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Posted by ブクログ
「読書は、自分の世界を外側から見るための手段である」
本書は、知識を増やすための読書ではなく、「思考の枠組み」そのものを拡張するための読書の意義を説いた一冊である。
著者は、読書の本質を“体験の拡張”として捉える。人は自分が経験したことのある範囲でしか世界を理解できない。しかし読書を通じて他者の思想や歴史、哲学に触れることで、自分の直接的な経験を超えた視点を獲得できる。それによって、いま自分が生きている現実を、より高い次元、すなわちメタレベルから捉えることが可能になるという。
印象的だったのは、哲学や思想の重要性についての指摘である。特定の知識や専門分野を学ぶ以前に、「どのように考えるか」という枠組みそのものを持っているかどうかが、理解の深さを左右する。哲学や思想は、その枠組みを形づくる基盤となる。個別の知識はあとからでも得られるが、それをどう位置づけ、どう解釈するかは、思考の枠組みに依存する。
また、読書とは単なる情報収集ではなく、自分自身の内側にある「知りたい」という感覚と向き合う行為でもあると述べられている。他者の評価や実用性だけを基準にするのではなく、自らの関心に従って思考を深めていくこと。その積み重ねによって、既存の価値観や枠組みに無意識に従うのではなく、自分自身の基軸を持って世界を見ることが可能になる。
読書は答えを与えるものではない。
世界の見方そのものを変えるものである。
自分がいま当然だと思っている前提も、
どの視点に立つかによって全く異なるものに見える。
読書とは、新しい知識を得ること以上に、
自分が立っている場所を問い直す行為なのだと感じた。
Posted by ブクログ
東大法学部→ハーバード法律大学院→興銀→森ビル専務という資本主義の最前線を生きてきた著者が、読書を通じて「人間としてどう生きるか」という問いを見つめ直した一冊。正解のない時代に、安易な答えに飛びつくのではなく、古今東西の賢人との対話を通じて、人類の「集合知」を力に変えていく(p31)。そんな読書のあり方が、深く心に残りました。
特に、「労働者はゲームのコマであってもプレイヤーではありません」(p215)という言葉には、輝かしい経歴の裏で、組織の論理と自分自身の軸との間で葛藤してきたであろう著者の苦悩が滲んでいるように感じます。その葛藤の根には、「『つまらない夢をあきらめた』ことで一人前の大人になる」とされた昭和の価値観(p95)があったのかもしれません。だからこそ、著者の言葉は単なる批判ではなく、巨大なシステムの中で生きる一人の人間としての実感のこもった叫びのように感じました。
本書は、単なる成功法則を語る本ではありません。巨大なシステムの中で自分を見失わないための、知的で誠実な探求の記録です。組織の中で息苦しさを感じたり、日々の仕事に意味を見出せなくなったりしたとき、自分なりの基軸を確立するための心強いヒントをくれる一冊だと思います。おススメ!!
Posted by ブクログ
200冊を超える本を紹介する「読書大全」の著書であり、大の読書家として知られる堀内勉さんが、ご自身の読書に対する考えをまとめた本である。
読書の価値がタイパ・コスパの点から疑問視する声も聞かれ、また一方で読書に「教養」を求める声も多く聞かれる中で、エリートビシネスマンとして人生の苦難のなかでも読書を続けた著者による本との対峙する姿勢は、多くの人にとって見習うべきものとなるだろう。
特筆すべき点は、著者の構造的な知識の整理の方法の一部が掲載されていることである。著者による古代哲学・思想から現代の科学に至るまでを網羅した叡智の構造化(特に前著、読書大全で明らかである) は、それぞれの思想のつながり、位置関係を把握するのに大変優れたものであり、読者は大いに参考になるだろう。だが、「著者はどのようにこのような構造化をなしえたか」も知る必要があるだろう。この点についても、著者は読者にヒントを与えるのである。途方もない労力が求められるのは間違いないが、私を含め多くの方が、各人なりの叡智の構造を作成することが求められるのではないか。そしてそれこそが、我々が求める教養となりえるのではないだろうか。
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