ユダヤ教の聖典にして、キリスト教の母胎ともなった経典。旧約聖書として認められている経典の中から、特徴的な文書として、モーゼ五書の最初の二篇である「創世記」と「出エジプト記」、預言書から「イザヤ書」、文学書の中から「伝道の書」を収録する。文体は意訳寄りで読みやすい。
「創世記」
神ヤハウェが天地を造り、人を作る。人は知恵の実を食べ、楽園を追われる。人は地に殖えたものの堕落したため、神は洪水を起こし、ノアとその家族だけが箱舟で生き残る。神はノアと改めて契約し、その子孫が栄える。アブラムが祝福され、アブラハムとなる。その老年の子イサクを捧げよ、と神はアブラハムを試し、彼はそれに従うが、寸前で撤回される。
イサクの子ヤコブは神にイスラエルの名を与えられた。ヤコブには12人の子があったが、最も愛されたのはヨセフだった。兄弟の恨みを買ったヨセフはエジプトへ売られて行くが、そこで栄達した。カナンの地は飢饉に見舞われ、ヤコブの息子たちはエジプトに食を求めた。そこでヨセフと和解し、ヤコブ共々、エジプトに移住することになる。
「出エジプト記」
時は移り、イスラエルの子孫は殖えていたが、エジプトで過酷な労働を強いられていた。神の意志は預言者モーセに下り、一族を率いて父祖の地カナンへ向かう。葦の海を割る軌跡を行い、砂漠ではマナと呼ばれる食物を与えられ、荒野を彷徨う。モーセはシナイ山で十戒と契約の書を授けられるが、山を下りた時、彼の民は金の子牛像を造って拝んでいた。不信の民の罪をモーセは贖い、十戒が再び下賜される。
「イザヤ書」
第一イザヤから第三イザヤまで。それぞれ違う時代の預言者らしい。民族の苦難とやがて現れる救世主を語る。
「伝道の書」コーヘレスと名乗る著者によって、一切は空であるとする、ニヒリズムに満ちた神学が語られる。
それにしても理不尽な神である。聖書に記されている如く、妬む神であり、依怙贔屓が甚だしい。そしてヘブライ人も神の言葉に背く。これが亡国後苦難の時を超えて信仰を継いだユダヤ人の祖先なのかと思ってしまう。あるいはその後の苦難こそがユダヤ人を鍛えたのかだろう。