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本庄慧一郎 書き下ろし短編小説「かんべんならねぇ」
仲むつまじい定吉、お浜の夫婦の楽しみは灯明の灯りを惜しんで消して、宵のうちからの暗闇で、枕をはねのけて抱き合うのが常だ。
しかしその夜は、強風に煽られた火事の貰い火で、長屋をあたふたと逃げ出した。
亭主の定吉は、なけなしの金で買い求めたお浜の着物などを背負いつづらに入れ担ぎ出した。が、宝物のかんざしを取りに戻り、焼け落ちる梁の直撃で即死した。
お浜は、定吉の死体を置いてけぼりにせず、必死に背負いつづらに入れた。
通りすがりの屈強な男が、親切ごかしにそのつづらを「運んでやる」と言う。が――。
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