集団的自衛権と集団安全保障の違いって分かりますか?
名前は似てるけど別物なんです。
ややこしいですね。
個別だろうが集団だろうが自衛と、集団安全保障ってのはまったくの別物。
自分(や仲間)を守るための『権利』と、みんなのための『義務』という違いがあるわけです。
もし他国から攻撃(侵略)を受けた場合、自分で武力行使して撃退して良いわけです。やられたくなきゃ当然ですね。
それを各自仲間を組んで、その仲間で撃退するのも良しとされています。日本は9条の関係からこれが問題となっていますが・・・
これが個別なり集団なりの自衛権です。
で、集団安全保障は、誰かが攻撃したら、全員でそいつを撃退する、って話です。しても良いですよじゃないし、各自仲間でじゃなくて、みんなのためにみんなでやりますよって取り決めです。
ここの区別ができてない人が多い、と著者は指摘する。
なので国連軍、多国籍軍、PKO、PKF参加は合憲かどうか?という議論は紛糾してきまましたが、
自衛のための必要最小限度を超えるか、超えないかの話ばかりで、自衛と集団安全保障の違いを認識した本質的な議論は無い、と厳しい。
著者はこの責任は、内閣法制局がPKOなどに参加し武力行使をすることを「すべて集団的自衛権にかかわる問題だ」と誤解ないし、曲解していて、
さらに「武力行使というものはすべて我が国防衛のための必要最小限を超えるものであってはならない」と盲信していることにある、と分析する。
本来、自己を守るための武力行使は、相手あってのことなのだから、必要最小限ではなく、必要な限度内(状況に応じて幅がある意)であるはずなのに、と。
そして内閣法制局による『自衛がすべて』、『必要最小限がすべて』という2点が、議論が深まらない思考停止をもたらしてる原因である、と。
で、国連の一員としての武力行使は、世界平和の維持を目的としたものであり、国連加盟各国の国際義務遂行のためのもので、9条が放棄した武力行使とは全く無関係である。
そもそも日本は国連憲章を何の留保もなく、国会で承認・批准して国連に加盟したんだから、
国連憲章第1条「平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとる」ために、
第2条「この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない」。
しかも日本国憲法第98条には「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」とありますよ、と国連憲章と日本国憲法の点から、集団安全保障に参加しても問題ないこと(むしろ積極的な参加)を主張する。
本書にあるように、自衛と集団安全保障の違いをきちんと認識すれば、単純に9条があるから・・・とはならないんじゃないかなぁ。
国連加盟国として、世界の平和のためにイザという時に身を削るのか、それともみんなが身を削ってる時にも、たとえ白い目で見られようが、私は平和主義ですからそういうのやらないんです、と貫くのか。
さて?
世界が平和じゃないと日本の平和も保てないと思うのだけど。
世界が平和じゃないのに日本だけ平和ってあり得るのかな?あり得ないように思うんだけど。
あり得ないなら、日本も国連の決議を経た集団安全保障の範疇のものにはなるべく制限を設けず(自衛隊の負担?犠牲?を減らすよう法・制度を整備して)、積極的に参加しないといけないんじゃないかなぁ。
と、個人的には思います。
あと、いくつか参考に。
グレーゾーンの場面では、自衛隊は武力行使はとれない。
防衛出動命令が出されるまで武力行使が一切できない。その間の奇襲で一方的に自衛隊が殲滅されてしまうかも。かれこれ40年近く問題が放置されてる、と。うーむ。
こういう状況で、グレーゾーンの場面で自衛隊に許される対応は、国家権力としての自衛権の活用ではなく、国内刑法にある個人の権利としての正当防衛権を活用することだけ、なんだそう。
先に攻撃を受けてからでないと、対応できないし、責任は個人に帰する、と。うーむ、自衛隊の置かれている状況厳しすぎない?
米国本土向けのミサイルが北朝鮮から発射されるとして、それは日本上空飛ばないんだそう。
ミサイルは通常最短距離を飛ぶのだけど、それは東部ロシア→アラスカ→カナダ→米国なんだって。
ハワイやグアムの場合は、日本上空通るけど、通過する場合に場合に、高度が高すぎるし、その時点では速度も遅い。
日本が米国向けの弾道ミサイルをミサイル防衛システムで撃墜するってのは無理らしい。
最後に。
現代における軍事の主目的は敵国に勝つことではない。
軍事力の目的は、その国の外交の背景として適切に機能して、その外交によって世界の平和(秩序)と安全、そしてその国の平和と自由を確保すること。
集団安全保障も戦うことが目的ではない。
諸国連合で、いつでも戦えるという姿勢を示しつつ、まず外交で話し合い、次に経済制裁を加え、それでも相手が先に武力行動をとってきた時に初めて諸国の力を合わせて武力制裁する、というもの。
陸自トップの陸上幕僚長を務めた著者のリアルな軍事論でございます。