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〈宗教〉なんて過去の遺物? あやしいもの? 怖いもの? そんなあなたのために、ざっくばらんな世界〈宗教〉ツアーをご用意しました。ご安心ください。何か特定の〈宗教〉へお誘いするようなことはありません。私もまたいわゆる〈無宗教〉の一人ですから。「〈宗教〉という言葉はやや漠然とした言葉です。この茫漠と広がる意味領域を大雑把にひっくるめて述べるとすると、〈宗教〉とはなんらかの制度として存在している、とでも言っておくしかなさそうです。そうした制度の別の側面は、人びとの意識のなかに現れるさまざまな世界イメージです。人びとは日々の暮らしのなかで世界イメージを自己のものとする努力を行なっています。この努力の世界に読者をいざなおうというのが本書の目的です」(はじめに)宗教家や宗教学者にはちょっと書けない、この脱〈信仰〉型の宗教案内で、私たち自身の偏見や怖れをも、このさい解きほぐしてみましょう。
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Posted by ブクログ
宗教について関心をもったらまずこれを一冊、というくらいによくまとまっていると思う。いわゆるキリスト教とか仏教といった創唱宗教から始まり、「宗教」にカテゴライズするべきか迷う儒教や神道、果ては名前のない信仰や文化といった「見えない宗教」までカヴァーしている。
特に筆者が強調している中で重要だと僕も思うのは、1)「宗教」とひとくくりにされているそれぞれの内実が”構造的”にまるで違うことがあるということ、そして2)「宗教者」はそれほど私達と違わないし、ドラマチックな存在でもないということだ。
1)については、特にイスラムが例としてわかりやすいだろう。イスラムは法律や政治にまで影響力をもたらす宗教で、これは多くの先進諸国における宗教の考え方と相反するものになっている。事実、日本人の多くは「個人的な信仰」は認めるが、それが他人や政治といったところに影響を及ぼすことを快く思っていないし、そういった宗教の私事化を当然だと考えている。
しかし「宗教は私事化したものであるべきである」というのは極めてプロテスタント的な考えであるということはよく言及されるところであるし、また島薗先生の「国家神道(皇道・道徳)の下に個人の間でだけ宗教が許される土壌が日本では作られた」という指摘にもかなり説得力があると思う。ようするに、「宗教」という観念はそこまで自明のものではなくて、文化の影響を多分に受けているということだ。
本文中では宮古島の人々を例に出し、「『地元ではこんにちはってどう言ってる?』と聞いたら『何も言わずに家にずかずか上がる』とのことでした。宗教だってじつはこんにちはのようなものかもしれません」と著者は述べているが、これは端的にこのことを説明している。極めてファジーな概念である「宗教」だからこそ、この言葉を用いるときにはその拡張性と多様性について考慮に入れる必要がある。
2)については村上春樹の『約束された場所で:アンダーグラウンド2』でも触れたが、こちら側とあちら側はそこまで違わないという指摘である。確かに「宗教」者は、様々な技法を用い精神に影響を及ぼすことに余年がなかったり、外部に対して排斥的なグループを形成したり、あるいは慣習と異なる理解に苦しむ戒律に従っているかもしれない。そしてそのことはある種の得体のしれない恐怖感をもたらすかもしれない。
けれども、やはり同じ人間である以上、それを行うに至ったメカニズムの大半は体感的にも理解可能であるものだと思われるし、少なくとも僕の経験上それはかなりの部分において言うことが出来る。彼岸と此岸に分けてしまうことはたやすいし認知的に付加もかかりにくいけれど、ここを放置し続けてしまうことは端的に「もったいない」。宗教者を理解するということは新たな人間理解の鍵になるし、そしてそれはひいては自分自身の理解にも繋がることなのだ。
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