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和菓子業界が縮小する中で、なぜたねやグループは右肩上がりの成長を続けるのか。成功の裏には、「三方よし」「先義後利」に象徴される近江商人の商売道を現代に昇華させた著者・山本昌仁(たねやグループCEO)の哲学がある。自分たちの利益より、まずはお客様が喜ぶことを考える。お客様以外の人々の利益も考える。生まれ育った地域に還元する。たねやの成功は、今後の商売、特に地方での商売繁盛のためのヒントとなるはずだ。
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Posted by ブクログ
本書は、たねや四代目山本昌仁氏の語る「現代の近江商人」です。 あゝ、絶対に勝てない人がまた一人増えてしまった。この本を学生のときによんだら、「たねや」に就職したいとおもったほど、うらやましいというか、共感をもちました。また、自分はまだまだ甘かったと心から反省しました。 営業をされていらっしゃる方は...続きを読む一度はお読みになられたほうがよいとおもいます。隠れた販売の名著です。 気になったのは次です。 ■商売のやり方 ・バブル絶頂期で、「一人一人のお客様に向き合う」決断をしておいたことが、たねやを救った。 ・支店を出すのであれば、家族ともども移り住んですべてを投げ出して全力投入する。これは支店ではない、全部が憧れの本店や。 ・「簡単に言うたら、売れたらええんや」、「売れへんもんを一生懸命作ったら、ゴミになるんやで?そしたら農家の方に顔向けできんやろ?」だから、まず売ることだと。 ・移り変わりが激しい場所よりも、ずっと変わらない場所のほうが継続した商いができる。 ・すべてを自分の手でやるというのは、たねやの伝統です。アウトソーシングの時代に、アウトソーシングを避けている。コンサルタントに頼らない。 ・自分たちで作ったものを、最後まで自分たちで商う。これが、たねやの哲学です。 ■経営者としての工夫 ・どこに問題があったかというと、いろんな性格のお店があるのに、一律に対応しようとしていたことです。そこで、店ごとに売り方を変えました。 ・経営者にとってもっとも大切なのは、「聞く力」だとおもっていますから、自分と意見が違っても、その人の言葉に自信が感じられたら、最後まで聞きます。 ・父が盛んにいっていた現場主義は、私の代になって加速していると思います。無駄の会議はいっさい辞めた。 ・部長たちにも口うるさく「現場に行け」といっています。情報が欲しいなら、本社で報告を待っているより現場に入るほうが早い。だから営業部長もほとんど本社にいません。 ・部長や店長につねづね言っているのは、自分の後釜を育てろということ。自分が倒れたとき代わりがいないようでは、その人はリーダー失格です。 ■家訓 口伝の教え ・見返りを求めて商いをやったら必ず失敗する。誰も見ていないところでも、世間のためになるように行動しろ 陰徳善事 ・利益を求める前に、お客様の喜ぶ顔を見て満足しろ。人としてあるべき道義をないがしろにしなければ、利益はあとからついてくる。 先義後利 ・如在(おわすがごとく)「いつ、どこに居ても 師の在すがごとく 父の在すがごとく 母の在すがごとく 伴友の在わすがごとく 己に厳しく 心寛く 豊に 清和健進をなすなり」 ・「走る勿れ されど止まるは尚愚なり」 気張ってやってるけど、あまり飛ばすなよ 着実にやらんといずれ投げ出すことになる ■商品へのこだわり ・自信のあるものだけで勝負しないとダメだ。大きな学びでした。 ・和菓子の味を決めるのは主人です。主人の舌がすべてを決める。主人がOKを出したものしか店頭に並ばない。 ・まずは食べてもらい、おいしいと感じていただかなければ始まらない。 ・主人が変わったら味を変えるのは、そこでいったんリセットし、新しい時代の嗜好に近づけていく知恵なのでしょう。 ・私は伝統とは「続けること」だと思っています。 ■後継者の苦悩 ・「この男はたねやの息子です。たねやはすごいけど、こいつはなにもできない」。みんな大爆笑ですが、悔しくて、早く見返したいと思っていた。 ・父も自分がランナーの一人にすぎないと意識しているのでしょう。いまのリーダーは、バトンをもって走っている私一人だと。 ・「あんたはあんたのやり方でいいやん。なんで親父さんと比べる必要があるの」と教わった。同じことをやったら、絶対父にかなわない。偉大な父をもった二世ならではの悩みだと思います。ならば、違うことをやればいいだけの話です。自分の世界を作り上げることだけに集中すればいいんだ。そう割り切れたとき、不安もなくなりました。 ・ずっと父に言われ続けてきたのは、「自分一代でええと思ったらあかん」。次の世代のことも、その次の世代のことも考えて行動しろと。 ■結論 時代が代わり、商品も変わります。変えることを恐れてはいけません。 でも、ずっと変わらないものもある。商いの精神です。枝葉の部分は変わっても、幹の部分は昔と何も変わっていない。 先人たちの精神を愚直に引き継いでいくことこそ、私なりの近江商人道なのかもしれません。 目次 まえがき 第1章 たねやはなぜウケたのか 第2章 なぜ世代交代は成功したか 第3章 ラ コリーナの思想 第4章 「三方よし」をどう生きるか 第5章 たねや流「働き方改革」 第6章 変わるもの、変わらないもの ISBN:9784065129036 出版社:講談社 判型:新書 ページ数:256ページ 定価:860円(本体) 発売日:2018年08月20日
「たねや」「クラブハリエ」等のブランドで展開し、滋賀県を代表するたねやグループの山本社長の著書。 「商売の原点は顧客が喜ぶこと」「お店は商品を売る場所でなく、顧客に感動を与える場所」「ここにしかないものを作る」など、商売の本質が多く散りばめている。
日本全国のデパートなどに展開している和菓子屋「たねや」オーナーによる「たねや」をはじめとした近江商人の思想について紹介した著作。
和菓子屋というよりも商売人としての生き様が描かれていました。顧客に向き合うことは言うことを鵜呑みにすることではなく、時には教育をする必要があることも学びました。 そのためには自分自身が学び続ける姿勢でいなくてはなりません。たねやでは毎日2時間フリータイムを設けております。仕事以外に触れる時間を強制的...続きを読むに作ることで新しいアイデアを醸成する良い機会になるからです。Googleでも90分ルールの取り組みがなされているので、強い企業、アイディアが生まれる企業というのは余裕を作ることを忘れないのだと感じました。 また、現場への応援も忘れないのは良い企業だと思いました。大手企業でありがちなパターンは現場の意見、オペレーションを無視したプランが通ってしまい、失敗するということは日常茶飯事です。たねやはその事例がゼロではないと思いますが、本社の人達が現場に駆けつける習慣があれば的外れなプランを立てることは少ないと思います。 やはり、現場と本社がしっかりと連携できている企業は強くなるし、離職率も低いのだなと感じました。
全国区になっていく菓子屋がどういった精神で運営されてきたのか知れる本。 ごくたまに買いに行く側としては有名な和菓子屋さんとしてしか認知していなかったが、「たねや」としての哲学、商売を大事にしながら日々運営されているのだと知れた。 何十年と商売を続けるなかで、変えるものと変えないものを絶妙にバランス...続きを読むを取っているように見えたが、実際はいろいろなものを少しずつ変えていて結果的にうまくいったものを変えてきたのだろうなぁとか想像した。
経営の本として非常にためになる本。優秀な経営者のバトンリレー、現場主義、経営者の現場との距離感、そして三方よし。三方よしの考え方は、渋沢栄一の「論語と算盤」にも近いものを感じた。そしてこれまで触れることがなかった和菓子業界の話も、新鮮で非常に興味深かった。
自慢か、と思うことが多々あるが、自信を持って自慢しているんだろうなぁ、と思える。近江八幡の店に数年前にいったけど、やたらこんでいたなぁ。 ああ、水羊羹、食べたい。和菓子党。
江戸時代。近江国(滋賀県)から全国へ行商をしていった人たちが成功していき、近江商人と呼ばれるようになります。彼らは地方へ商品を運搬していきその場で売りさばき、帰りしなには地方の商品を購入して持ち帰るなどし、またそこで商売をして儲けを上げていった。往路でも復路でも無駄がない商売だったわけです。 その...続きを読むような業態で考え出された哲学がありました。「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」の考え方です。売り手と買い手がwin-winであるどころか、商売をさせていただくその地域までもがwinとなるのである、というものです。この「世間よし」の部分まで考えるのは、地域にとってのその発展や住みやすさの向上へ繋がるようにすることでしょうし、もっと言えば昨今のSDGsにも通じるものがあるようにも意味を取ることができます。 本書の著者は、滋賀県から大阪や東京へと店舗を展開をしていった和菓子屋「たねや」そして洋菓子屋「クラブハリエ」のトップ。アイデアや創造的な気質を感じさせられる物言いがほんとうに多いです(本書はライターによる聞き書きです)。それも、世間一般の風潮から突き抜けた感すらあるので、僕みたいな小市民からすると、少しばかり「ほんとうかな?」と疑いの気持ちがでてくるくらい。 おっしゃっていることがとても正当であまりにきれいではあるのですが、一歩先の理想に手を伸ばして現実のてのひらのなかにおさめていくようなことをされているのかなあ、という印象を持ちました。とはいっても、泥臭い精進の日々をへて、苦労もされてきていたりしたようです。 僕はそのどこにひっかかっているのか。おっしゃっていることが、本音のようであってもその実として「対外的に言っていることです」という性質が奥底に感じられるからなのかなあ(思い違いかもしれないですけれども)。そんなにきれいに生きられますか? なんていう信じられなさもあるのかもしれない。まあそれだけ、僕自身が社会的にあまちゃんだということなのかもしれませんが。 本書は、タイトルにある「近江商人の哲学」とうよりも、「たねや」の沿革の物語的と表現したほうが的を射ていそうでした。自営業から始まってどんどん大きくなっていく企業物語なのです。だからといっておもしろくないということではありません。他者の経験や人生から学べることの多さを痛感するような手合いの本としても仕上がっていると思います。 商売っていったいなんなのだろう、と根本的なところから考えたい人にはとても向いている内容です。理念的なところから、現場レベルのところまで、筋道が通っています。ただ、こういった会社に入社するとなると、片足だけ突っ込んでいたい、というワークライフバランスでいえばライフの部分を大きくしたい人には向いていないかもしれない。というか、どんな仕事でもそういうところはありますけれども、ワークをライフにするくらいの気構えを強くもっていないと合わなそうではあります。 さて、そんな著者の修業時代のエピソードに雑談的におもしろいものがありましたのでご紹介します。ご飯に日本酒を注いで「これがほんまの酒茶漬けや」という人が出てきたんですよ。こうすると酔いが回りやすいそうです。初耳でしたし、無茶苦茶だなとは思いました。お金のないときにこうしていた、という人間国宝の菓子職人の言です。 では最後にひとつ引用をして終わります。 __________ 実は、近江出身の商人をすべて近江商人と呼ぶわけではありません。近江に本拠地を残しつつ他国で商いをする人だけが近江商人と呼ばれ、「地商い」とは区別されます。つまり、近江商人の全員が「外の世界」を見ている。だから自分のルーツに思いをはせたり、故郷に還元したりするようになるのでしょう。海外に出た日本人が、より日本を意識するようになるのと同じです。(p62) __________ →「たねや」グループは滋賀県に「ラ コリーナ近江八幡」という広大な敷地を持つ店舗を構えているのですが、そこでは木を植えたり田圃を作ったりしていて、最寄りに駅があるのでもないのに年間300万人近くが訪れるそう。また、街並みをガイドする仕事を受け持つ部署が「たねや」にはあるそう。まったく片手間でやるのではないような、正面から取り組んだCSRとも見ることができるのではないでしょうか。 僕の住む北海道には「たねや」も「クラブハリエ」もないのですが、オンラインショップで名物の最中「ふくみ天平」を注文してみたくなりました。こういう本を読むと、すごくおいしそうだ! と思ってしまいますし、興味も喚起されるものです。
【評価の理由】 自分が知りたかった部分と少しズレていたため。 最近観光地になっている「ラコリーナ」が、どんな理由で生まれたのか気になっていた。 しかしこの書籍では、「たねや」や「近江商人の歴史」について述べられている部分が多かった。 ただ、ラコリーナは故郷への恩返しという願いが込められており、数百...続きを読む年単位で成長させようとしていた事に衝撃を受けた。 【見習いたい事】 お客様のために動くこと。それを貫けば数字はついてくる。
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近江商人の哲学 「たねや」に学ぶ商いの基本
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