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心が震えるおすすめの音楽漫画10選【クラシック・ジャズ・合唱・三味線まで】

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学生時代に練習した曲、好きな人と聞いた歌、大人になって良さを知った曲など、嬉しい時も悲しい時も、人生のそばにはいつも音楽があります。

今回は、クラシックやジャズなど、ジャンル別におすすめの音楽漫画を10作品ご紹介します。「目で楽しめる音楽」を、ぜひご鑑賞ください。

クラシックをテーマにした漫画4作

偉大なる音楽家たちの曲の意図や想いを汲み取り、コンクールや演奏会に向けてストイックに練習に打ち込む姿はクラシックならでは。一つの楽曲から、演奏者の数だけ多彩な広がりを見せるクラシックを、漫画で味わってみてはいかがでしょうか?

魂の再生と青春のきらめきの物語『四月は君の嘘』

四月は君の嘘 1巻

完結『四月は君の嘘』 全11巻 新川直司 / 講談社

母から厳しいピアノの指導を受け、「ヒューマンメトロノーム」と呼ばれていた天才ピアノ少年・有馬公生は、母の死後、ピアノが弾けなくなってしまいます。そんな春のある日、満開の桜の下で同い年のヴァイオリニスト・宮園かをりと出会います。

「暴力上等 性格最低 印象最悪 ――でも 彼女は美しい」

個性的な演奏をする才能豊かなヴァイオリニストであるかをりは、公生を「友人A」呼ばわりしますが、その実力を誰よりも認めており、コンクールの伴奏者に任命します。かをりは、幼い頃公生のピアノ演奏に感動し、ヴァイオリンを始めました。いわば公生が「きっかけの人」なのです。

14歳という、青春の入り口に立った公生たち。かをりとの出会い、幼なじみの椿と亮太の支えにより、公生がもう一度音楽に向き合う姿が、季節の移り変わりとともに感動的に描かれます。音楽と折り重なるように4人の恋愛模様も展開し、青春ドラマとしても読みごたえ充分。

実は、かをりにはある秘密があり、それが作品タイトルにもなっているのですが、そのラストに号泣する人が続出した作品です。

2014~2015年には2クールでテレビアニメ化され、原作と同じラストまでしっかりと描かれたことで、新たなファンを増やしました。2016年には、広瀬すずさんがかをりを演じる実写映画が公開される予定です。

『四月は君の嘘』を試し読みする

その演奏は全ての人を森に連れ出す『ピアノの森』

ピアノの森 1巻

完結『ピアノの森』  全26巻 一色まこと / 講談社

第12回(2008年)文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞した本作は、2007年にアニメ映画化され、カイを上戸彩さんが、修平を神木隆之介さんが、壮介を宮迫博之さんが演じました。

家庭環境から学校ではいじめられている主人公の一ノ瀬海(カイ)。森に打ち捨てられていたピアノが、ひそかに彼にピアノの才能を授けていました。ピアニスト志望の雨宮修平や、天才ピアニストでありながら不幸な事故によりピアノを弾けなくなってしまった阿字野壮介との出会いを通じ、カイはピアノコンクールに出ることに。しかしカイの規格外の才能は、会場から熱狂的な支持を得られたものの審査員からは評価されず、心の支えだった森のピアノも焼失してしまいます。子どもなりに失意を感じるカイですが……。

カイがピアノを弾くと、森が現れます。その演奏シーンは無音の漫画でありながら読者の心を揺さぶり、悲しいシーンではないのに自然に涙が出てくるほどです。ショパン・コンクールに臨むカイとファイナリストたちの演奏も丹念に描かれ、コンクール会場にいるかのような臨場感を味わえます。審査の様子、そして審査結果の発表も、思わず手に汗を握るほどの緊張感です。

森と人に育てられ、カイは世界へと一歩を踏み出します。天才肌のカイと、周囲の期待に沿おうとする修平ら、若きピアニストたち。それぞれが葛藤し、努力する姿に、「才能とは何か」ということも考えさせられる作品です。

『ピアノの森』を試し読みする

神童と出会い、凡庸な音大浪人生の人生が今開かれる『神童』

神童 1巻

完結『神童』 全4巻 さそうあきら / 双葉社

小学校5年生のうたは、世界の巨匠と並ぶだけの腕を持つ天才ピアノ少女。うたはある時、母親との軋轢からピアノへの興味を失ってしまいます。しかし、才能はなくとも絶対音感を持つ音大浪人生・和音(かずお)と出会い、ピアノへの情熱を取り戻し、世界的指揮者であった父親の音「天色(あまいろ)の音」を出すことを目指します。

和音は小学生のうたに助けられて音大に入学し、自分なりのピアノの道を見つけていきます。うたも、破産による生活の変化やメニエール病による難聴などの困難を乗り越え、自分の音を目指していきます。天才は天才なりに、凡人は凡人なりにもがき、そして壁を乗り越えていく姿が感動を呼ぶ作品です。

本作の演奏シーンは、まるで絵から音が聞こえてくるような、圧巻の表現力です。さそうあきら先生は2015年に松坂桃李さん主演で実写映画化された「マエストロ!」の原作である『マエストロ』など、音楽漫画における卓越した描写に定評がある漫画家。全4巻とそれほど長くない作品ですが、第12回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞と、第3回手塚治虫文化賞マンガ優秀賞をダブルで受賞しています。

『神童』を試し読みする

笑いながら音楽を楽しめる、クラシック漫画の定番はこれ!『のだめカンタービレ』

のだめカンタービレ 1巻

完結『のだめカンタービレ』 全25巻 二ノ宮知子 / 講談社

アニメ化のみならず、上野樹里さん、玉木宏さんなど、豪華俳優陣でテレビドラマ化・実写映画化され、クラシックブームを巻き起こした作品です。「ぎゃぼー」と変な雄たけびをあげ、生活態度はダメダメな女子力ゼロの主人公・野田恵(のだめ)。しかしピアノの才能は素晴らしく、音大の王子様的存在で指揮者を目指す千秋、世界的に有名な指揮者・シュトレーゼマンなど、周囲の人々を巻き込みながら、いつしか虜にしていきます。

のだめの奇行や、強烈な音大生たちの様子など、コミカルで笑える要素の多い作品ですが、ストーリーが進むにつれて、次第にのだめにもプロ意識が芽生え、1人の音楽家として成長していきます。圧倒的な才能や、高みを目指す者がそばにいることで、自身も演奏をしたくてたまらなくなる……その昂ぶりは、表現者である音楽家の性なのかもしれません。また、(ごくたまにですが)千秋とのキュンとする恋愛シーンも見どころです。

『のだめカンタービレ』を試し読みする

ジャズをテーマにした漫画2作

なんとなく敷居の高いイメージもあるジャズですが、実は肩の力を抜いて楽しめる素敵な音楽。それは、漫画においても同じです。登場人物がプレーヤーとして成熟していく姿は、ジャズファンでなくとも楽しめますよ。

大志を抱いた少年がサックスと成長する、熱い本格ジャズ漫画!『BLUE GIANT』

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完結『BLUE GIANT』 全10巻 石塚真一 / 小学館

仙台に住む宮本大はまっすぐな性格だが、将来何をしたいのか分からない高校3年生。そんな大は、初めて訪れたライブハウスで目にしたジャズ演奏に心打たれ、「世界一のサックスプレーヤーになる」と決意します。しかし、楽器(テナーサックス)を兄からプレゼントされたものの、大は楽譜すら読めません。また、教えを請う人もおらず、同級生がジャズに興味や理解があるわけでもなく……。雨の日も猛暑の日も広瀬川の河原で独り、好きなミュージシャンの演奏をコピーし、サックスを吹き続けて、ひたすら技術を高めようとします。

大の演奏は荒削りですが、ジャズに対する熱い思いは人一倍あり、それが周囲の人々の心を震わせます。初めて人前で演奏したステージでは、客に「うるさい!」と言われ、途中で帰されてしまいますが、それでも大はめげません。やがて、師匠となる由井と出会い、より奥深いジャズの世界に飛び込んでいきます。そして父親の理解や人々との出会いを経て、大は仙台を後にし、東京に出てトリオを組むことになります。

寝食を忘れて何かに打ち込んだことがある人は少なくないでしょう。しかし、その思いを継続させるのはとても難しい。だからこそ、サックスにのめり込む大の姿が、泥臭くもまぶしい! 青春の思いそのままに努力し突き進む大の姿が、諦めていた何かを思い出させてくれる作品です。練習シーンや演奏シーンも熱気に満ちており、興奮が胸に迫ってきます。

アウトドアファンから絶大な支持を受ける山岳漫画『岳』の作者である石塚真一先生が描く、本格ジャズ漫画。これからますます人気が出ること間違いなしの注目作です。

『BLUE GIANT』を試し読みする

1960年代の空気が伝わる、ジャズと青春の物語『坂道のアポロン』

坂道のアポロン(1)

完結『坂道のアポロン』 全10巻 小玉ユキ / 小学館

舞台は高度成長期の1966年。高校生の薫は、父親の仕事の都合で横須賀から九州の高校(アニメだと長崎・佐世保の高校という設定)へ転校します。ナイーブな性格の薫は、そこでバンカラな千太郎と出会い、彼のドラム演奏がきっかけで、ジャズの魅力に惹かれていきます。

60年代後半が舞台となっている本作は、この時代の息吹と地方の穏やかな雰囲気がノスタルジックに感じられる作品です。物語の中盤で、薫と千太郎は仲違いをしてしまいますが、文化祭での演奏により再度歩み寄り、これまで以上に強い信頼関係を築いていきます。その文化祭での、ピアノとドラムによる2人のジャムセッションシーンは必見です。

本作は、小玉ユキ先生の初長編漫画ですが、少女漫画らしい恋愛要素を軸にしつつも、ストーリー展開は骨太であり、男性にもおすすめしたい作品です。2012年にアニメ化され、前述の文化祭のシーンをはじめ、演奏シーンの素晴らしさが、ジャズファンの間でも話題になりました。

『坂道のアポロン』を試し読みする

クラシック・ジャズ以外の変わり種音楽漫画4作

最後に、クラシック、ジャズ以外の音楽漫画をまとめてご紹介します。普段なかなか触れる機会が少ない音楽の世界を、漫画で覗いてみませんか?

津軽三味線にかける青春!『ましろのおと』

ましろのおと 1巻

『ましろのおと』 1~20巻 羅川真里茂 / 講談社

師である祖父の死をきっかけに、逃げるように青森から東京へやってきた津軽三味線奏者・澤村雪(さわむら せつ)。津軽三味線を背負い、六本木をさまよっていた雪は、グラビアを目指しながらキャバ嬢をしているユナに拾われます。三味線を捨てられずに東京まで持ってきた雪ですが、理想の音を見失い、三味線を弾くことがなかなかできません。しかしユナの恋人でデビュー間近のバンドのボーカリスト・タケトとのいさかいから、タケトが立つはずだったライブハウスで三味線を演奏することに。その圧倒的な演奏で、ライブハウスの客を魅了します。その後、青森を出ていた母・梅子に強引に勧められ、高校へ編入。雪は東京で自らの音を探す旅を始めます。

津軽三味線は多くの演奏会やコンクールが行われており、地元青森だけでなく日本全国に愛好者がいます。リアルな三味線事情がうまくストーリーに取り入れられており、本作でも津軽三味線甲子園・松吾郎杯が開催され、団体戦に出場する雪たちの前に、全国の強豪が立ちはだかります。若者たちが津軽三味線を通して苦悩し、努力し、自己実現を目指す王道青春ストーリーです。

本作は、『赤ちゃんと僕』『しゃにむにGO』などの羅川真里茂先生による、初の少年誌連載作です。第36回(2012年)講談社漫画賞の少年部門、第16回(2012年)文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞を受賞しています。

『ましろのおと』を試し読みする

トランペット初心者の気弱な女子高生の成長を描く『青空エール』

青空エール リマスター版 1

完結『青空エール リマスター版』 全19巻 河原和音 / 集英社

中高でも人気の高いクラブ活動である吹奏楽部を舞台にした作品。主人公のつばさは、吹奏楽と野球の名門校として名高い白翔(しらと)高校に入学します。主人公のつばさはトランペット初心者で、他の漫画の主人公のように天才的な才能があるわけではないため、飛躍的に上達したりすることはありません。だからこそ、ひたむきな努力を続け、叱られてもヘコんでも、前向きに取り組むことの大切さを改めて教えてくれる作品です。

作者は『先生!』『高校デビュー』などの代表作があり、『俺物語!!』では原作を担当している河原和音先生。野球部をはじめとした体育会系部活もしっかり描かれ、かつて部活に打ち込んだ人や、吹奏楽の経験者には、感慨深く共感を呼ぶストーリーです。

吹奏楽そのものに興味を持った方は、「元・吹奏楽部の書店員が選んだ、おすすめ吹奏楽漫画8選」の記事もどうぞ。

『青空エール リマスター版』を試し読みする

天使のボーイソプラノが瑞々しく響く『少年ノート』

少年ノート Days of Evanescence 1巻

完結『少年ノート』 全8巻 鎌谷悠希 / 講談社

蒼井由多香(あおい ゆたか)は、音に対して人一倍感受性が強い中学1年生。入学式で聞いた歌に感動し、中学の合唱部に入ります。天使のようなボーイソプラノで、その感受性の強さゆえに曲を聴いては涙するゆたかは、最初はなかなか合唱部員に受け入れてもらえません。しかし、その純粋な姿が少しずつ周りの人間を変えていき、彼は弱小合唱部の仲間と共にコンクールでの金賞受賞を目指します。

合唱学部のメンバーをはじめ、天使のような顔立ちと声を持つが、かつての声を失いつつあるロシア人のボーイソプラノ少年・ウラジーミルなど、登場人物たちにもスポットが当たり物語が進んでいきます。実際の合唱曲も登場するため、合唱経験者の方は、きっと読みながら頭の中に音楽が流れることでしょう。

変声期を迎える前の少年の声の儚さや、思春期独特の残酷さを秘めた心の揺れ動きの描写が非常に細やかで瑞々しく、誰しもが通った青春のもどかしさと美しさを思い出させてくれる作品です。

『少年ノート』を試し読みする

オペラ歌手を目指す熱く激しい女の戦い!『プライド』

プライド 1

完結『プライド』 全12巻 一条ゆかり / 集英社

お嬢さま育ちの史緒の家にハウスキーパーに来た苦学生の萌。二人は偶然、同じオペラ歌手を目指していました。しかし父の事業が失敗し、史緒は今まで生活から一転、自分とは縁がなかった世間の風にさらされることになります。同じ立場に立つことになった萌と史緒。それでも萌は、亡き母が有名オペラ歌手であり音楽界のサラブレッドのような血筋で、苦境にあっても決して失われない文緒のプライドに激しく嫉妬します。

容姿も性格も相性的なオペラ歌手を目指す二人が、時にいがみ合い、時に(不本意ながら)ユニットを組み、オペラでの成功を目指すストーリー。女2人のあけすけな感情のやりとりが、とにかくリアルです!

作者は少女漫画界の重鎮・一条ゆかり先生。第11回(2007年)文化庁メディア芸術祭のマンガ部門で優秀賞を受賞し、実写映画化だけでなく舞台化もされました。

『プライド』を試し読みする

最後に

以上、さまざまな音色を持った音楽漫画をご紹介しました。今まで馴染みのなかった音楽のジャンルも、漫画をきっかけに聴いてみると、世界がさらに広がりますよ。

さらに音楽のテーマ別に深掘りした漫画を読みたい方はこちらもどうぞ!
「正統派からゆるふわ系まで!おすすめのバンド漫画10選」
「元・吹奏楽部の書店員が選んだ、おすすめ吹奏楽漫画8選」

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