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憲法学者・美濃部達吉(1873―1948)が,「健全なる立憲思想」の普及を目指して,国家法人説の見地から明治憲法を一般読者へ向けて体系的に講義した書(初版1912年).天皇機関説を打ち出した本書は,天皇主権説論者との論争を呼び,のちには美濃部の学説が否定されていく.1918年の改訂版に基づく.(解説=高見勝利)
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Posted by ブクログ
美濃部説明治憲法の一般向け解説書。天皇機関説が非常によく理解できる。佐々木惣一もそうだったが、立憲君主的に天皇を捉えていることが分かる。1・2・8・9講は一読の価値あり。 ①国家及び政体 国歌は法人、主権は国家にあって天皇や国民が最高機関であるという機関説の中心を説明。 ②帝国政体 統治権の統一と...続きを読む立憲制度(公民国家主義・民政主義・法治主義) ③天皇 君主は統治権の主体でなく最高機関で、日本は外国と比べ大権が広い。憲法改正発案や皇室関係は天皇専権である。立法・議会・行政・軍政・外交・恩赦大権や緊急勅令もあるが、立憲制であるからその他は他機関の定めた法律に従い、その結果仏国同様不可侵権(無責任)を持つ。摂政は天皇という機関の代理人であるから、国事行為に関しては天皇と同じ作用を持つが、皇室行事ではその他皇族(特権あり)と変わらない。 ④国務大臣及び枢密顧問 佐々木と同じだが、大臣が全責任を負う。議院に対しても政治上の責任を負う。美濃部は加えて軍閣僚に議会統制を敷くべきと言っているが、歴史的には非常に重要な指摘。枢密院は他動的諮問機関。 ⑤帝国議会 様々な階級の国民の代表として立法機関を構成する。今もそうだが、議会の権限は世界的には弱い。多数決の欠点を補うため二院制。社会的成功者(皇族有爵勅任)を集めた貴族院は現在の元老院的参議院とは異なる。普選の章は割と納得なので天賦人権論者に投げかけてみたい。被選挙権に縛りがないのも納得。 議会は立法権限(法律成立・緊急勅令承認)と財政権限、形式的権限(上奏権建議権請願受理権質問権)がある。 ⑥行政 中央集権と地方分権の按排を考える。内閣は同輩中の首席ではあるが、一応内閣を代表し管轄している。地方自治は地方利益の保護と人民政治の習熟の目的のもと行われている。行政は行政立法・行政裁判・行政作用(外財軍法内)に分かれる。法律的には行政作用は行政処分(命令禁止・免除許可(警察許可...)・附与剥奪・裁決公証で単独)と公法上の契約(相互)に分かれ、法律・命令・慣習法による制限、「法規に基づかざれば臣民の自由を侵すを得ず」、機関権限内、公益に資するなど条件がある。不法行為があった場合には行政訴訟(独仏等三権分立を重視) ⑦司法 刑事民事専門。独立保障。特別裁判(軍法会議・領事裁判)あり。 ⑧法 法哲学的なところ。基本に立ち返りたいときはここを読むべし。 ⑨制定法 憲法(国権作用の根本法則でなるべく変えたくないものを書く)、皇室典範、法律、条約(国内法規に干渉しないものがほとんど)、命令(委任命令など) 2021/11/8
本書の元になったのは、明治44年文部省の開催した中等教員夏期講習会における講話であり、翌45年に公刊された。しかし、一部の人々から「あたかも我が国体の基礎を揺がさんとする危険思想を含むものの如くに攻撃」されたことを受け、一部修正・削除のある縮刷版を大正7年に再刊、本書はその文庫版である。 いわ...続きを読むゆる天皇機関説論争としてどのような点が問題となったかは、「初版(1912年)からの主要な修正・削除箇所」として掲載されているのが参考になるし、解説も詳しく触れている。 ただ、「国体」と「政体」を巡る論争など、正直何が争点になっているのか良く分からないところがある。法律論として国家法人説の理解に立って考えるならば美濃部説は納得できるのだが、そういった法律論以前の問題として「万世一系の天皇が統治権を総攬する」ことはあったのではないかとも思う。 憲法・憲政について論じる要とも言うべき第一講「国家および政体」、第二講「帝国の政体」は大変重要だが、主たる制度や条文の背景について歴史的、比較法的な観点からの説明もあり、大日本帝国憲法の内容を理解する上でとても役立つ概説書だと思う。著者の立憲政治に対する熱い思いや率直な意見が文章の端々に窺われるのも好ましい。
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