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たぶん初めは小さな穴だったのだ。歯医者として成功をおさめ、美しい妻とかわいい娘がいる。上品なアシスタントの働く清潔な職場。自分の美学で建てた城に住むちょっとした王様。だから、妻が小説を書いて新人賞を受賞したことなど、僕にっとっては、意外な、けれども些細な事に過ぎないはずだった―――。インターハイ三位の実力を持つ四00メートルハードル選手だった主人公が、順調な人生の半ばで経験した、思いもかけない挫折と再生を、繊細に、そしてほろ苦く描いた感動作。
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Posted by ブクログ
子供が初めて飲むコーヒーのような感じ?の読後感だったのを覚えてます。高校生の頃に読みましたが、その頃は何度も読み返してました。ラストというより中盤のどろどろした苦い感じが、今までの「川島さん=青春」という私の中の図式を崩したからかなあと思います。
もう一度走りたいと常々思っている自分がいる。 本当にやりたいことをやることにあこがれる自分がいる。 そういう意味で夫と妻とリンクする自分がいて,客観的に読みながらもついつい主観的になって物語に入り込んでしまった。 再び走り出した歯医者夫婦が再び走り出す物語。
わたしとはほとんど共通点のない主人公になぜか共感してしまう不思議な小説です。川島誠さんの陸上競技を扱いかたが大好きです。
主人公は珍しく中年。いつもより落ち着いた文体が心地よい。ちょっと解り辛い心情が描かれているものの、ラストは前向きで好きですね。
「800」からの続編みたいな気がしていて、そのつもりで読み進めました。もうちょっと書いて欲しいなと思いました。読み終える直前、もう終わってしまうのかーという残念な思いがあってもう少し読んでいたかったです。
巷では『一瞬の風になれ』といった"走る"小説が話題のようです。それでという訳ではないのですが、自身が800mの選手だった川島誠さんの小説です。もっとも"走る"ことは背景としてしか描かれてませんが(ちなみに表題は再出発の意味です) 文体に凝ってますね。でも、それ...続きを読むが少し上滑りしてるようです。 どろどろしたテーマなのですが、ごくさらりと、冷静に扱っています。都会的といえばそうかもしれませんが、特に妻などの女性の側からの視点の欠如が気になります。結果としてなんだか物足りないものになってしまいました。
「彼女が単に、とても植物園にいることを楽しめるということ。それ自体を私はうらやましく思った。 なぜなら、私の場合は、同じくらいの喜びを得ようとするなら、四〇〇メートル・ハードルをしなければならないのだ。」 なんだかここが好き。鞠子という名前も可愛くて好き。 はじめは文体に慣れなかったが段々と楽し...続きを読むめた。 読んでる最中はそんなに古い小説だと思っていなかったが最後の方で出てきたインプラントの記述を見て奥付を開いてみると1994年刊行でびっくり。文体も昔の本だからなのかな。 この作者の最近の小説を読んでみたいと思った。 あと、題名がダサいと思う。
35歳の主人公。 妻は美人でスタイルもよく、娘はもちろん(なぜもちろん?)可愛らしい。 普通の歯科医院より3倍も多く設備やデザインにお金をかけた個人歯科医院を経営し、丘の中腹に建つゴージャスなマンションでは、後付けで工事してもらって寝室で有線放送も聞けるんだってさ。 主人公の車はボルボ、妻の車はプジ...続きを読むョー。 本人はスポーツマンで、金もセンスもある。 とことんいけ好かない奴ではないか。 で、妻が、いつの間にか小説を書いていて、新人賞を受賞し、売れっ子として活躍しだしたところから夫婦の歯車が狂いだす。 それのどこが挫折なんですか? 甘ったれるのもいい加減にしろ。 確かに妻の書く小説は、過激な性描写が多く、私小説のように読めなくもないとなると心穏やかでいられないのはわかるけど。 なんだか自分が被害者のように傷ついたアピールをするのは気に入らん。 悉く、何が何でも気にくわない。 でもこの話、挫折を知らないこの主人公の話ではなく、ごく普通の暮らしをしているごく普通の35歳の人間なら、ごく普通にこういう経験はあるんじゃないだろうか。 ある程度成功したと思える自分の人生が、実は非常に不安定なものであり、簡単に失敗に転じてしまうかもしれないという不安。 仕事に対するものか家族に対するものか、絶対と思っていたものが絶対じゃないとわかってしまうこと。 そこで一度立ち止まった主人公が、もう一度夫婦で向き合って、また走り出そうという話。 しかし、互いの不倫を追及することもないまま、二人でエイズ検査を受けてチャラにするって心理がよくわからない。 うーんんん。(-"-)
最近読んでいた川島誠とは一味ちがう。でも主人公の歯科医もかつてインターハイハードル選手だった。幸せな家庭。妻が小説で新人賞を取るまでは。 年を取ると軽く、速くは走れない。でも、意味をたくさん背負って走るんだ、もう一度。
川島さんの本ということで買ったが、自分とかなり歳がはなれてるせいか感情移入が難しかった。ちょっとした勇気と希望をくれる本。
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