雪やどり

雪やどり

330円 (税込)

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火事で両親を亡くしたふみは、一膳飯屋で働きながら叔父一家と暮らしている。叔父は日銭を稼ぎ、叔母は賃仕事をしているが、子どもが二人いて生活は苦しい。ある日、ふみの許へ縁談の話が舞い込んだ。男は八百屋を営んでいて三十も年上だ。「今よりましな生活ができるじゃないか」と、叔父夫婦はおずおずと縁談を勧める。けれど、ふみには密かに想う相手がいた。時々店に来る大工職人の正太だ。ふみの気持ちを察したのか、大工仲間が正太をからかった。しかし、「やめろ。俺には、そんなつもりはこれっぽっちもねえんだ!」正太の怒った顔を見て、ふみの心は砕け散る。年上の男の後添いになんてなりたくない。でも、あたしには頼る人がいない。ふみは長屋を出て、山へ、山へと向かった。日が暮れて力尽き、とうとう草むらに倒れ込む。ふみを狙って山犬たちが近づいてくる。―あたしは、おとっつあんとおっかさんのそばへ行くんだ……。覚悟を決めたとき、「立ち去れ、命が惜しければ!」誰かが刀を振るって山犬を追い払った。恐る恐る顔を上げると、白装束の若い男がふみを見下ろしていた。

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