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戦前期、「近代」を問う日本の知識人たちは何を思想的課題とし、何を思考し続けていたのか。田辺元の「弁証法」と保田与重郎の「イロニー」を二つの極に、三木清の「人間学」・萩原朔太郎の「デカダンス」の思想を媒介項とすることにより戦前期昭和思想の思想地図を大幅に書き換える。同時に、ハイデガー・ベンヤミンらと同時代の思想的営為として世界の哲学思潮の中に戦前期昭和の思想を位置づける画期的著作。(講談社選書メチエ)
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Posted by ブクログ 2021年09月20日
ドイツの思想史において、ドイツ観念論の哲学者であるヘーゲルの「弁証法」と、ドイツ・ロマン派の論客シュレーゲルの「イロニー」の概念は、密接なかかわりをもっています。ところが日本の思想史研究のなかでは、この二つの概念が関連づけて論じられることはまれでした。本書は、じつは近代日本の思想史においても、「弁証...続きを読む法」と「イロニー」の概念は、けっして遠くへだたったものではなかったということを明らかにし、近代日本思想史の分断を架橋することをねらっています。 近代日本哲学のなかで「弁証法」をみずからの思想の重要な概念として採用したのは、哲学者の田辺元でした。一方「イロニー」は、日本浪漫派の保田與重郎によって主題的に論じられてきました。本書は、一見遠くへだたっているかに思えるこのニ人をつなぐ位置にある思想家として、三木清をとりあげます。三木は、一方ではマルクス主義に人間学的な発想を導入するとともに、他方ではロゴスとパトスの媒介という発想に基づいて文学の分野における評論活動をおこなっています。そして著者は、若き日の保田が、この三木の思想から影響を受けていたとしています。 こうして、田辺の哲学と保田の文学が三木によって架橋されることが明らかにされますが、さらに著者は、戦後の田辺がマラルメの詩などに大きな関心を寄せていたことに触れて、日本の思想史のなかで「弁証法」と「イロニー」の両概念が予想以上に近いところに位置していたと論じています。 このほかにも、かつて宇野弘蔵と並び賞された経済哲学者の梯明秀や、田辺に将来を嘱望されながらも夭逝した松下武雄の思想、さらに保田と近い位置にあった萩原朔太郎の晩年の日本回帰の理由など、日本思想史の隠れた水脈が掘り起こされています。
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弁証法とイロニー 戦前の日本哲学
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