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「クィン・ソロボディアン」の「マスキズム 新たな独占の時代」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「クィン・ソロボディアン」の「マスキズム 新たな独占の時代」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ビジネス・実用
Posted by ブクログ
この本は、さまざまな観点から興味深く読むことができた。
まず、イーロン・マスクという人物の面白さと恐ろしさである。子どものように無邪気で好奇心旺盛、全能感にあふれ、まるで「超合金ロボットの操縦席に座る少年」のように、ゲーム感覚で社会システムそのものを自分の考えにフィットするよう変えていこうとする。彼の企業であるテスラやスペースX、そして旧TwitterのXの従業員は、まるで疲れを知らない子どもが遊ぶように仕事に没頭する彼に振り回され、疲弊していく。
第二次トランプ政権では、政府効率化省(DOGE)の事実上のトップとして、政府を「巨大で愚鈍な機械」と見立て、官僚や職員をその機械の動きを阻害する「バグ」として扱い、容赦なく取り除いていく。そして、国家や国民に関するできる限り多くの情報を政府という機械に実装することで、国家を効率的に機能させようとする。無駄なものを最大限に取り除くという発想は、彼がテスラを立ち上げた頃からの基本的なコンセプトでもある。
しかし、バグとして解雇された職員は人間であり、それぞれに人生や生活がある。しかし、そのことに彼の想像力は及ばない。いや、及ばないのではなく、むしろ意図的に「共感力」を排除しているのではないか。彼にとって「共感力」は、人類社会の進化を阻害する要因でしかないのだろう。
次に、テック・リバタリアンに対する自分の認識を大いに改めさせられた。これまで私は、彼らの基本姿勢とは、巨大な力を持つ国家や政府による統制から、テクノロジーを用いていかに自由になるかという点にあると思っていた。
しかし、実際にはそうではない。国家の力を最大限に利用し、国家と共生し、やがては自分たちのテクノロジーを国家にとって不可欠なものにしていく。そのことをまさに実現していったのが、イーロン・マスクである。
9・11テロ以降の軍事戦略、地球温暖化に対するグリーン政策、そしてコロナウイルスのパンデミックによって露呈したグローバル経済の脆弱性などに対して、政府が必要とするテクノロジーの提供にいち早く応じていく。こうしたことを通じて、国家が彼のテクノロジーに依存する度合いを非常に大きなものにし、やがて国家と彼との力関係を逆転させていく。
「庇を貸して母屋を取られる」とは、まさにこのような状況を指すのではないだろうか。
個人的に最も考えさせられたのは、これまで私がテクノロジーを「中立的なもの」と思い込んできたことに対して、再認識を迫られたことである。
特に、AIが我々の問いに対して、中立的な立場から最適解を与えてくれると思い込むことへの警鐘である。大規模言語モデルのAIが常に中立を保つことは技術的にも困難であり、人間が残したデータを学習する限り、そこには必ず何らかの偏りが生じる。AIもまた、人間社会の写し鏡なのだ。
イーロン・マスクは、政治的な配慮を重視するWoke的な倫理観を敵視し、現在のAIは「無色の技術」ではなく、Woke的倫理観というウイルスに汚染されていると考える。そして、「人間社会には支配する者とされる者が存在するのが当然である」とする彼は、ヘイトや差別を防ぎ、社会的公正に配慮するAIではなく、彼自身の思想を反映した「最大限の真実を探求するAI」の実現を目指し、AI企業のxAIを立ち上げる。
彼はこのAIを「Grok」と名づけ、SNSのXに組み込むことで、ユーザーが投稿の中でタグ付けすれば、自動的に回答できるようにした。これによって、彼の倫理観や世界観がAIを媒介として社会に拡散されていく。
20世紀の資本主義が、フォーディズム、すなわち自動車王ヘンリー・フォードによる大量生産と、それを支える社会システムによって特徴づけられたように、21世紀はテック資本主義の王者、イーロン・マスクの思想とテクノロジーを中心に、社会そのものが大きく改変されていくのかもしれない。
それが、本書のいう「マスキズム」なのだろう。
Posted by ブクログ
恐ろしい本です。スペースXのIPOで金融市場が今お祭り騒ぎとなっていますが、これもマスキズムの一つの現象になりますね。イーロンマスクがどういう人間で、彼のような怪物を産んだ要因は何なのか、その功罪を分かりやすくまとめられた書籍です。
イーロンマスクがロケットとEVという巨大事業を大きなビジョンを持って、一部国家を利用しながら、独占的な地位を獲得した事業者としての能力は疑いようがないですが、コロナ禍やTwitter買収辺りからDOGEに至るまで、彼の奇行ぶりが際立ちますね。
南アフリカのアパルトヘイト下で幼少期を過ごしたからか、白人至上主義や優生学に侵された思考で、格差と差別を助長してきた張本人の一人です。
Twitterでその偏った思想が増幅・発信され、一夫多妻性で14人の子供を持ち、一部の選ばれた人間で火星に行こうとしています。
そのマスキズムの特徴は国家と共生し、ロボットで埋め尽くし、一部の人間だけ優遇する壁のある世界を目指していますが、それが許容されてしまう世界が今存在する事が恐ろしいですね。
10年後とかそう遠くない未来に警鐘を鳴らす良書でした。
Posted by ブクログ
テック右派やその周辺の思想をほとんど知らなかったが、面白く読めた。新書のような読みやすさがあるので一気に読めた。
政府との蜜月や運にも恵まれてマスクがここまで成り上がったのがよくわかる。
マスクの夢見るユートピアはハイエクの批判した設計主義的合理主義のような理性への大きな信頼が根底にある印象を受けたので、そう簡単に実現するのかは定かではない。この本のマスクに対する批判もマスクと同じくらい、テクノロジーの可能性に信頼をおいているからこそ、実現しかねないユートピア(ディストピア)思想の持ち主として彼を批判しているように見える。
ともあれマスクへの金持ちのツイ廃というイメージは更新されたので良い本だった。
Posted by ブクログ
テスラ、スペースX、スターリンク、X(旧Twitter)。イーロン・マスクの名前は毎日のように目にします。本書は、彼の成功物語ではありません。彼を中心に生まれつつある、新しい社会の仕組みを読み解く一冊です。
著者が「マスキズム」と呼ぶのは、一人の経営者の思想ではなく、21世紀の新しい社会システムです。国家が担ってきた通信やエネルギー、宇宙開発までもが巨大企業のサービスへ置き換わり、私たちは「市民」である以前に「ユーザー」になっていく。その視点には何度も考えさせられました。
特に印象に残ったのは、「自立」の逆説です。自家発電をし、衛星通信を使い、好きな情報を選べる。一見すると自由を手に入れたようですが、その自由は、一つの巨大なインフラへの依存の上に成り立っています。便利さを求めるほど、依存は見えにくくなる。この指摘は背筋が寒くなるほど説得力がありました。
本書はイーロン・マスクを善人とも悪人とも描きません。むしろ、彼を生み出し、そのサービスを選び続ける私たち自身に問いを返してきます。
読み終えたあと、「便利さとは何か」「自由とは何か」を考えずにはいられません。ニュースやSNSを眺める目が少し変わる、そんな知的で背筋が少しぞくっとする読書体験でした。