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Posted by ブクログ
経済的に恵まれていることと、個人の幸福はあまり一致しないという事実を、新市街の隙のない窮屈さと、本土のえもいわれぬ雑多さを比較して描いていたのだと思う。
更に、そこに生きる中学生たちの、それぞれが置かれた生活環境での生きづらさが痛く伝わってくる。数は少ないけれど、登場する大人たちの気持ちや行動も、わからなくはない。
沈みゆく(としか想像できない)場所で生きるのって、絶望しかない。
収録されているもう一遍「森は盗む」も主なテーマは同じなのかなと思う。物はそれぞれ置き場所が決まっている、という発想はとてもいい。
また読みたい作家が増えました。
Posted by ブクログ
裕福で暴力的な父。見て見ぬ振りをする母。理不尽な学校生活。心の支えになる異性の幼馴染。美しい海の景色。人工島で暮らす閉塞感。日常がどれほど苦しくても、幼さゆえにどこへも行けない。少年はノートに絵を描き、イマジネーションの世界に救いを求める。
湊かなえさんの原作で、何度も繰り返し観たドラマ『Nのために』を彷彿とさせる世界観の小説だった。
少年が父親の暴言や暴力に直面させられるシーンが何度か出てくる。そのどれも、生理的反応として時に否応なく流れてきてしまう涙以外、彼の表情や感情などについての描写はない。その描写がないことで、父親の言葉が自分の中に浸透してしまわないように、心を無にして、必死に抗っている少年の姿が浮かんだ。屈辱、羞恥、憎悪、憤怒。否応なくさまざまな感情が押し寄せてきてしまっても、せめてもの抵抗として、それらを表に出すことだけは断固拒絶する。理不尽な親からの言葉や仕打ちに対する、圧倒的な無力さを思い知って、どうすることもできないと悟ったとき、無力な人間は全ての感情を放棄して、空想の世界に逃げ込むことしかできない。
『Nのために』もこの小説も、自分の幼い頃を重ねて苦しくなった。大人になってからも、忘れていたい記憶がときどき不意に戻ってくる。友達によく言われた。ずっと鼻歌を歌っているね。ずっと本を読んでいるね。ずっとぼーっとしているね。そうね、だってそうやって気を逸らして、自分を守るしかなかったから。
最後、いきなり物語が終わってしまって少し呆気に取られたけれど、読み終わってしばらく時間が経ったら、あのくらい開けた終わり方が逆に良かったのかもしれないと思うようになった。主人公は、まだどんな未来でも描いていける幼い二人なのだし。最後にプールの底で見つけたものが本当に「セノーテ」だったのなら、それから彼らはどう生きたのだろうと、余韻の中で想像している。
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