【給食業の位置づけ】
・コロナ禍ではテレワーク推進により企業の出社人数が減り、社員食堂などは影響を受けた
・しかし「食のインフラ」であるため、飲食業界と比べれば落ち込みは限定的
・特に病院や介護施設向け給食は需要が安定しており、景気変動の影響を受けにくい
・社会に不可欠な機能を担う産業であるため、中長期的な安定性がある
【超高齢化社会の追い風】
・日本は世界でも類を見ない速度で高齢化が進んでいる
・病院、介護施設、さらには在宅療養者向けの給食や配食サービスが伸びている
・特に在宅高齢者向けの弁当配達サービスは、健康管理や見守りの役割も兼ねて拡大中
・高齢者人口増加そのものが業界の需要拡大要因となっている
【ストック型ビジネス】
・給食は利用者数が毎日大きく変わるわけではなく、契約先ごとに安定した数が見込める
・飲食店のように天候や立地条件に左右されにくい
・「継続的に発生する需要」を捉えているため、売上の予測可能性が高い
・この安定性は投資判断において大きな魅力になる
【給食の定義】
・「病院・学校・企業などで集団に一斉提供される食事」が基本形態
・大衆性・一律性が特徴で、メニュー選択の自由度は低い
・日常的に提供される「出前」や「仕出し」とは異なり、公共性が強い
【給食の提供形態】
・自前調理：法人が自ら調理スタッフや設備を揃える方式。自由度は高いが人材・コスト負担も大きい
・外部委託：専門の給食会社に全面的に任せる方式。ノウハウや人材不足を補える
・調理済惣菜の活用：人材不足や効率化のために中食を組み合わせる方法。導入事例が増加中
【調理法の革新】
・クックチル：調理後に急速冷却し、食事提供前に再加熱。5日間保存できる
・クックフリーズ：急速冷凍し、最大8週間の保存が可能。大量調理や計画的生産に有効
・これらの導入により、調理現場の人員配置が柔軟になり、労働環境の改善にもつながる
【新しいビジネスモデル】
・配食事業：在宅高齢者へお弁当を届けるサービス。単なる食事提供に加え、安否確認・見守り機能を持つ
・完調品（完全調理済み食材）：真空パックされた食材を配送し、現場では温めるだけで提供可能
・新時代の自前化：主菜だけ施設内で調理、副菜や汁物は完調品にするなど、ハイブリッドな運用が増加
【プラットフォーム化】
・配食サービスは顧客リストを蓄積できるため、健康食品や介護用品の販売に広げやすい
・地域包括ケアや行政との連携も視野に入る
・単なる「食事提供」から「地域の高齢者支援インフラ」へと役割が拡張している
【仕出し・出前・ケータリングの違い】
・出前：日常的・少人数・低価格。ラーメンや寿司などが典型例
・仕出し：冠婚葬祭や会議用に予約制で提供。高級で大量対応が可能
・ケータリング：料理提供に加え、配膳・セッティング・後片付けまで含むトータルサービス
【HACCP（ハサップ）】
・食品衛生を守る国際基準であり、危険要因を事前に分析し、重要管理点を設定してリスクを抑える仕組み
・導入は義務化されており、認証取得企業は外部委託やOEMで信頼性を獲得しやすい
・品質保証の観点からも差別化要素になる
【外部環境と課題】
・利益率が低いため、原材料費の1%上昇が収益を圧迫する構造
・慢性的な人手不足が業界全体の課題。特に早朝・深夜勤務が敬遠されがち
・従来のやり方を続けるだけでは限界 → ITや中食を組み合わせた新モデルが求められる
・自社の強みを数値で把握し、改善ポイントを可視化することが必要
【コスト構造】
・人件費率：約30%。深夜・早朝手当の比率が高く、人件費削減が難しい
・原材料費率：40〜45%。この部分が1%変動するだけで利益率に直結
・旬の食材を一括仕入れして冷凍保存するなど、原価対策が不可欠
【ロスの種類】
・製造工程中ロス：下処理や仕込み段階での歩留まり管理不足による
・製品ロス：喫食人数の読み違いやキャンセルで発生する食事廃棄
・ロス管理を徹底することが利益改善の重要ポイント
【生産性向上の手法】
・調理人員ごとに生産性指標を設けて改善を進める
・CK（セントラルキッチン）のIoT化：RFIDで食材・人の動きを追跡し、動線最適化を図る
・AI献立作成：従来2週間かかっていた献立作成作業が20分に短縮できる事例あり
【営業と業界構造】
・現在は訪問営業や飛び込み営業が主流で、差別化が難しく価格競争に陥りやすい
・多くの企業が「低価格」路線に走ってしまい、収益性を確保しにくい構造
・営業のあり方を変えない限り、業界全体が疲弊してしまうリスクあり
【異業種参入】
・介護業界、調剤薬局、冠婚葬祭業、タクシー業界なども新たに参入している
・いずれも「既存の顧客接点」を活かしながら、給食・配食分野を取り込んでいる
・設備投資を抑えつつ、付加サービスとして展開する流れがある
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