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Posted by ブクログ
横浜が多国の共同租界になっていたら… 刑事を辞めた私立探偵のもとに人探しの依頼が来て―― 綿密で解像度の高い歴史改編SF小説
■あらすじ
第二次大戦後の横浜、講和条約として5カ国によって共同統治されることになった共同租界が舞台。元租界警察で、今は無免許の私立探偵を営んでいる長堂のもとに、ある女性から人探しの依頼が来る。
彼女の弟であり、IT企業に勤めているらしいのだが、無理やり拉致されてしまった可能性もある。果たして彼を見つけ出すことはできるのか…
■きっと読みたくなるレビュー
本作は時代設定は現代でありながらも、もし歴史が変わってたらという歴史改編SF。横浜がアメリカや中国など複数の国に共同租界されているパラレルワールドを描ています。
ただお話の主軸自体はシンプルな人探しであり、ハードボイルドな王道の私立探偵小説として一級品の仕上がりになっています。
まず舞台が「横浜」というのが最高にニクいですよね。少しばかり過去の外交交渉や政治の歯車が狂っていたら、本当にあり得たかもしれないと思わせてくれる。この緻密に構築されたパラレルワールドを、もっと隅々まで覗いてみたくなりますね。
実際の横浜の地理や歴史をすえながら、もしここが多国籍な租界地だったら、どんな街や社会が形成されていたか… ベテラン作家である佐々木譲先生の圧倒的な作り込みと想像力の手腕には驚きしかありませんね。
そしてリアリティへの追求が半端ないんすよ。複数の大国が同じ街にひしめき合っている以上、そこには当然、独自のルールや激しい駆け引きが存在する。
行政自治権や治外法権、それぞれの国が抱く策略、変動するパワーバランス、さらにはそこに絡んでくる日本政府の政治的思惑もあって… これらが綿密できめ細やかな設定で配置されており、解像度の高さには驚かされましたね。
探偵小説としての調査フェーズも、実にクールでシニカル。特に主人公である探偵長堂の、プロフェッショナルとしての仕事へのこだわりっぷりが、男臭くて最高にカッコイイんすよね。
クライアントの依頼を完遂するために、泥臭く粘り強く、知略を巡らせ、野生的な勘で危険を察知しながら、ギリギリの交渉で情報を獲得していく。このハードボイルドっぷりは、男子ならだれでも憧れちゃいますよね。
そうして地道な調査を続けるうち、背後に横たわる巨大できな臭い陰謀がジワジワと見え隠れしてくる。終盤にかけては、まさに古き良き極上の探偵小説を読んでいる贅沢感をたっぷりと味わえました。
■ぜっさん推しポイント
本作と出会えたことで、異国の権力が介入する租界という場所がいかに暮らしにくく、そこに生きる人々が不条理で大変な思いをしているかを擬似体験させられました。
この横浜が共同租界になっているという設定は、突飛なフィクションに思えるかもしれない。しかし現実でも沖縄には米軍基地が存在してるんすよね。
治外法権の壁に阻まれるもどかしさだったり、たびたび発生する基地絡みの事件だったりする構図は、現実のそれと変わりません。他人事ではない生々しさを感じざるを得ませんでした。
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