無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで203万冊以上配信中!
プラトンとならぶ古代ギリシア哲学の巨人アリストテレス。彼はのちのヨーロッパ哲学に影響を与えただけではない。いわゆる三段論法を中心とする形式論理学の基礎を築き、具体・抽象、普遍・個別、可能・現実といった概念を創始して、近代自然科学の発展をささえる知の総合的な枠組をつくりあげた。われわれがさまざまな事柄を考える際の思考法そのものに関わる問題を、彼はどのように追求していったのか。本書は、そのねばりづよい知の探求の軌跡をたどるアリストテレス再発見の試みである。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
アリストテレスに関する入門書は案外少ない。その著作を読むことが入門であるとはよく言われるものであり、確かにアリストテレスについて知ろうとすれば『ニコマコス倫理学』や『形而上学』を読むことに優る入門はないであろう。しかし古典と呼ばれるもの、特に古代哲学を学ぶ際には、テクストそのものへの理解や解釈についての見通しが必要となる。基礎的な理解がなければテクストを読み進めること自体に大きな困難が伴うであろうし、何をどう読めばよいのかを知るにもいくらかの道案内が必要となる。本書はそのような読者にうってつけの最初のアリストテレス入門にふさわしい一冊である。
英語ではその入りやすさ順に、ジョナサン・バーンズ、ジョン・アクリル、クリストファー・シールズ、W. D. ロスの入門書がある。Very Short Introductionsのバーンズはアリストテレス研究の地図を与えてくれるものであり、ロスは古典的なテクスト密着型の入門書である。シールズはケンブリッジコンパニオンと並行して研究の見通しを一人の研究者の視点から提示するラウトレッジの入門書のシリーズの一つで、現在のアリストテレス研究の到達点を示すものである。アクリルの入門書はアリストテレス研究が古代哲学という文脈からではなく現代のテクストとして読み解かれる趨勢の中で記されたものであり、藤沢令夫氏と本書の著者山口義久氏の共訳で刊行されている。本書はバーンズとアクリルの中間に位置する内容を蔵するものである。
本書の特徴は私たちの具体的な経験を掬い取るようにしてアリストテレスの洞察を引き出していくことにある。アリストテレスが経験をどのように捉え、この世界をどのように見つめていたのかが明らかにされていく。古代哲学と聞けば一見私たちの生活と関わりのないものと思われてしまうのだが、むしろ私たちの経験を豊かに捉え直す洞察がその叙述から導き出されていくのである。私たちがこの世界で生きる中でどのように物事を捉え、生きていくのか、その経験の判断をめぐる省察が積み重ねられていくのである。
本書の巻末にはアリストテレスの著作のみの出典一覧が付されている。本書の叙述の一つひとつの典拠となるテクストが具体的に引かれているので、アリストテレスの著作を読もうとする読者を確かに導く手がかりとなる。そして新書でありながら索引が付いていることからアリストテレスの基本用語についてのまとまった記述を本書の中に探すこともできる。アリストテレス哲学の説明であることを感じさせないほどの生き生きとした叙述に確かな典拠を記した巻末の出典一覧と索引とを通して、本書が実に痒い所に手が届くアリストテレス入門であることに気が付かされるであろう。
Posted by ブクログ
書名の通り、アリストテレスの入門書である。しかも、(専門家から見ればどうだか知らないが、素人の僕から見れば)この種の入門書に期待される諸々の基準を十全に満たした内容と見える。簡潔な文体で、アリストテレスの様々な業績を解き明かしていく。
ざっくりとした印象だが、アリストテレスは物事をやたらと分類するのがお好きなようで、この点現代のいわゆる「学者肌」の人物と通じるところがある。というか、実際のところ、彼が実践した分析思考という学術研究のアティテュードが現代にいたるまで引き継がれてきているというのが本当なんだろう。なにしろ彼は「万学の祖」と呼ばれる人物である。
それはともかく、彼はいろいろと分類し、その過程でいろいろと概念を発明している。したがって、本書にもそのような概念があちこちに出てくる。これらについて、逐一丁寧な説明はなされるものの、読み進めていくうちに説明された内容を忘れてしまったり、他の概念と混同して訳が分からなくなってしまったりというのは初学者の常である。というか僕がそうなりがちなのだが、その際には巻末についている索引を利用して、該当語句の初出箇所に立ち戻ってみるといいと思う。
新書に索引がつくのは珍しい。詳細な出典一覧もそうだが、大変配慮の行き届いたつくりだと思った。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
プラトンとならぶ古代ギリシア哲学の巨人アリストテレス。
彼はのちのヨーロッパ哲学に影響を与えただけではない。
いわゆる三段論法を中心とする形式論理学の基礎を築き、具体・抽象、普遍・個別、可能・現実といった概念を創始して、近代自然科学の発展をささえる知の総合的な枠組をつくりあげた。
われわれがさまざまな事柄を考える際の思考法そのものに関わる問題を、彼はどのように追求していったのか。
本書は、そのねばりづよい知の探求の軌跡をたどるアリストテレス再発見の試みである。
[ 目次 ]
序章 アリストテレス再発見
第1章 知への欲求
第2章 論理学の誕生
第3章 知の方法
第4章 自然と原因
第5章 実体と本質
第6章 現実への視点
第7章 生命の意味
第8章 善の追求
第9章 よく生きること
終章 アリストテレスと現代
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
先日読んだマルクス・ガブリエル「新実存主義」でも言及されていたアリストテレス。2,400年の時を経た今もなお哲学・自然科学の分野で参照され続けるには絶対何か理由があるはず。それが知りたくて、「魂について」(邦訳題は「心とは何か」講談社学術文庫)の予習としての意味も込めて本書を購入。
アリストテレスはよく言われるように、経験から得られる知識をもとに普遍的な原因や原理(アルケー)を知ることを最上とした。有名な三段推論法も、プラトンのイデア批判も、全て世界の事物の存在を前提とした「経験主義」ともいえるプリンシパルから生じている。しかし著者によれば、アリストテレスの経験主義は単なる事実の知にとどまるのではなく、事実の原因やその背後の原理を探究することを要求するものであったという。確かにこう考えれば、実用的な知(製作知・実用知)よりも、知ることそれ自体に意味があるような知(観想知)を上位に置くというアリストテレスの態度がよく理解できる。
「心とは何か」を読んで驚いたことの一つに、人間の感覚機能についてのアリストテレスの描写が、今日の常識と比べて全くといっていいほど違和感がないことがあったが、本書に紹介されているイデア批判を読んで得心がいった。アリストテレスは対象の経験から遊離した本質の存在を認めず、あくまで感覚された具体の中に本質を求めていたのだ。畢竟、アリストテレスが五感を重視しその発現過程の探究に力点をおいたのも理解できる。
また以前読んだ「アリストテレス・生物学の創造(アルマン・マリー・ルノワ著、みすず書房刊)」で論じられていたアリストテレス的目的論の根拠は、本書でもやはり生物種固有の機能の世代間維持、すなわち形相の維持にあるとされている。その形相も、個別と普遍を架橋するというその本質からして、やはり経験による個別の実体の把握を経なければ把握されないものなのである。
全編を通じて、ブレのないアリストテレスの像を得ることができた。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。