ハーメルンに投稿された「告知事項(隣人がVtuberです)」の書籍化である。
ひょんなことから、2025年から2018年に死に戻りした主人公・長谷川康介が引っ越した先での隣人が、実は未来でミリオンを達成する有名Vtuberで……という、Vtuber物としては結構オーソドックスな物語。
ただ、物語の本筋はVtuber事務所の運営物であり、既存の書籍の中では結構珍しい内容だろう。
2018年という最初期の界隈が舞台であり、成長期の熱気に晒されながら一歩一歩進んでいく物語は非常に読みごたえがある。
リアルライブどころか、オリジナル曲制作すら大きなニュースになると言えば、最近のVリスナーからは隔世の感があるに違いない。
ネット読者としての感想を書くと、書籍化に際しての加筆は目立つ点では二点である。
・ネット版では端折られていた用語周りの解説追記
・周辺人物視点による間話の追加
用語解説については、書籍化の上で必要不可欠の要素だろう。
この手の作品を読む層はすでに知ってそうな内容も多いが、テレビ同様にフールプルーフの徹底は重要である。
周辺人物視点の追加は、良し悪しもある。
ネット版におけるサクサク感が削られるところはあるためだ。
主人公・ハセやんの施策がズバズバ刺さって、事務所が一気に巨大化していく爽快感はやや薄れている。
ただ、それだけに、ネット版にあったダイジェスト感もまた薄れている。
事務所一期生は全員に間話が置かれているし、ネット版では名前しか出ていない裏方組(上本さんや技術屋の井口さん)も出番がある。
事務所の臨在感が、この単行本のおかげで一気に増している。
そこはネット小説読者にとっては魅力のあるところだろう。
特に秀逸なのが間話「植え込みの誓い」。
一期生・綾辻香真視点での物語だが、彼女は特に出番が限られている印象があるので、この補足は嬉しかった。
唯一の男子組ながら逆風にも負けずに伸びる先生と、才能が爆発する圧倒的存在のアニマル枠。
その二人に挟まれた凡人としての悩みが描かれたこの一話は、物語世界をより深く彩ってくれた。
正直、原作からタイトル変更されている点については危惧するところはある。
告知事項の4文字をどこかで入れた方が良かったような。
その点を除けば、イラストの質もよく、選定も優れていて、加筆も十二分に書かれた良好な書籍化だ。
ネット版では第二部も始まっているし、そちらも含めて続巻が出てくれたらと願うばかりである。
外で読むことが想定されていないパンモロドリフトのカラー絵も含めて、星五つぶち抜きの星六つ相当で評価したい。
それにしても、本当に挿絵は素晴らしい。
ラムダのデザインは素晴らしく愛らしい謎生物だし、枚方カノンも綾辻香真もスタンダードに可愛らしくて華がある。
特にクイズ大会優勝で喜ぶ香真さんは見惚れた。めっちゃ良い笑顔でした。