表題が過度に catchy で、連載の題の「恋愛単語で知るアメリカ」が穏当なところ。
時代の要求により significant other など新たな表現が生み出されたことも感じられ、米文化の一端を知るために興味深い。
コラムにあった He's just not that into you は、文化差の小さそうなところで面白かった。
ハワイ大学でアメリカ文化を教える著者が、性愛にまつわる様々な表現(品定めをする、真剣に交際する、誘い文句と別れの言葉、セックスの表現など)を紹介しながら、その表現に現れるアメリカにおける恋愛の諸相を描いたもの。
英語についても、文化についても、色々知らないことが知れたのが良かった。例えば、「今交際中だ」というのを"I'm in a relationship."というのは知らなかったが、さらにそのrelationshipが必ずしもexclusiveなものである必要はなく、色々な人と付き合ってもよい関係もあるというのはもっと知らなかったし、日本人的にはよく理解できない部分で、アメリカっぽいなーと思った。あとsuccessfulというのは、「収入やステイタスに重きをおく概念」(p.73)というのも、単に「成功した」と訳して分かったことにしていたことを考えると、知ってて役に立つ知識だと思う。「自分のことをattractiveと形容する人はけっこう多い」(p.72)も、attractive=「魅力的な」という訳語の対応だけでは見えてこない事実だと思う。また、"I love you, but I'm not in love with you."の部分(pp.104-6)は、おれの理解と違っていたので、考えてみたい。さらに、なんだかんだ言って第5章の「ベッドの中のあれこれ」という章が、結局読んでいて面白いと思ってしまう箇所だけれども、日本語の「行く」が英語で"come"になるというのも『どこまで使える?“go”と“come”』(講談社)という、goとcomeを専門的に(?)扱った本ですら書かれていない内容だけれども、実際的な話だった。あと、p.132に"I wish my girl gets better at..." というwishの後に直説法という表現も個人的なサンプルとしてとっておきたい、と思った。また、"He's just not that into you"という本は英語の勉強にもなる面白そうな本だな、とか思った。
という感じで、とても面白いという訳でもないけど、なんだかんだ言って英語も文化もある程度楽しんだ1冊だった。(12/08/11)