ネタバレ
Posted by ブクログ
2019年04月22日
1999年、沖田森彦はヒト体細胞クローン胚の樹立に成功する。
助手の名嘉城と喜びを分かち合うのも束の間、世界で初めての成功である研究の発表を前に事件が起こる。
最愛の息子、有基が学校に来ていない-知らせを受け、焦燥する沖田であったが、願いは届かず有基は遺体となって発見される。
悲しみに溺れる沖田に悪...続きを読む魔の囁きであるかのような考えが浮かぶ。
“有基のクローンを造りたい”
科学の禁忌でもあるクローン技術によって死んだ息子を“復活”させてから、8年の月日が流れた。そして、運命の歯車がまた廻り始める。
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雑誌『ダ・ヴィンチ』に紹介されていて、医療もの、ミステリ、ということで気になったことと、著者の樹林伸さんに興味津々で手に取った。
樹林伸さんはコミックの原作を主に、様々なペンネームで活躍されている作家さんで、他のペンネームやその作品名を聞いたら「あ、知ってる!」と大体の方が反応されるはず。
天樹征丸(『金田一少年の事件簿』、『探偵学園Q』等)、安童夕馬(『サイコメトラーEIJI』、『シバトラ』等)、亜樹直(『神の雫』等)、などなど。
内容も様々、その作品の多くが映像化もされていて、エンターテイナーとして才能がある方なんだろうな。
同じ方だと知らずにこの方の漫画作品をけっこう読んできていたので、きっと小説も楽しめるはず、と妙に確信して読み始める。
あらすじ、物語の大まかな流れは好み。
キャラクタとしては、沖田先生に関してはあらすじや序盤で真面目人間と思い込んでの女子学生との逢引(大胆)だったので、びっくり。
そういうキャラだったのか、って。
最愛の家族、一人息子の有基を失い、タブーであるはずの行動を起こす沖田。
自分の大切なひとを失い、取り戻す(あくまでもクローンとはいえ)ことができる手段が自分のすぐ手の届くところにあるのなら…。
失った直後の精神状態も作用しただろう。
生命倫理…今後ヒトクローンが成功する日はやってくるのでしょうか。
文章は読みやすく、難しい題材ではあるものの、小難しくないつくり…というか、難しい題材である事柄たちは本当に材料のひとつになってしまっているだけ??
本格的にこの題材に触れたい方には物足りないでしょう。
ミステリとしては、予想より早く犯人が分かっちゃったので、後半の「えぇっ」は薄かった。
とはいえ、ハラハラドキドキもでき、少しぐっときてしまうところもところどころあり。
フィクションは劇的であって欲しいと思っているので、そういう意味で楽しめた。