アルフィアン・サアットの作品一覧

「アルフィアン・サアット」の「絶縁」「マレー素描集」ほか、ユーザーレビューをお届けします!

作品一覧

  • 絶縁

    絶縁

    小説・文芸

    3.7
    1巻1,980円 (税込)
    奇跡のアンソロジー、日韓同時刊行! 突如若者に舞い降りた「無」ブーム。世界各地に「無街」が建設され――。 (村田沙耶香「無」) 夫がさりげなく口にした同級生の名前、妻は何かを感じとった。 (アルフィアン・サアット「妻」/藤井光・訳) ポジティブシティでは、人間の感情とともに建物が色を変える。 (ハオ・ジンファン「ポジティブレンガ」/大久保洋子・訳) 先鋭化する民主化運動の傍らで生きる「あなた」たちの物語。 (ウィワット・ルートウィワットウォンサー「燃える」/福冨渉・訳) 都市に走った亀裂、浸透する秘密警察、押し黙る人びと。 (韓麗珠「秘密警察」/及川茜・訳) ブラック職場を去ることにした僕。頭を過るのは死んだ幼馴染の言葉だった。 (ラシャムジャ「穴の中には雪蓮花が咲いている」/星泉・訳) 家族の「縁」から逃れることを望んできた母が、死を目前にして思うこと。 (グエン・ゴック・トゥ「逃避」/野平宗弘・訳) 3人の少年には卓球の練習後に集う、秘密の場所がある。 (連明偉「シェリスおばさんのアフタヌーンティー/及川茜・訳) 6人の放送作家に手を出した男への処罰は不当か否か。 (チョン・セラン「絶縁」/吉川凪・訳)
  • マレー素描集

    マレー素描集

    小説・文芸

    -
    1巻2,090円 (税込)
    48の掌編のつらなりによって現在のシンガポール社会を巧みに描き出したマレー系作家による短編集。 シンガポールがイギリス領の一部だった19世紀末に総督フランク・スウェッテナムが執筆した『Malay Sketches』。それから100年以上を経た現在、アルフィアン・サアットによって新たに同名の作品が書かれた。イギリス人統治者が支配下にあるマレー人の文化や気質を支配言語である英語を用いて読者に紹介するという『Malay Sketches』の構図を大胆に再利用するかたちで本書は誕生する。 【目次】 改宗 ふれあわない手 三人姉妹 パヤ・レバー 午前五時 村のラジオ 日没後の礼拝のあと 泊まり ゲイラン・セライ 午前六時 ハントゥ・テテクのお話 冷ややかな慰め 犠牲 タンピネス 午前七時 わかりやすいのにして 朝の迎え 浅いフォーカス テロック・ブランガー 午前八時 ポイ捨ての女の子 ハントゥ・クムクムのお話 証拠 タンジョン・パガー 正午 穴 清め 送り出し パシ・パンジャン 午後三時 吠え声 ポンティアナクのお話 床屋 ブキ・バトック 午後五時 誕生日プレゼント 外国語 同窓会 ベドック 午後七時 トヨールのお話 やり直し 引き出し パヤ・レバー 午後八時 重力 夜のシンガポール お客 カンポン・グラム 午後十時 借り物の男の子 プレイバック 兄と弟 カラン 深夜十二時 星の丘 バスの後ろにいる男の子 子ども カキ・ブキ 午前三時 解説 【著者】 アルフィアン・サアット 1977年シンガポール生まれ。ラッフルズ・ジュニアカレッジ在籍時から演劇の創作で注目される。1998年に詩人としてデビューを飾り、1999年には短編集『サヤン、シンガポール』を発表。マレー語と英語での創作活動を続け、シンガポールでは多数の受賞歴を誇る。ほかに詩集『記憶喪失の歴史』『透明な原稿』、戯曲『アジアン・ボーイズ』三部作、『ナディラ』(いずれも未訳)。 藤井光 1980年大阪生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。東京大学文学部教授。主要訳書にS・プラセンシア『紙の民』、H・ブラーシム『死体展覧会』、M・ペンコフ『西欧の東』(以上、白水社)、D・アラルコン『ロスト・シティ・レディオ』、T・オブレヒト『タイガーズ・ワイフ』、A・ドーア『すべての見えない光』(第3回日本翻訳大賞受賞)、R・マカーイ『戦時の音楽』(以上、新潮社)、N・ドルナソ『サブリナ』(早川書房)など。

ユーザーレビュー

  • 絶縁

    Posted by ブクログ

    絶縁という言葉が胸に刺さる物語です。
    特に村田沙耶香の短編は、日常の中で人と人との距離がどんどん遠くなっていく様子を、まるで冷たい風が吹き込む部屋のように描いています。私たちの生活にも似た閉塞感が漂い、そこから逃れたいけれど抜け出せないジレンマがリアルに感じられました。
    特に「普通であること」の意味を改めて考えさせられ、登場人物の孤独や痛みがまるで身近な誰かのつぶやきのように響きます。社会との絶縁、それに伴う心の痛みや喪失感を繊細に表現し、自分の周りの人間関係を振り返るきっかけにもなる一冊です。
    すごく後味悪くて好きです。

    0
    2025年10月19日
  • 絶縁

    Posted by ブクログ

    「絶縁」をテーマに、アジア各国の若手小説家の短編を集めた本。めちゃくちゃ面白かった。

    最初に柚木さんの短編でガツンとやられ、東京タワーに似た色合いの鉄塔を見ると少しゾッとしてしまうようになった。
    各国の性質がかなり色濃く出ていて…これからアジアの文学を読んでみたいと思った。

    1
    2025年09月07日
  • 絶縁

    Posted by ブクログ

    『闇に包まれた穴の底には、龍が横たわっているような気がした。(中略)年寄りたちの言うには、そうした穴は龍が冬眠をする穴ぐらだそうで、龍は夏になると穴からはいずり出てきて天空に飛び立ち、冬になると再び穴に舞い戻ってくるという。穴の付近の雪が解ける理由は、龍の吐く息が穴から噴き出してくるせいらしい。ぼくはその言い伝えを知っていたので、穴の底でひとりぼっちにさせられたとき、龍に食われてしまうんじゃないかと怖くてたまらなかった』―『ラシャムジャ/穴の中には雪蓮花が咲いている』

    「絶縁」というテーマのアンソロジー。村田沙耶香が作品を寄せているというので読んでみたのだけれど、その他のアジア圏の作家の短篇にも魅せられる。中でもチベット語で創作活動をしているという中国青海省海南チベット族自治州生まれのラシャムジャという作家の作品は、地方出身の主人公による地元の幼馴染の思い出と都会で失望感を味わう自身の境遇の対比の問わず語りなのだが、その対比の中にある地方と都会あるいは自然の中に生きることの多面性と都市化された環境の中の画一的な生活の効率性の対比という構図が多重露出的に描かれ、知らない筈の土地に対する郷愁を呼び起こす。まるで台湾の呉明益の小説かと思わせるような作品で、特に惹かれた。

    日本、シンガポール(マレー語)、中国、タイ(南部)、香港(広東語)、中国(チベット語)、ベトナム(南部)、台湾(広東語)、韓国の作家が並ぶのだが、国籍は必ずしも作家の特徴を典型的に表象する訳ではないのだと(アンドレイ・クルコフの「優しい死の天使」の中で国民性と国語の関係について言われていたことを思いだすが)判ったようなことを言いたくなる。それが編んだ人の意図であるのかは定かではないが、母語がその国の標準的な言語である作家と方言を含め母語が標準的言語ではない(もちろん、書き言葉では口語ほどの違いは出ないだろうけれど)作家の立ち位置の違いが、「絶縁」という言葉から連想されるものの違いになって表れているようにも見える。例えば、村田沙耶香の「無」(日本語)や郝景芳の「ポジティブレンガ」(北京語)では絶縁は「個人」の感情から主に湧き上がる「違和感」に由来する。その違和感を感じさせるものの正体は「社会」という捉えどころの無い、あるいは実態の無い相手であり、その実態の無さを二人の作家は空想科学小説風のディストピアとして描く。基本はミヒャエル・エンデの「モモ」あるいはジョージ・オーウェルの「1984」に似た物語。一方で、その国において少数民族と呼ばれる人が用いる言語で書かれたラシャムジャの「穴の中には雪蓮花が咲いている」(チベット語)やアルフィアン・サアットの「妻」(マレー語)が描く絶縁は違和感ではなく「孤立」に由来するものであり、少数派としての視点を通しての社会への隔絶感はあるとは言え、対象は個人の顔をしている。もちろん個人はその社会における多数派という立場を代表していると読めるのだが、社会の制度そのものというよりは立場を利した強者への拒絶感が孤立を生む(生ませる)という構図が共通してあるようにも思う。

    そのように要約してみると、ベトナムやタイにおける南北対立の構図や、香港、チベット、台湾における「中央」との対立の(それらは往々にして官民の対立でもある)構図といった社会的課題が「違和感」を「拒絶」へと高める一因となっているのだろうかと考えたりもする。だからと言って日本の村田沙耶香や中国の郝景芳や韓国のチョン・セランが何も社会的課題を描いていない訳ではないが、敢えて言えばこの三人の作家の描く主人公には個人が能動的に「絶縁」をすることの可能性がある一方で、他の作家の描く主人公には「絶縁」を受動的に許容する他選択肢が無いようにも見えるという違いがあると言えばよいだろうか。

    もちろん、違和感であろうが、孤立であろうが、向き合っている社会に対する個人の信条との対立という構図に変わりはない訳で、それは突き詰めれば個人の持つ正義感とでも呼べばよいような硬質の言葉に帰結するように思うが、それを声高に叫ぶことを必ずしも善しとしない態度が、不思議なことにどの物語の主人公にも共通して認められる。日本では最近若年層の対人関係におけるとみに「温和」な態度が話題となったりもするが、格差間の弱い側に属しがちな若い世代はどの社会でも同じような傾向にあるということを示しているのだろうか。だとすれば、ポピュリズムに支配されつつある世界の中で「対立」の構図を越えた新しい関係性を産み出す萌芽をそこにみることも出来るのかと思ったりもする。

    『私くらいの世代のことを、私は、心の中で「リッチナチュラル世代」と呼んでいる。世代それぞれの生き方や性格の流行を、心の中でこっそり名付けるのが好きだ。私より上の「過剰浪費快楽世代」には理解できない、ぱっとみて楽しそうな浪費や快楽ではないものにお金をかけている世代なので、「ずいぶん地味ねー! 人生楽しまなきゃ!」と九条さんに言われたりしてしまう。一方、「安定志向シンプル世代」からみると、無駄遣いに思えるような高いインテリア家電に手を出したりして、戸川さんに、「え、あれ買ったんですか、すごいですね」と少し引かれてしまったりする』―『村田沙耶香/無』

    そしてそんな硬質の思考を紡ぎがちな作品が多い中、やはり村田沙耶香のデフォルメし架空の社会に投影された現代の写し絵は、その一見するとぶっとんだような語り口とは裏腹にいつも通りの世界観を強烈に放っていて、秀逸なのだった。

    0
    2023年04月12日
  • 絶縁

    Posted by ブクログ

    村田沙耶香 著「無」を目的に手に取った本。
    著者の“近未来SF”チックな作風が全開でした。
    フィクションだけど、どこか現実と繋がっている様な…

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    2023年03月04日
  • 絶縁

    Posted by ブクログ

    日本の作家と共作しませんかと問われた韓国の作家チョン・セラン氏が「アジアの若手世代の作家が同じテーマのもと短編を書くアンソロジーはどうか?」と編集部に逆提案。それで編まれたのが本書だとか。
    今回のテーマは“絶縁”。人によって、国や地域によって、こんなにもいろんな“絶縁”があり、それぞれが自分だけの「生」に翻弄されながらそれでも生きていくしかないのだな…。誰かに代わってもらうわけにはいかないものね。
    作品ごとに作者紹介に加えて訳者解説やあとがきがあるのがうれしい。世界が広がるような一冊でした。テーマを変えたり執筆者の顔ぶれを入れ替えたバージョンも読んでみたい!

    0
    2023年02月12日

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