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医療界を震撼させたバチスタ・スキャンダルから1年半。東城大学の落第医学生・天馬大吉はある日、幼なじみの記者・別宮葉子から奇妙な依頼を受けた。「碧翠院桜宮病院に潜入してほしい」。終末医療の先端施設として注目を集めるこの病院には、黒い噂が絶えなかったのだ。やがて潜入した天馬の前で、患者が次々と不自然な死を遂げる! 天馬、そして厚生労働省からの刺客・白鳥らが、秘された桜宮の闇に迫る。傑作医療ミステリ!
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【電子書籍・共通あとがき】
【著作解説】電子版あとがき『螺鈿迷宮』
【関連小文】1 「自作解説」 初出『ジェネラル・ルージュの伝説』
【関連小文】2 「ミステリー?」
【関連小文】3 「医学はミステリー」
付録1【海堂尊・全著作リスト】
付録2【作品相関図】
付録3【桜宮年表】
付録4【「桜宮サーガ」年代順リスト】
付録5【「桜宮サーガ」構造】
付録6【「海堂ラボ」登場人物リスト】
付録7【関連小文索引】
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
「『螺鈿迷宮』―医療ミステリの新たな境地
医療ミステリの巨星、海堂尊が描く作品は、常に私たち読者に新たな視点と深い洞察を与え、物語の世界へと引き込みます。『螺鈿迷宮』もまた、その例外ではありません。特に本作は、従来の田口白鳥シリーズとは一線を画し、医療現場の奥深くに潜む闇や、現代社会が抱える複雑な問題を、より鋭く、そして深く描き出しています。
登場人物たちの葛藤と、緻密に織りなされる物語
本作の最大の魅力は、単なる事件の解決に留まらず、医療業界が抱える多岐にわたる課題や、時に残酷なまでに冷徹な現実を、容赦なく読者の目に突きつける点にあります。医療従事者が日常的に直面する倫理的なジレンマ、そして病院経営の裏側で繰り広げられる人間模様が、緻密な筆致で描かれており、読者は単なるエンターテインメントとしてだけでなく、現代医療の問題点について深く考えさせられるでしょう。
また、海堂尊作品ならではの、魅力的な登場人物たちも、本作の大きな魅力の一つです。主人公である医学生は、冷静かつ論理的な思考を持ちながらも、人間らしい弱さを抱えており、読者は彼に深い共感を覚えるはずです。登場人物たちの間で交わされる会話、そして彼らの行動の裏に隠された動機が、物語が進むにつれて徐々に明らかになっていく構成は、読者を飽きさせません。
医療業界の闇、そして現代社会への痛烈な批判
『螺鈿迷宮』は、単なるミステリ作品としてだけでなく、現代社会が抱える問題にも鋭く切り込んでいます。特に、医療現場で頻繁に発生する「利害関係」と「倫理」の衝突を主要なテーマとしており、現代の医療行政に対する痛烈な批判が込められています。人命を預かる神聖な場所である医療現場も、利益、制度、政治といった複雑な要素が絡み合い、多くの矛盾を抱えています。海堂尊は、登場人物たちの行動や選択を通して、その複雑な現実を鮮やかに描き出しています。
田口白鳥シリーズとの比較:進化し続ける海堂尊の作風
『螺鈿迷宮』は、海堂尊の代表作である「田口白鳥シリーズ」と多くの共通点を持ちながらも、そのアプローチには明確な違いが見られます。田口白鳥シリーズでは、医療ミステリというジャンルの中で、様々な倫理的問題を扱いながらも、シリアスなテーマの中に軽妙なユーモアを織り交ぜている点が特徴です。一方、『螺鈿迷宮』では、より深刻な問題に焦点を当て、医療業界の矛盾や現代社会に対する深い考察を、より色濃く打ち出しています。
本作は、現代の医療問題や社会問題をより深く掘り下げており、医療に関する専門知識がない読者でも十分に楽しめる内容でありながら、同時に多くの示唆に富んでいます。田口白鳥シリーズが「軽さ」や「ユーモア」を大切にしているのに対し、『螺鈿迷宮』は「重さ」や「深さ」に重点を置いていると感じました。
『螺鈿迷宮』は、医療ミステリの新たな境地を切り開いた作品として、多くの読者に推薦できる傑作です。」
Posted by ブクログ
「桜宮サーガ」という呼び方も在るらしい。東海地方の架空の街、東城大学と大学病院の在る桜宮市で展開するシリーズの作品である。所謂「バチスタ」のシリーズ各作品の間隙というような期間に生じた出来事を描く物語で凄く面白い。「バチスタ」のシリーズで御馴染な顔触れも登場している。そして本作の主要な作中人物達が在る訳だが、逆に彼らも「バチスタ」のシリーズ各作品に登場する。そういう具合に“ワールド”が拡がっている様が面白い。
本作は概ね主人公ということになる天馬大吉の目線で綴られる。一部、天馬大吉が居ない場面で、別な視点人物で綴られている箇所も在る。「僕」と天馬大吉の一人称での語りも多く在る。思いも掛けず、天馬大吉が密かに展開した大きな事件の渦中に身を投じて行くようなこととなる。
天馬大吉は東城大学医学部の学生である。一緒に麻雀に興じていた後輩が順当に進級し、何時の間にか学年が上になっていたというような様子で、何度も留年してしまっている26歳だ。
この天馬大吉の幼馴染、小学生の頃から同級生だった別宮葉子は既に大学を卒業し、新聞記者として活躍していた。この葉子に天馬大吉は頼まれる。何かと噂の在る「碧翠院桜宮病院」に、病院ボランティアとして入り込み、様子を探って欲しいというのだ。看護学生や医学生を歓迎すると謳ってボランティアを募集しているので、天馬大吉が適任であるというのだ。「そんなもの…」と天馬大吉は断ろうとするが、行く羽目になってしまう。
「碧翠院桜宮病院」は長い歴史を誇る病院で、桜宮家が経営者一族ということになる。終末医療を手掛ける、院長が警察医として活動するというようなことで知られる。独特な運営でも知られる。他方、何か様々な好ましくない噂も在った。別宮葉子は好ましくない部分も含めて知るべく、内部に天馬大吉を送り込もうと画策したのだった。
天馬大吉はこの「碧翠院桜宮病院」に入り込んだ。御騒がせな姫宮看護師と出会い、何かドタバタとしながら病院内に在る天馬大吉は、かなりの頻度で次々に患者が死亡するという状況を不審であると考え始める。やがて、病院を経営する桜宮家が秘めているモノ、東城大学病院との関係で彼らが抱いた想い、そうしたことから桜宮家の人達が取った行動、更に事が巡って天馬大吉自身の色々な事柄にも行き着く。
医学部に入ったものの、何か勉学に励むということをし損なって「留年」を重ねてしまっているという天馬大吉が、人生の新たな一歩を踏み出して行くことになるという感である他方、例えば「金田一耕助」のシリーズでも思わせる一族の怨恨というような事柄が絡む底流が在って、加えて「実は大きな問題?」という社会のテーマも絡まり、凄く味わい深い。
なかなかに愉しんだ作品である。御薦め!
Posted by ブクログ
いるかさんのお薦め本です。
いるかさんありがとうございます。独特の世界観の作品を堪能しました。
医療界を震撼させたバチスタ・スキャンダルから1年半。東城大学の劣等医学生、天馬大吉はある日、幼なじみの記者、別宮葉子から奇妙な依頼を受けた。
碧翠院桜宮病院に潜入してほしい。
終末医療の先端施設として注目を集めるこの病院には黒い噂が絶えなかったのだ。やがて潜入した天馬の前で患者が次々と不自然な死を遂げる!
天馬、そして厚生労働省からの刺客、白鳥らが秘された桜宮の闇に迫る。傑作医療ミステリ。ー文庫うらすじより
独特の世界観のある作品だと思いました。
でんでん虫の形をした螺鈿の館。
桜宮病院。
次々と死んでいく患者たち。
そしてやけどを負い患者となり入院した天馬も1週間が経ったその時、死んでしまうのかとハラハラしました。
桜宮病院の小百合とすみれという美人双生児姉妹。
そしてもう一人。死して永遠に生き続ける姉の葵。
死の匂いのただよう螺鈿の迷宮。
横溝正史を思い浮かべました。
解説の吉野仁さんは、エドガー・アラン・ポーの『アッツシャー家の崩壊』だとおっしゃっていますが。
滅びゆく館の香り。
そしてこれは巻き込まれたのだとばかり思っていた天馬自身の物語でもあったのです。
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