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Posted by ブクログ
本書は、安倍晋三元首相銃撃事件の発生から一審判決に至るまでの軌跡を、読売新聞取材班の眼差しを通して追った圧巻のルポルタージュである。感情的な煽りや余計な穿ちを徹底して排除し、事実の積み上げと無駄のない削ぎ落とされた筆致で構成された紙面には、ジャーナリズムの矜持が力強く宿っている。
本書を通読することで、日本社会を震撼させたあの日の凄惨な光景、被告が歩んできた苛烈な半生、そして法廷で明らかにされた被告人および関係者の肉声、そして判決の全貌を、客観的かつ深層から理解することができる。この未曾有の事件をいかに解釈し、社会としてどう位置づけるか。その問いに唯一絶対の「正解」は存在せず、最終的な判断は読者一人ひとりの良識に委ねられていると言えるだろう。
しかし、本書の終幕において強く提示される「理由の如何を問わず、暴力による社会の変更の試みは断じて許されない」「暴力へと暴発する前に、社会に潜む歪みや構造的課題を白日の下に晒すことこそが報道機関の役割である」という主張には、深く同意させられた。報道の自由と民主主義を守るため、この困難な責務を果たそうとするメディアの「不断の努力」に対し、強い敬意とともに今後の姿勢を注視していきたいと切に願う。
Posted by ブクログ
自分自身が山上家ほどではないものの不安定な家庭で育ち、公立の進学高に進んだが周囲の友人たちはほとんどが安定した裕福な家庭で育っていて、勉強のことだけ考えていればいいのを羨ましく思うこともあった。家庭内の問題を人に相談したところで何の解決にもならないと思い、友人にも先生にも相談したことはほぼない。だから多少なりとも山上被告の心情は想像できる部分がある。
暴力は許されないし、本来無関係の安倍元首相を標的にしたことも筋が通らない。だけど、その立場に置かれた人にしかその苦しみは理解できないよなぁ、という複雑な思いもある。
家族というのはとにかく難しい。母親に暴力を振るう父を幼い頃から見続け、その父が自殺。本書の記述によれば母親は入信前からネグレクト気味だったようなので、元々変わったところのある人のように思える。母の狂信と、それによる母と祖父との不和、兄の病、兄による母への暴力と、兄の自殺。どれか一つでも大変な家庭の事情をこれだけ抱えていれば、それだけで生きることの難易度は大幅に上がる。自分さえ良ければいいと割り切って生きられればいいが、なかなかそうはいかないのが家族の難しさ。精神的にも経済的にも足を取られ続けながら生きなければならない。幼い頃から注がれるべき親からの愛を受けられなかったことで、人格形成にも影響を与えただろう。いくら努力しても上手くいかず虚しくなり、自分の人生に見切りをつけても不思議ではない。
本書で被告の母は純粋、品がある、信じやすいと描写されていたが、私には何故ここまで身勝手に子どもの人生を踏み躙れるのか、愛情のなさ、邪悪なまでの無関心さが全く理解できなかった。
結果的に宗教2世の問題が大きくクローズアップされることにはなったが、戦後最長の政権を担った首相経験者を失ったことは日本にとって巨大な損失となってしまった。その意味でも山上被告の行為は決して許されるものではないし、刑を減ずるべきだとも思わない。ただ、ここまでのことが起こるまで統一教会問題が一種のタブーになっていたことは、政治家、メディア、社会全体が反省し問い直してくべきではないか。似たような構造の問題は他にも数多く存在しているのではないだろうか。
Posted by ブクログ
おもしろかったというのは、とても不謹慎なんだけども興味深く読んだ。
裁判での妹さんの証言が全てなんだなと思った。
ほぼ育児放棄で迷惑しかかけてないのに、娘が働くようになったら韓国に行くからお金を貸せと追い縋る母親のおぞましさに吐き気がした。
長男もうーんという感じだし、山上被告があーなるのは、心情的にはわかる気がする。
もう八方塞がりに感じて、どうにもならなかったんだろうな。とはいえ後半はちょっとひとが変わってしまい独りよがりな感じになってたけど、それだけ兄の自死がこたえたんだな。
今のように相談窓口もなかっただろうし、自分が同じ立場だったらと思うと恐ろしい。
彼のやったことは許されないし、もっと他に方法がとは思うけど判決は個人的にはちょっと厳しいなと思った。
やったことは殺人だし当たり前なんだけど。
宗教って怖い。狂信者って怖い。
Posted by ブクログ
絶望の凶弾―安倍元首相銃撃事件 山上被告を追った1294日
僕の感想として。
本書が描くのは、単なる凶行の経緯ではなく、
安倍晋三銃撃事件
に至るまでの一人の人間の内面と、その背後にある社会的文脈である。
山上被告は、特定の個人への私怨というよりも、家族を崩壊へと追い込んだと彼自身が認識する構造そのものに対して強い憎悪を抱いていた。その中核には、宗教団体への献金問題や家庭崩壊といった現実があり、長年にわたる孤独と閉塞の中で、その感情は蓄積されていったように見える。
本書を通して浮かび上がるのは、加害という行為の是非を超えて、なぜその思考に至ったのかという過程である。そこには、個人の問題に還元できない社会的要因や、支援の届かなさ、孤立の深さが横たわっているように感じられる。
一方で、この事件が社会に与えた影響は極めて大きい。宗教団体と政治との関係性や、いわゆる「宗教二世」をめぐる問題が広く議論され、制度や支援体制の見直しへとつながっていった。結果として社会が動いたことは事実だが、それが一つの暴力的行為を契機としている点には、強い違和感と複雑な思いが残る。
山上被告の行動の背景には、個人的な絶望と同時に、構造的な問題への訴えのような側面もあったのかもしれない。しかしそれでもなお、暴力という手段がもたらした結果の重さは消えることはない。
本書は、単に事件を追うだけではなく、
個人の絶望がどのように社会と接続してしまったのかを問いかけてくる一冊である。
Posted by ブクログ
分厚い書籍だったが、ページをめくる手が止まらず、あっという間に読み終えた。
これまでに報道されてきたことがほとんどで、これといった真新しい事実が書かれていたわけではなかったが、興味深く読めた。
初めて知れたこととしては、元総理を襲撃するに至るまでの経緯(元々のターゲットは違った)と、被告の妹の法廷での供述。
あと、被告の母親についての印象。
宗教に狂った、相当変わり者を想像していたが、上品な人。一言で表現すると、上品な人。
ただ、法廷での供述から受けた印象は、謝罪の言葉も言葉だけという印象を受けた。
おまけに事件後も、信仰を続けており、縁を切るつもりがないことに驚いた。
一番衝撃だったのは被告の兄が自死した際、母親が「献金のおかげで天国で幸せに暮らしている」と発言したこと、葬儀に関係者が突然来て、教団式で執り行われたことだ。
自分の子ども(被告の兄)が最悪の結果になっても、これ。
教団に心酔したきっかけ(長男の病気)は、仕方ないにしても、なお教団を崇め、残った被告とその妹に金を無心してたところからみて、なんというか、、、、、根源であることは確かだなという一言だろうか
暴力に意味を与えてはならない
暴力が、宗教問題をみなおすきっかけであってはならない
↑
終わりの方に書かれていたまとめ
共感はするが、、
それ以上に本事件が起きるまでに至った経緯と被告の半生には同情するし、やはり量刑を考慮する判断材料にすべきであると改めて感じた
併せて、控訴により量刑が変わり、被告、被告の妹両人の半生がこれまでより未来あるものとなることを願わずにいられない
Posted by ブクログ
2022年7月8日、安倍晋三元首相が選挙演説のさなかに山上徹也によって銃撃された。凶弾を放った山上の「絶望と危機感」の正体とは何か。なぜ、山上はここまで追い詰められたのか。戦後初めて、首相経験者が殺害された悲劇は、社会の何を炙り出したのか。事件当日から判決までの1294日間、山上を追い続けた読売新聞大阪本社記者による渾身のルポルタージュ。
自分は政治家としての安倍首相が好きなので、あの事件が起こったとき、本当にショックを受けて涙が出た。だから殺人を起こした山上に対して「家族背景から仕方ない」といった論調には全く賛同できないし、そういう話にしないでほしいと思って読み始めた。結論としてはめちゃくちゃな動機だし全く庇う余地はないと思えたが、こんな理不尽なことで人が殺されるのかと思うと、苦しくてつらかった。ご遺族の辛さは察するに余りある。統一教会は解散となったが、同じようなことが起きないようにするためにどうしていくべきなのか考えさせられた。
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