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なぜ人はアーティストを目指すのか。なぜ誇らしげに名乗るのか。美術、芸能、美容……様々な業界で増殖する「アーティスト」への違和感を探る。自己実現とプロの差とは?最新事情を増補。
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Posted by ブクログ
本を読む前は、なんとなく「芸術に携わる人って、カッコいいな」と 良いイメージを抱いていました。 昔から絵を描くのが好きで、芸術分野の学校へ進もうか悩んだ時期もありました。 この頃から、芸術に身をおく人は特別、という先入観があったのかもしれません。 しかし、思春期の心に抱いた淡い憧れは 「有名になるの...続きを読むはほんのひと握りの世界なんだから、現実的になって。」という 親の一言で呆気なく散ってしまいます。 たまに、このことを思い出しては、 「あの時親の反対を押し切って芸術系に進んでいたら今頃は・・」と 空想に耽る時があるのですが、 この本を読んで、いかに自分が「アーティスト症候群」に陥っているか 思い知らされました。 私のように、「アート」「アーティスト」「クリエイター」という言葉に、 ”なんとなく”、”ぼんやり”憧れを抱いているような人は、 一度読んでみることをお勧めします。 筆者の歯に衣着せぬ批評のおかげで、 空想の世界から現実に一気に引き戻されました。 本書では、「アーティスト」という言葉が どのような時代的背景のもと生まれ、 現在に至るまでどのような存在として位置しているかを 絵画の歴史、資本主義社会におけるアートの扱い、欧米文化の流入など 様々な観点で説いています。 私にとって「現代アート」「アーティスト」という言葉は 当たり前のように存在していたもので、 それ自体に疑問を持つことはなかったのですが、 現代アートに触れた時の"居心地の悪さ"は気になっていました。 西洋絵画を見る際は、表現技法の変遷や派閥闘争など 様々な歴史的背景を併せて鑑賞し、 書き手の思いを汲み取ろうとする行為そのものに面白さを感じていたのですが、 現代アートの場合、いまいち楽しみ方がわからないことが多々ありました。 鑑賞する側の芸術に対する態度や知性を問う一方で、 作り手が何を考え、何を悩んで、一体私たちに何を訴えかけているのか 全くわからない、そんな感覚を覚えました。 だけど、本書内で、 現代アートは自己哲学に囚われた末の表現物であり、 表現の枠組みもかなり緩くなり、もうなんでもありな形になってしまっている、 という筆者の言葉が、そんな自分を救ってくれたように思います。 「なんでも鑑定団」と「誰でもピカソ」を対比させた章では、 番組の方向性や出される表現物の種類が大きく違えど、 アートや芸術が、いかに人の欲にまみれているものか皮肉を交えて解説。 審美眼を認められたい目利きとしての承認欲求、 優れた表現者としての承認欲求、 出演者それぞれには何かしらの認められたい欲求があるんだ、と鋭く指摘。 言葉には出てこない、人の深層心理を見抜く人なんだなぁ、と思いましたが、 筆者の真正面から受け取らない視点、意地悪な言葉選びも面白いです。 個人的に一番刺さったのは、「自分流症候群」の章でしょうか。 なぜ、「アーティストになりたい」若者で溢れかえっているかを 社会的な側面から考察している内容ですが、 誰とも違う自分という存在を世に知らしめたい、という承認欲求は、 今の社会からの「逃げ」の行き着いた結果なのだと思います。 生まれた時から格差は付いてまわり、 資本主義社会で競争せざるを得ない中で、 汗かいて働いても自分の老後は不安定、 会社もいつ潰れてもおかしくはない、 健康的な生活と家庭を持つという安定ルートを歩くのも一苦労。 目に見えて苦労するのがわかっている現代だからこそ、 今の人生悔いないように生きよう、 会社が守ってくれるという幻想は捨てて、 自分1人で立っていける食い扶持がなければ・・ そんな思考、人生を憂いた先に、 「自由」「自分らしさ」「とらわれない働き方」「手に職」という イメージで纏われた、アーティストやクリエイターという言葉に 惹かれる人が多いのではないのでしょうか。 当事者だからこそ、この非現実的な言葉に逃げる心は、 少しわかる気がします。 アーティストという言葉、職業は、もはや芸術分野の人たちだけの言葉ではなく、 現代社会の中で一般的になった言葉であり、 社会の閉塞感から逃れるために選ばれた言葉でもあると思います。 アーティスト、という言葉や存在が悪いというのではなく、 言葉を通して今の社会を見つめ、何が問題なのかを切り出す鋭い視点が とても面白いと感じる内容でした。 この筆者の作品を今後ももっと読みたいと思います。
元アーティストという稀な肩書を持つ著者による、現代のアートとアーティストを取り巻く状況についての平易な解説。 先ごろ読んだアトリエインカーブの著者とは「アート」に関する定義からかなり異なると思われるが、両者の対論など見てみたい。
芸能人などの話しが出てきて、アートの知識がなくても読みやすいと思った。作者が自称する「やや理屈っぽいおばさん」が、相手を平手でバシバシとぶっていく印象。
アーティストというのは僕と同じく自意識過剰な奴らのことを言うらしい。ということを手を変え品を変え書いているようだ。 芸能人アーティストの分析もしているが、できれば文庫版増補でKagerou書いたひとの分析も欲しかったな。
技術を持ち世におもねず100%自分をかけているのがアーティスト。格差社会の中のオンリーワン幻想、アーティストというポジションは、膨れ上がる被承認欲と根拠ない万能感を抱えた若者の、夢の受け皿となっている。 日々の糧としての仕事vs余裕人のアートだったのが、いろいろなところに余裕ができてきたから、アー...続きを読むト需要ももアーティストも増えたのかな。
あるなぁ~と思う。 呼び方なんてどうでもいい、とも思うが、 違和感を感じることがあるのも事実。 呼び方(呼ばれ方)は、特に自称の場合、自意識の根幹のようなものだから、 たかが名称、されど名称だ。 僕の周りには、アーティストは少ないけれど、 クリエーターならたくさんいる。 Webデザイナーもク...続きを読むリエーターと呼ばれることもあるし、 エンジニアもディレクターもカメラマンもライターも、 大雑把にクリエーターとして括られる場合もある。 若手起業家とかITベンチャー経営者なども似たようなところがあると思うが、 そういうちょっとカッコいい名称って、自意識の衣なのだ。 だから冷静に見ると恥ずかしい。
■経緯 デザイナーの端くれとして、アーティストとクリエイターの違いには興味があったので購読。 ■感想 女であることを当たり前に肌に纏える人とそうでない人がいて、後者で男と同じ土俵に立とうと肩肘張るのはしんどそうだな、という印象を著者にもった。 書いてあることは納得なのだけど、感情的な否定が見受けら...続きを読むれる。 いろいろなアーティストが引用されていて、どんな作品だったのか画像検索しながら読みすすめるのは楽しかったです。 ■共感 ・なんちゃらアーティストという肩書きが巷にあふれでて、もはや何がアートなのかの定義が曖昧になっている。 ・職人=物作りのプロ、アーティスト=発想のプロ。作らなくても指示すればいい。 ・アイドル=作られた歌を歌って、コーディネートされて、虚像として見せればOK ・アーティスト=自分で作った歌を発信して、独自のファッションスタイルをもち、生き方の格好良さも求められる。 ・メディアが発達して風穴があき、サブカルという概念が崩壊した。 ■不可解 ・前半のアーティスト志向の若者と芸能人を切るときの口調が感情的で辟易してしまう。怒りが透けて見えるのはあまり気持ちのいいものではないです。事実を淡々と書いたほうが共感できるのになぁ。
アーティスト崩れが書いた本。 ドクター崩れの塾講師が、自分は学者になれなかったんじゃなくてならなかったんだ、学者なんてならない方がいい、と何も知らない受験生たちに吹き込むように授業をする感じとそっくりで、アーティストで居続けられなかった著者が、やろうと思えば続けられたけど、アートじゃだめだったんだ、...続きを読むてゆうか今「アーティスト」って呼ばれている人、全然アーティストじゃないしwwwみたいな感じで語っていくので、なるほど確かに、とは思いながらも、いやーな気持ちになりながら読んでいた。 後半はそれなりに考察が加えられていた気がするけど、全体的に横たわっている「崩れ感」(なれなかったものへの羨望と嫉妬が入り交じり、その能力がないくせに諦めがつかないネガティブな感じ)が出まくっていて、そっちの方に気が取られてしまった。もったいない。
著者は芸大の彫刻科卒で20年間アーティストだったそうです。 今はアーティストではない著者の「アーティスト」というカタカナ語に対する違和感から本書は始まります。芸能人の箔(伯?)付けの為のツールと成り下がったアート=美術に対する苛立ち、洋楽シーンから移行してきたミュージシャン(職人)ではなくアーティス...続きを読むトという言葉への変遷、そして氾濫、吹き上がる自意識への嫌悪。でもロックと美術は昔から親和性があったような気がします。ジョンもミックも美術学校の出身ですし。まあ、それはともかく、著者の矛先は自称アーティストやワナビー・クリエーター、つまりは多くの若者の実存ヘと向かいます。 僕としては「私もアーティストだった」という章が一番おもしろかったです。 ここで著者は最終的に如何にアーティストをやめることになったかを自己分析しています。芸大の受験から地味で真面目な学生生活、そして院生になれずに地元に帰った著者は、美大受験予備校の講師をしながら制作活動に入ります。年に数回の企画でギャラリーに作品を展示しながら、ビジネスとしてのアートに関わりますが、アートで生計を立てていたわけではなく、それでも、作品に向かう態度はまぎれもなくアーティストだった。著者にとって作品とは思想であり、その時点では譲ることのできない世界の見方であったが、「物」としての趣味性(意匠)に傾きながら、「自由の気配」を示し続けるというアートの姿がナンセンスなものに思えてくる。アートがアートでなければやれないこと、ここで著者はつまずいたようです。でも、ここから何かを始められないか。作品というのは作者の「言わんとしていること」と「実際に言っていること」との間で常に股裂き状態にあるものだから、その差異の反復として創造の受け応えが可能なのではないかと思いました。
誰も言ってくれなかったことを言ってくれている著者への爽快感のあと押し寄せる、「理屈ばっか」という不快感のせめぎ合い。
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大野左紀子
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