紙一重

紙一重

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私立K脳病院には二百人の変てつ者が暮らしている。それは破れた風船を心中に抱いているような人々だった。

平野をつっぱしる中仙道のほとりに、私立K脳病院は玄関口を街道にひろげて建っている。明るい近代的な建物ともみえるが、一足裏に回れば風雪にさらされた幾棟かの病舎がいかにも世ばなれた形でかくれている。ひろびろとした田圃の中に黒い瓦ぶきのその病舎はいかにも時代めいた姿だ。明治時代の小学校かとも見えるその変てつもない建物の中には、二百人の変てつ者がひっそりと世をはなれ、時に猛獣となる危険を内にひそめたしずかな喧噪さで暮している。みんな、いわば破れた風船を心の中に抱いているような人々だった。

【著者】
壺井栄
小説家 1899年 - 1967年
香川県小豆郡坂手村(現内海町坂手)生まれ。
坂手郵便局や役場勤務後、同郷の壺井繁治を頼り1925年に上京。 以後東京。
1941(昭和16年)『暦』が第4回新潮社文芸賞を受賞。
1955(昭和30年)『風』で第7回女流文学者賞を受賞。
『母のない子と子のない母と』で第2回芸術選奨文部大臣賞を受賞。
1954(昭和29年)映画「二十四の瞳」(木下恵介監督、高峰秀子主演)が公開され、全国的ヒットとなり、小豆島と壺井栄の名が一躍クローズアップされる。

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