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Posted by ブクログ
キェルケゴールという人物の足跡を、同時代のデンマークの社会および思想状況のなかに置きもどし、その正確なすがたをつたえようとしている本です。
こんにちの日本でも、実存哲学を代表する思想家のひとりとして、キェルケゴールの名前はひろく知られています。そして彼の思想は、「反ヘーゲル」という大きな枠組みのなかで解釈されてきました。しかし著者は、近年の研究において、「思想家」というカテゴリーには収まらない、キェルケゴールの実像が明らかにされているといいます。本書は、そうしたキェルケゴールの人物像を解説することをねらいとしており、とくに彼を「神に仕えるスパイ」として理解することがめざされています。
キェルケゴールは、父の過去の罪をめぐる悔恨にもとづく宗教教育を通じて、人間が罪と償いのはざまに位置するという考えをいだいていました。これこそが、彼の立脚する「実存」と呼ばれる立場の核心でした。そこから出発する彼の著述家としての活動は、まさに主体的な思考として展開されていったのです。
ところが、彼の生きたコペンハーゲンのキリスト教界において、主体的な信仰はうしなわれてしまっていました。そこで彼は、キリスト教界にキリスト教の信仰をとりもどすことを、みずからの使命として生きることになります。それが著者のいう「神に仕えるスパイ」にほかなりません。」ソクラテスはアテナイの人びととの対話を通じて彼らを真理のほうに向かわせることを意図していたように、キェルケゴールは著述家としての活動を通して人びとを神のほうに振り返らせようとしたのです。本書はこのような観点から、キェルケゴールの著作に展開されている思想と彼の生涯を統一的にえがき出しています。
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