伊藤浩志の作品一覧
「伊藤浩志」の「「不安」は悪いことじゃない 脳科学と人文学が教える「こころの処方箋」」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「伊藤浩志」の「「不安」は悪いことじゃない 脳科学と人文学が教える「こころの処方箋」」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ビジネス・実用
Posted by ブクログ
脳科学者と宗教学者が、それぞれの立場から人間の「不安」について考察、最後に二人でそれぞれの知見から対談するという構成。
まあとにかく、伊藤氏の脳神経科学の立場からの論考がすごく面白くて、ここだけだったら間違いなく★5。最終章の対談も、伊藤氏の話がめちゃくちゃ面白かったのだけれど、島薗氏の話も、現代の日本社会(政治とか)に通じるところがあって非常に興味深かった。
扁桃体の反応(情動反応)は、簡単に言ってしまえば直観による反応ということになるのだと思うが、不確実性が高い場合(っていうか、日常の人間関係ってほぼこれだと思うのだけれど)理性的理論的に考えるよりも情動反応の方が合理的な判断になるというのがとても腑に落ちた。様々な環境や条件が複雑に存在する中で、一つ一つを論理的に片づけていては、とてもじゃないが生き物の生存競争のなかで生き抜くことができない。その扁桃体の働きが、現在の人類にも同じように残っているということは、その機能が生き延びるのに不可欠だからこそだろう。
人間社会という不確実性だらけのなかで生きていくには、不確実なものをそのまま受け取り、その中でできうる判断を瞬間的にすることで、社会生活を乗り切る。やっぱりここでもネガティブケイパビリティが重要な能力になっていくんだなと、感心することしきり。
そして、お互いに理解し合うことを目指さず、相手を相手のまま容認して共存していく、分かり合えないまま対話を続けていく、そういうあり方が、これからの社会に必要な姿勢だろうという締めくくりに、猛烈に合点がいった。
足りないのは対話。分かり合えないところ、価値観の相違はどうしたってある。だったら、双方の落としどころをお互いに探し合って納得できるところへ着地する。
それができてない、やろうとしないから、今の社会のあちらこちらでゴタゴタしているんだよな。
島薗氏の章は、哲学的で抽象的だったり、夏目漱石の作品解説みたいな部分があったりして今一つ入り込めずにいたが、オルテガの『大衆の反逆』のくだりは、現代社会の問題を突き付けているようでもありなかなか興味深かった。私にもっと教養があれば、もう少ししっかり理解できたのかもしれない…。
総じて、現代の社会の在り方に大きな問題提起がされている著作。参照されている文献も読んでみたいし、もう少し丁寧に読み直して、またいろいろ考えたいなあ。