Posted by ブクログ
2019年02月15日
まさに目からウロコが落ちる話ばかり。
結論的に言うと、生物の寿命と老化現象というのは未だ未解明の部分が多い。そもそも、生物の細胞は自己修復と複製を繰り返すことにより新しくなり新たな細胞に生まれ変わる。このシステムが壊れなければ老化をするはずがない。(植物は老化せず、何百年も生きる樹木があることは誰で...続きを読むも知っている)しかし、実際はそうではない。
著者は、「生物の寿命は、個体によるのではなく、種族全体、ひいては生態系全体を守る為に遺伝子により決まっている」と主張する。
例えば、牧草とウサギとキツネの関係を考えてみると、ウサギの寿命が高すぎれば、ウサギの数が多くなり、ウサギの住んでいる場所の牧草を食べ尽くしてしまい、結論としてウサギの群れ全体が絶滅してしまう。そしてウサギを食べるキツネも絶滅する。ウサギの種族は種族全体を守る為に寿命を短く設定し、種族全体を守っている。そしてキツネもウサギを食べ尽くさないようキツネの個体数が寿命により調整されている。そして老化はなぜ起こるかというと、老化し、逃げ足の遅くなったウサギをあえてキツネに食べさせることにより、繁殖が可能な若いウサギを守っているのである。
さらに、遺伝子はすごい仕組みが隠されている。
生物は飢餓状態や高ストレス状態にさらされた時の方が、長生きする。これはどの生物の実験によっても明らかになっている。
著者は、この仕組みを「通常の環境では、体はできる限り長生きしようとはしていないのだ。おそらく自然は、平和時には死亡率を高くして、ストレスのある状況では死亡率を低めたいのである」と論じている。つまり、環境が良く、食べ物も豊富な時は、何もしなくても生物は増えていってしまうので、それを調節するために老化を促進し、寿命を短くする。そして、環境が激変し、食料の無いような状況では生物はバタバタと勝手に死ぬので、種族の絶滅を防ぐために老化現象を発現させず、寿命を高めるのである。
これらの理論を踏まえて、本書では人間の老化を防ぎ、寿命を伸ばすには、遺伝子に、「今は飢餓状態に近いので老化現象を発現させなくてよい」と誤解させればいいのだと説いている。
筆者は、化学技術、機械技術等の進歩により、「将来、人間は老化、寿命を克服し、1000年生きる時代がくる」と予言している。そうなった時、地球が将来、何百億、何千億に増えるであろう死なない人間を抱えたままで、今の地球環境をどう保つかが問題となることも論じている。
筆者は、老化現象を抑えるため週に1度絶食をしていて、極めて健康だそうだ。本書には老化現象を抑えるサプリメントから食事の取り方まで、詳細に記載されている。1000年生きることを目標にしたいと思っている人はもちろん、思ってない人も是非読んでほしい一冊。