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「旅する学者、そして詩人」管啓次郎(読売文学賞)と「カルト的人気漫画家」小池桂一。異色のタッグが描き出す、神聖なる大地で生きる人々の豊穣な世界観。 私たち人間が、この地球の上で生きていくとはどういうことか?
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Posted by ブクログ
これは新たな視点で世界を見るきっかけになった。ものすごい世界観だった。 私の身近では、マクロビオティックやオーガニック、スローライフに視点をおく傾向がある。だけど、そもそも、どうしてそうすることが必要であり、その根源にあるものが一体何かは混沌としていた。 それが、まさかアメリカ・インディアンの人々...続きを読むに関連しているなんて! 私が住んでいる世界は、「都市」であり「土地」という観念はない。しかし、その「土地」は、アイデンティティとみずからの存在の「意味」をも含有するものであるのだ。 ものすごく印象的だったのは、人間における自己定義のメカニズムについて。それは、差異化と同一化の二つ。差異化ばかりを意識してた。でも、同一化することで、紋様ができる。
南北アメリカの先住民の生き方を学ぶ一冊。自然を敬い、集団の一部としての義務を果たしていこうというもの。何か大きな決断をするときは7代先の子孫まで影響を及ぼすことを考えるとか、生きることは祈ること(太陽の光、いのちの水、食べ物になる動植物に対する祈り)という謙虚な姿勢。人間は音でできているのだから、人...続きを読むの話は聞かねばならないという態度にも心があらわれる感じ。自分は誰なのかというときに、どこどこのものですと言えるほど、地に足をつけているのかという問い。
書き出しの、未開民族もほぼ携帯電話を持っていて、グローバル化、「人類全てがお互いの存在を知っており、関与しようと思えば関われる状態」にあることは凄いことだと思った。影響を及ぼし合い、ある意味均質化してゆくことは避けられない。 その中で、土地に根ざした民族文化を守ることが喫緊の課題であるという主張は説...続きを読む得力を持つ。 特に、歴史的に見ても数十年の文明社会の維持のために、数千年積み上げられてきた土地の記憶を捨て去ることは、相変わらず土地や風土は存在するだけに、違和感を感じるし、文明が自然に適応するためでなく、頭でっかちにバランスを欠いて進んできた危うさを感じざるを得ない。 インディアンの世界観が、現在形で、母なる大地、相似形としての動物、植物、父としての太陽として語られ、純粋に、というより生物学的意味合いにおいて納得しながら読み進めた。これは現代人の限界かもしれない。 インディアンにとっての生活の場である土地の圧倒的リアリティの中での世界観はよそからは理解し難いかもしれないが、グローバル化によってこの世界観がどう変化するのか、我々はどう参照するのか、によって土地の記憶が博物館に陳列されるか、現在進行形の生きた思想になるかが変わってくると思った。 祈りや儀式は状況をリセットして現実や世界観と一体化するための手続きかもしれないと思った。ヒトは慣れるとすぐ忘れてしまうから。
アメリカインディアン、アラスカなどの先住民の暮らしを「土地と暮らす」と表現し、現代の私たちの暮らしは「土地と切り離されている」と表現する。この本は2013年マザーのイベントの露店で購入。キャンプは、「土地と暮らす」暮らしといえると思う。土地と切り離された暮らしがいかにそれたけで摩耗するものか、根本的...続きを読むな動物としての必要なものが欠落している暮らしだと感じる。だからこそ、定期的に、山へ川へ、平原へ行き、「土地」を感じる必要があるのかもしれない。それは確実に私たちに力をくれるものだから。 ※筆者の表現について…冗長なくどい表現力が多く、美しい自然が文体から浮かび上がるというよりは、くどい表現が鼻につき残念。巻末の漫画とのコラボは面白い。
前半部というか、190pくらいまでは菅啓次郎さんの書きもので、 残りの40pくらいが小池さんによるナバホ族の神話を描いた漫画です。 本書を読んでいると、人間というものは機械じゃない、 熊や蜂や猫と同じ生き物なのだから、 自然の中で生きるのがすごく厳しいことだとしても、 地球を俯瞰する視座でみてみた...続きを読むら、自然の中での生活が一番適当なのではないかと思えてきました。 町や村も含めて、現在の人間の暮らしというのは、 自分で農耕や採集や狩猟をしない都市型(市場経済型)の生き方をしている。 それって、僕の言葉でいえば、 人間が自身のために作った温室のようなシステムにひきこもって 生きているようなものかもしれないです。 温室にこもって、自然と対立する立場をとるのが、今の先進国の人たち。 もっといえば欧州型の考えに席巻された人たちのとる立場。 温室には温室の利点がありますが、そういった生活によって失われる、 人間の野生性というものがあります。 アメリカの広大な土地に住む、いくつものインディアンの部族たちに 伝わる神話や伝承、そしてそれらに基づく生活、生き方の哲学、世界観。 土地に密着し、土地に溶け込むからこそ生まれる、 土地と人間が食い違いを起こさないような考え方に満ちているように思えました。 本当に、インディアンの人たちは、自然をリスペクトしているし、 自然を損なってまで利益を得ようとするような、 欲の皮の突っ張った考え方をしない人たちだと思います (そういう人たちが多いと思う)。 それでも、部族の儀式は読んでいるだけで痛く感じるくらいですし、 その部族に生まれたかったとは思えません。 仏教の苦行のようなものがそこにはあるようです。 また、太陽を特別視するところなどは、 古代エジプトに通じるものがあります。 そのあたり、人類学の知識のある人は比較してみたら面白いのではないでしょうか。 最後に。 書きもの担当の菅さんは詩人でもあるということで、文章がやはり そういう趣のあるものでした。かといって、論理がないというわけではなく、 逆に論理の整合性をしっかり精査して書いているようなところもあります。 しかし、後半部になるにつれてそういった趣のある「味」は薄まっていって、 説明文的な文章の「味」が強くなっていったように感じました。 まぁ、僕が疲れたためにそう感じたのかもしれない。 まとめると、自然と対立していくようなライフスタイルは 僕もあまり好まないかな、ということです。 そして、10代の頃ならば「遅れてるな」と笑い飛ばしたに違いない、 アニミズム的な価値観(動物、植物、鉱物、星々などすべてに魂があるという考え)に ついてすら、その感性にYESを言いたい、ということです。 話は変わりますが、黒人大統領が誕生したアメリカに、 いつかインディアンの大統領が誕生しませんかねぇ。 そういう日が来たら面白いと思います。 それも、アメリカの大量消費、自然との対立の価値観に毒されていない、 インディアンらしい人物がなったらいいな、なんて思ったりもしました。
わたしたちが、自然を畏れ、敬い、その恵みに感謝することの大切さを忘れてしまって、いったいどのくらい経つでしょう?現代社会が如何に仮想的で、実態を伴わないものであるかということに、改めて気づかされる1冊でした。 なにかを決めるとき、7世代あとの人々のことを考え、その人々に対し責任を負うものでなければな...続きを読むらないという考えが、原野で暮らすインディアンの基盤にあったということに驚かされました。 人間もまた自然の一部であり、この世界の片隅で生かしてもらっているという事実があるにもかかわらず、わたしたちはあまりに多くのものを破壊し、捨て去り、置き忘れてきてしまいました。自然を支配し、利用しようという思い上がった態度に気づいていながら、すでにもう後戻りできないところまで来てしまいました。 素朴でありながら、深く真理を見通したような、彼らの思想に似たものを、かつてはわたしたちも持ち合わせていたはずです。手遅れかもしれませんが、いまいちど考えてみる機会になりました。
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