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間野山観光協会に就職して二年目の初夏。しおりは、初めての研修旅行に参加した。旅行といっても、目的地は隣接する富蔵市の温泉街。全職員参加の研修とはいうものの、メンバーは、しおりを除けば、丑松会長以下男ばかりの4人だから、酒が回ればバカ騒ぎで終わることは必定。そもそも温泉資源が存在しない間野山にとって、温泉街の視察など無意味だから、丑松会長がどう言い繕おうとも、これは公費を使ったオジサンたちの慰安旅行にすぎない。それでも、「美肌の湯」へと向かう遠足気分のドライブツアーに、しおりは心弾ませたのだった――。だが、廃屋と見紛うばかりの古びた旅館に到着すると、浮かれ気分は一変。しおりたちの他に客の姿はなく、老女将の顔には生気のかけらもない。その上、通された部屋の掛け軸には、土地に伝わるわらべ歌とおぼしき不気味な言葉が綴られていた。丑松が気付く。この歌は、昔、本当にあった“神隠し事件”と関わりがある……と。やがて、歌の“予言”どおりに、丑松、中堅職員の美濃、若手の山田、さらには事務局長の信楽までが、次々に姿を消していった。迫りくる死の恐怖に抗うしおり。そして消えた4人の運命――は?
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