広島の鉄道の歴史から始まって、2018年時点での広島市の交通事情、広電の運行や車両、路線や電停の一般的な話から蘊蓄まで、地図や写真も入れて紹介したもの。
「はじめに」の最後で、「鉄道ではない軌道には出発信号機がないので、『出発進行』ではありません」(p.4)というところで、やっぱりまだまだ路面電車は未知の世界だなと思いながら読み始めたが、読み終わってみると、広電について全く知らなかった自分も、これ以前に3冊読んでいると、全体としては結構知ってる話が多かった。
あとは面白かったところのメモ。まず広電ではないが、「アストラムライン」について、ずっと覚えにくい名前だなと思っていたが、これは「明日」と「TRAM」をあわせたネーミングらしい、ということを知って、やっと覚えられた。「英語の『ass』を連想すると上品でないイメージになってしまう……。」(p.29)というコメントは蛇足な気がするけど。で、他の本にも書いてあったらしいが、この電車は「新白島ー本通間が地下区間だが、このうち本通ー県庁前間の300mが案内軌条式の『鉄道』として免許され、地下高速道建設費補助金を使用していることから、『地下鉄』に分類されている。もちろん日本最短。」(pp,28-9)だって。300mだけが「地下鉄」なんだ、っていうのが面白い。あとは広電の歴史の部分。利用者を増やすために「沿線から広島に通う中学合格者宅に合格祝いのタオルやハンカチを持参して通学定期の営業にまわったというエピソード」(p.37)があるらしい。昭和6年?頃の話らしいが、どうやって中学合格者が分かるんだろうかとか、色々想像すると面白い。そして2025年3月末に廃止されてしまったPASPYというICカードがあったが、これのキャラクター「くまぴー」は「黒いサングラスをかけている。サングラスを外すと現れるつぶらな瞳がキュートで人気。中国山地からこっそり降りてきたスパイのツキノワグマという設定」(p.84)って、絵も載っているが、面白いしサングラス外したところを見てみたい。のに、もう廃止された、というのは悲しい。なんか身分?設定?を変えるとか、万博のミャクミャクみたいな形で存続してくれないだろうか。あともうなくなったこと、と言えば、旧広島駅電停のところで、「広島駅の信号担当者は、目の前の電車を捌きつつ、さらにその先も読んで対応しないといけない。(略)信号取り扱いをする人は、きっとテトリスなどの落ちものゲームが上手なんだろうなどと勝手に連想してしまう」(p.141)というのは、今の駅前大橋ルートのところにも同じ状況はあるのかな?こういうダイヤの管理とか運行の管理って、昔自分が飛行機の分野で似た仕事をしていたこともあるけど、ちょっと気になるというか、やってみたい。あとは宮島線の踏切の話。「田尻2」という踏切について。宮島線で「唯一、電鐘式と呼ばれる警報器が現役で残っている。近年、踏切の警報音は電子音化されて、遮断棒も降下し、踏切の遮断動作が完了すると音量が小さくなるなど、付近住民への配慮がなされている。だが、『田尻2』踏切の通行量は非常に少なく、民家からも離れているので、警報音は電子音化されていない。電鐘式とは、電気の力でハンマーを動かし鐘を叩く方式で、『カンカンカン』とも『チンチンチン』とも聞こえる。電鐘式が面白いのは、踏切の上り側と下り側でリズムが違ったり、ハンマーが空振りするのか一音飛ばしたりするところ。電車が通過し遮断機が鳴り終わったと思ったら『カン』とお釣りが鳴り響くこともある。不思議なことに、終電車の後、信号用の電気送電がストップする時に、10回くらい『カンカン』となってしまうこともある。」(pp.188-9)って、これは聞いてみたい。全国的にはこういう踏切ってあるところがあるのだろうか。踏切の警報音なんて気にしたこともなかった。あと重要なこととしては、何冊か前に読んだ広島市全般についての本でも野球にせよ交響楽団にせよ「市民」の力が大きいんだなと思ったが、「広島電鉄では保護者一人についき幼児三人までが無賃です。これは、広島電鉄でも電車だけの割引制度です。公共交通の柱ともいえる運賃収入を削ってでも移動のハードルを下げ、人々を街に導く…。いま日本では、採算性だけで判断するのではなく、地域の生活の足である公共交通を、赤字であっても必要であれば残そう支えようという考え方への転換が、始まろうとしています。(略)だからこそ、市民は親しみを込めて『ひろでん』と呼ぶと言っても過言はありません。」(pp.220-1)という部分、でも実際には結局お金がないと始まらないということはあると思うから、理想だけでは簡単にいかないことはよく分かるけど、でもそこに何とか挑もうとしている広島電鉄、というところ、市民と一緒に作る鉄道会社、という感じも広島ならではなのかなと思った。
ということで、これで広島電鉄について4冊読んだから、だいぶ詳しくなった。なんかたぶん人生で数回も乗ったことないと思うのに、もう色々知った気になって蘊蓄を語れる、というのは不思議な感じがする。(26/07/13)