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本書は,新しい時代・社会における数学教育の設計思想や具体的な方法について提案し,合わせて実践例を挙げた。そのために,批判的数学教育(Skovsemose, 1994)を参照し,社会的オープンエンドな問題(馬場, 2007, 2009)を用いた理論的,実践的研究を行ってきた。数学教育における社会的オープンエンドな問題は,社会的な文脈を踏まえて,数学的な意味の多様性だけではなく社会的な意味での多様性を持つ解をもつような問題を指している。例えばケーキを分けるときに,割り算の導入では「等しく」分けると条件を付ける。しかし「等しく」を取り,祖父母,父母,姉妹と分けるなどの文脈を入れることによって,祖父母にやさしくより多くあるいはより少なく分けたりする場面を考えることができる。また同じ文脈でも,「子どもだからと」子どもに注目した分け方を提案するかもしれない。社会的オープンエンドな問題は,このように社会性を積極的に取り入れることで,多様な解が導き出せるものを言う。
本書は理論編,実践編,応用編に分かれ,理論編では批判的数学的リテラシーを育てるカリキュラムの原理について,教材の開発と実践,総合的に検討し,共通する本質,各学校段階における特徴,文脈と価値観の対応などについて構成論,目的論,教材論の観点から議論した。また,実践編では,4つのカテゴリー,4つの学校段階に分かれて,16に分かれたセルの内,8のセルの事例を示し,解の総合性, 解に埋め込まれた社会的公正,問題の範例性という 3 点を明らかにしてきた。応用編では,社会的な観点から数学教育を見ること,歴史的な観点から数学教育を見ること,問題の範例性をメタ問題という観点からとらえ直すことを行った。
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