ベンハミン・ラバトゥッツの作品一覧
「ベンハミン・ラバトゥッツ」の「恐るべき緑」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「ベンハミン・ラバトゥッツ」の「恐るべき緑」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
ものすごくおもしろかった。実在の科学者たちの研究と功罪とゴシップ色をまとうプライベートがただただ列記されていき、読むと科学の進歩をなぞることができる。書きぶりはまるで取材ノートかドキュメンタリーのような素っ気なさだし舞台は科学技術だし、とっつきにくいはずなのに冒頭から惹き込まれてしまう、不思議な文体だった。アインシュタインが量子力学をまったく理解できなかったエピソードがおもしろい。とはいえノンフィクションではなく、主にプライベートの部分について作者の創作が大いに混ぜられているらしいので読み方には注意が必要。
エピローグが唯一とても不穏で文学的で、詩的なタイトルの意味がここでわかる。表紙のデザインも素敵
Posted by ブクログ
すごく面白かった。文章が詰まっていたが、読みやすく、専門的なことはあまり詳しくはないけれど、史実の部分に関しては、以前見たNHKスペシャルや他の番組のおかげで想像しやすかった。
タイトルの恐るべき緑とは、毒ガスのことだと思うけど、もう一つ妻へ残した手紙にある、植物が異常増植して〜のところが、現実とは乖離していて面白い。
天才とか頭の良い人には、その人にしかわからない苦悩があるのだなと思った。
「私たちが世界を理解しなくなったとき」とは、まさに現在のことで、仕組みもわからないのに便利に使っているスマートフォンやAIについて、それまでのように、発明されたものや方法には良い面と悪い面があるのだという教訓を心に、もっとその仕組みに興味を持ち、理解を深めるべきだと思いました。
Posted by ブクログ
『一九三四年、フリッツ・ハーバーはバーゼルで、冠動脈を拡張するための注射器を握り締めながら死んだ。それから数年後に、彼が開発に協力した殺虫剤がナチのガス室で使用され、彼の異母妹と義弟と甥たち、その他大勢のユダヤ人が殺されることになるとも知らずに』―『プルシアン・ブルー』
吉川晃司の抑制の効いた低い声の語りで科学史の闇の部分に焦点を当てたあの番組と似たような本かと思って読み進めると、作者の仕掛けた罠にまんまと嵌まることになる。その仕掛けについては作家ベンハミン・ラバトゥッツ自らが謝辞の中で述べているので敢えて記さないことにするけれど、望月新一とアレクサンドル・グロタンディークの人生が交錯する下りを読んで、一瞬、背筋に寒気が走り、あれ?と思ったということは書いておこう。
科学史に名を遺す知の巨人たちを登場させた小説は、恐らく枚挙に暇がないだろうけれど、個人的に一冊挙げるとするなら「ケンブリッジ・クインテット」。本書にも登場するシュレーディンガー、チューリング(ちらりと出て来るだけだが)の他、物理学者C・P・スノウ、哲学者ヴィトゲンシュタイン、遺伝学者ホールデインの五人が人工知能の可能性について語り合うという小説。チューリングはもちろんのこと、他の登場人物たちも各々言いそうなことを架空の晩餐の席上で言い合うところが面白い。当然のことながら、読者はそんな機会はなかっただろうと思いながら、それでも、ひょっとしたら起こり得たかもしれない会話を愉しむことになる。一方、本書「恐るべき緑」は、登場人物たちの人生を足早に辿りながら、見過ごされた事実を拾い上げ、それを脚色して物語を紡ぐ。読者は、そんなことはあり得ないだろうと思い(願い?)つつも、その筆致に惑わされ、つい本当にそんなことがあったのかと何度も逡巡しながら読み進めることになる。その感覚を敢えて言うなら、戦慄、という言葉が相応しいかも知れない。
科学が宗教に取って代わって人々の生きる上での支え(それはある意味で信仰と呼んでもいいと思うのだが)となり、それが余りにも当たり前の世の中であることに何の違和感も覚えない状態を凶弾するのが本書の主たる意図ではないだろうけれど、「フランケンシュタインの誘惑」で吉川晃司の語りによって明かされた科学者たちの行為や作為に驚愕するのと同様の衝撃は本書からも受ける。特に第一章「プルシアン・ブルー」は、事実の羅列とそこから派生する出来事の交錯を執拗に追いかける物語で、ドキュメンタリーの様相が強く、尚更だ。科学技術が悪い訳ではない、それをどう使うかの問題だ、とは言うものの、何処かで、その扉を開けていなければ、という思いが湧くことは否めない。知の扉を開け続け、蒙を啓くことで、果たして叡智と呼ばれるものを得るに至るのか。それに対するやや負の感情を作家の筆致から感ざるを得ないのも事実だが、窒素を求めて先人たちが墓を暴くことまでしていたことを知ると、知が人間性を、あるいは少なくとも人間性について考える余裕を手に入れ足らしめたことも確か。もちろん、単純に白黒判定が付くような話でもないけれど、そんなことをあれこれと考えてしまう一冊ではある(とは言え、本書は決して啓蒙書の類ではないのだが)。
エピローグは、恐ろしい話をあれこれと聞かされてすっかり消沈した者に語り掛けるかのような一章となっているが、そこで、はたと作家の意図(問い掛け)が見えてくる。さて、こんな風に問われたら、何と答えるべきなのだろう。それを考え続けることが、取り敢えずは重要なことだと判ってはいるつもりだけれど。
『ついこの間、夜の庭師から、柑橘系の樹木がどんなふうに枯れるか知っているかと訊かれた。干ばつや病気に耐え、疫病や菌類や害虫の無数の攻撃を生き延びたとしても、老齢を迎えると、過剰さによって滅びてしまうのだ。ライフサイクルの終わりに差しかかると、木は最後に大量のレモンを実らせる。(中略)不思議だね、と彼は言った。(中略)そのような恐ろしい豊饒のスペクタクルは植物のものには思えない、むしろ際限もなく制御不可能な成長を遂げる我々自身の種の過剰さに似ている。僕は彼に、我が家のレモンの木の寿命はあとどれくらいか尋ねてみた。彼は、少なくとも幹を切って年輪を見る以外にそれを知る方法はないと言った。でも、誰がそんなことをしたいと思うだろう?』―『エピローグ 夜の庭師』
Posted by ブクログ
歴史の事実の点と点をさらに別の事実で繋ぎ、空白を想像で埋めていくような短編集。歴史の重大な出来事も、結局は人の些細な心の揺れの積み重ねで決まったというような短編集。
そんな感じの歴史読み物はそれなりに読んでいるけれど、本書テーマが科学とか量子学とかなので、文章の比喩とか遠回し表現が私に理解できないorz
『プルシアン・ブルー』
最初はナチス・ドイツ上級幹部の間に出回っていた薬、ドイツ敗戦後に凄まじく流行したドイツ人の自殺の連鎖が語られる。
そこから、絵画に使う色の開発と、それに伴って毒も開発された歴史に遡っていく。中心になるのはシアン化物の毒性。それは戦時には毒ガスとして使われるようになる。
ここでいろいろな歴史と毒が連々と綴られていくんだけど、これがどこまでが歴史の事実で、実際に研究されていることなのか??という疑問と、でももしこれが事実を書いているとしたら、この小説は何がいいたいんだ?と考えながら読んでいった。
へーへーへーと思ったのは、「ナポレオンの髪の毛から毒素が!毒殺されたんだ!」っていうけれど、部屋の壁に塗られていた色素はシアン化が使われていたから、普通に生活したら図らずも毒を吸入していたんだ、その証拠に彼の部屋に出入りした召使たちも同じ毒が検出されてる。っていうもの。へーへーへー。
そんなこんなで話は進み、戦争で毒ガスを使ったのは終盤で1915年のドイツ軍からフランス軍に対してのもの、という話に。毒ガス開発はフリッツ・ハーバーという化学者。彼の窒素研究により肥料開発が進み、食料問題を好転させた実績がある。
しかし今度はその場にいる生物(兵士だけでなく動物も)皆殺しの怖ろしい化学兵器を作ったのだ。
そんなときに出てきたのが、25歳の画家志望のドイツ士官。「こう書けばヒトラーだって分かるよね」ってことで「ヒトラー」って名前は出てきません。
この毒物が、ナチスでどのように使われ、薬漬けになり、敗戦後の自殺も促進した、ってことで冒頭に戻る。
そして最後の段落。晩年のハーバーは「自分が開発した殺虫剤があまりにも効きすぎるので、生命は死に絶え、植物の怖ろしい緑の世界になってしまうかもしれない」と憂いて死んだという。
おお、この短編集には『恐ろしき緑』という短篇は入っていないんですよ。そしたらこの『プルシアン・ブルー』の最後の段落で恐ろしき緑という言葉が!これはおしゃれだ。
『シュヴァルツシルトの特異点』
アインシュタインは一般相対性理論方程式を発表したが、自分でもすべてを割り出せてはいない。ところがそれから一ヶ月もしないうちにシュヴァルツシルトという科学者から完全な式が送られてきた!
このシュヴァルツシルトは、アインシュタインより先に「空間は婉曲しているが、小さな領域に多くの質量が凝縮するときには、空間と時間が裂けて」…要するに「ブラックホール」の理論を解いていたらしい。そしてこの到達点を「シュヴァルツシルトの特異点」と言うらしい。
物語はシュヴァルツシルトの幼少期から、天文学者になり、軍隊に入り天疱瘡(免疫系の皮膚病)で死ぬまで。
『核心中の核心』
2012年、日本人数学者望月新一は、ブロクに「abc予測」を載せて世界中を驚かせた。
…2012年?割と最近じゃん!ということで望月新一を検索してみた。日本人とユダヤ系アメリカ人を両親に持ち、京都大学教授で、今年の日付でもニュースが検索される!?思いっきり現役の学者さんではないか!
読者にも「京都大学で教わりました」なんて人がいたりする!?
…しかし私は小説最初の一行の「A+B=C」が何なのかが全くわからないので検索したうえで、AIに「小学生に分かるように説明して」と入力したが、出てきた説明を読んでも全くわからない(-_-;) そこで理数系の次男を読んで、さらにわかりやすく説明してもらった、が、やっぱり分からない(-_-;) というか、「abcというのが何なのかは分かったが、なぜそれが凄いのかがわからないし、どんな予測を立てるのか、それになんの意味があるのかわからない」なので、スタートラインにさえ立てません(-_-;)
次男は「望月新一は知らないけれど、abc予測って「フェルマーの最終定理」「ポアンカレ予想」並んで三大解明できない理論って言われる」と言っていたので、数学者にはこの小説の冒頭読めば分かるの???
まあとにかくですね。
この三大ものすごい理論を、日本人数学者が解明したというので大ニュースに。(ここまでの四行に辿り着くのに1時間かかって、まだ分からない・笑)しかし望月新一は、その式の公表せず、2014年の公表会議にも欠席した。
ここでフランス人数学者アレクサンドル・グロタンディークの話になる。彼もなんかとにかく凄いらしいんですが、理解できないので割愛。彼は天才と言われたが、スムーズな研究生活は送れず、山奥に隠遁してなんかコミューンを作った。ここでもまた風変わりな生活を…。
本書では、科学者たちの奇人変人エピソードが積み重ねられるんだが、頭が良すぎて凡人の私には意味がわからない(-_-;)
そして2014年に彼は病院に。そこへ訪ねてきた男がいる。
小説としては、この男が望月で、そのために会議に出られなかった、という架空の物語を与えている。
さて、小説での望月新一は「京都大学を退職させられた」で終わっているんだけど、2026年現在でも教授のようですね。こんな現役バリバリの人を小説にするとうことでも色々驚いた。
『私たちが世界を理解しなくなった時』
量子物理学の方程式を巡る二人の科学者の対立した。ハイゼンベルグの行列学、シュレーディンガーの波動方程式(意味はわかりません。小説の用語丸写しです)。
その二人の人生、なぜそれを考えたのか、なぜそれを唱えたのか、なぜ対立したのか。そしてアインシュタイン。
歴史を大きく動かす科学・数学を「時代と、唱えた人の性質、その時の心の動き」で組み立てていく。
んだけど、難しくて楽しく読めない(-_-;)
なお、アインシュタインはシュレディンガーに着いて、ハイゼンベルグたちと激しく争ったけど、良い結果にはならなくなったってことだったらしい。
『エピローグ 夜の庭師』
まとめ
みたいな短篇。
夜の雑木林を歩いていると、元数学者の庭師に会った。この短編集に出てきた数学者たちに憧れ、叶わないと諦め、毒にもなる肥料を使っている。
…結論。
わかりませんでした。(-_-;)