りた家庭ってなんだろうって、強く感じる作品だった。

    未貞の親は、自分と同じ過ちを繰り返さないよう、良い高校、良い大学に入って立派な人間になる道を示した。でもあまりにがんじがらめにしすぎて、未貞は示されたこと以外、自分のしたい事が何もないという事に気が付いて家を飛び出した。

    その未貞が

    0
    2020年09月04日

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