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今、卓球が熱い! 書店員オススメの卓球漫画10選

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張本智和選手や伊藤美誠選手に代表されるように、若手選手の台頭が著しい卓球界。来年にはオリンピックが待っており、卓球人気はますます盛り上がっていきそうです。もともとは、雨でテニスができない日に貴族が遊びで始めたという卓球。しかし、今では独自の進化を遂げ、技も戦略も複雑になってきました。それを理解しようと思った時、役立つのはやっぱり漫画。初心者にもわかるように卓球を解説しつつ、読み応えのあるストーリーが展開する10作を紹介します!

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『フルドライブ』

完結『フルドライブ』 全3巻 小野玄暉 / 集英社

天才卓球少女のサポートを受け、主人公がどんどん強くなる『フルドライブ』

週刊少年ジャンプに連載された卓球漫画として、まずは紹介しておきたい作品です。

主人公の玉城 弾は13歳の中学1年生。小学生時代に日本からドイツに引っ越した彼は、どちらの国でもいじめられっ子でした。そんな彼に自信を与えることになったのが、元世界王者の祖父から教わった卓球。そして、日本に帰ってきた弾は、強い相手と戦える場所を探し始めます。

第1話で描かれるのは、弾と本作のヒロイン・白石真凜(マリン)との出会いです。真凜は弾と同い年にして、卓球日本女子の頂点に立つ女の子。ツインテールがトレードマークの、天才卓球“美”少女です。二人は出会って早々に打ち合うことになるのですが、この展開がまずはアツい!

真凜は美しく舞う卓球が身上の女の子。

「さぁ 舞踏会を開きましょうか」

という言葉でプレイを始めるあたりからして、キャラが立っています。そんな真凜に

「私の相手をしてくれないかしら?」

と言われた弾は、

「真凜さん… 俺 卓球だけは強いよ」

という自信満々の返答。二人は相手の実力を実感することで、どんどん心を高揚させていくのでした。

この出会いによって、弾は真凜が所属する卓球のエリート育成塾に迎え入れられ、強烈な個性を持った先輩達の中に入って、一緒に全国優勝を目指すことになります。

弾は背が低く、かわいい系の男子。普段はおとなしいのですが、卓球のこととなると、いきなり強気になるのが魅力です。

「小さくてポンコツのくせに、あいつは卓球でなら 自分より大きな奴とも殴り合える 鋭い牙を持ってるのよ」

とは真凜の言葉。彼の一番の武器は、高速回転をかけるドライブ。強い相手を戦えば戦うほど実力を発揮し、強者のオーラをまとっていく姿は、まさに主人公です。

3巻に入ると、都大会がスタート。最大のライバル・南條幸也と出会い、大会を勝ち進むと、いよいよ対戦が時がやってきます。

全3巻と短いですが、スピーディなストーリー展開と、次から次へと繰り出されるスーパープレイがたっぷり味わえる作品。ヒロイン・真凜は一見わがままそうですが、実はすごく性格がいい女の子で、弾と真凜の絆も見どころです。

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『ピンポン』

完結『ピンポン』 全5巻 松本大洋 / 小学館

卓球でこの星の一番になる! 今も愛される90年代の名作『ピンポン』

言わずと知れた卓球漫画の傑作。90年代に発表された作品ですが、今読んでも色褪せない魅力を放っています。2007年には実写映画化、2014年にはTVアニメ化されました。

主人公は、ペコ(星野裕)とスマイル(月本誠)の二人。タムラ卓球道場で育った幼なじみ同士で、現在は片瀬高校の1年生。ともに卓球部に所属しています。

1年生にして実力派の二人ですが、スマイルはペコと打つ時、無意識に力を抑えていました。それを見抜いたのが顧問の小泉先生。現役時代はバタフライジョーの異名を取った名選手で、スマイルの隠れた実力を見抜き、彼を特別にコーチし始めます。

片瀬高校はペコとスマイルを除いてはたいした選手はいません。同じ地区には全国最強の海王学園が君臨し、そこには天才と呼ばれるドラゴン(風間竜一)や、ペコやスマイルと同じタムラ卓球道場の出身であるアクマ(佐久間学)が。また、辻堂学院には中国からの留学生・孔文革(コン・ウェンガ。あだ名はチャイナ)が助っ人として加入。ライバル達が出そろう中、インターハイ県予選がスタートし、ペコとスマイルはライバル達と個人戦で激突していきます。

スタイリッシュな作風が特徴の松本先生。人気作『鉄コン筋クリート』の後を継いで連載された『ピンポン』では、海外のコミックに影響を受けた画風と、クールなセリフ回しのかっこよさにより磨きがかかり、スポーツ漫画としての手に汗握る展開もあいまって、その独特な世界に読者を引きこんでいきます。

本作は、ライバルとしのぎを削って、全国優勝を目指すという一般的なスポーツ漫画とはひと味違います。柱となっているのはペコとスマイルの結びつき。一度はこじれてしまった二人ですが、それぞれが葛藤を乗り越えて、無心で球を打ち合えるようになっていく。それが本作のクライマックスです。最初に描かれる

「ピンチの時には必ずヒーローが現れる」

というスマイルのモノローグが、作品のテーマ。もちろんスマイルにとってのヒーローとは、ペコのことです。

スマイルの才能に惚れ込み、海王に引きこもうとするドラゴン、ペコに憧れつつも強い対抗心をいだくアクマ、高校生とは思えないほどニヒルでかっこいい孔、さらにタムラ卓球道場のオババや小泉先生など、脇を固めるキャラクターもクセ者ぞろい。高い画力に裏打ちされた卓球シーンも躍動感にあふれ、何度も読み返したくなる作品です。

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『少年ラケット』

完結『少年ラケット』 全13巻 掛丸翔 / 秋田書店

記憶喪失の少年が、卓球に夢中だった自分を取り戻していく『少年ラケット』

中学の卓球部を舞台にした正統派のスポーツ漫画です。
主人公は、1年半前に火事で父を失ったショックで記憶喪失にかかってしまったイチロー(日向伊智朗)。今は叔母のもとで暮らし、中学では野球部に所属していました。そんな彼の前に、記憶喪失前の知り合い、如月ヨルゲンが現れます。

卓球日本選手権のホープス(小6以下)の部での優勝経験があり、現在は、中学最強と言われる紫王館に通うヨルゲン。そんな彼を2年前に公式戦で破っていたのが、卓球のことを全て忘れてしまっているイチローだったのです。

「キミと父親を…そしてボクとキミとを繋いだのは──卓球だよ」

とイチローに告げるヨルゲン。イチローの名前は、伝説的な選手・荻村伊智朗から取って、父が名づけたものでした。ヨルゲンとボールを打ち合ったことで、イチローは卓球に夢中になっていたかつての感覚を思い出し、野球部から卓球部に移るのでした。

イチローの通う森原中の卓球部を実質的に率いるのは、紫王館の主将に勝ったこともある3年生ヒロ(宮原博治)。

「卓球とは100m走をしながら チェスをするようなスポーツである」

という荻村伊智朗の言葉をイチローに伝えたヒロは、卓球というスポーツの戦略性や技の一つ一つを、イチローの成長に合わせて伝授していくことになります。

イチローが記憶喪失によって卓球の知識を失っていて、ゼロから教わっていくことを通して、読者にも卓球の世界がわかりやすく伝わってくるのが本作のポイント。さらに、イチローには本人も忘れている特殊な技量があり、それがクライマックスの戦いを盛り上げます。記憶喪失というのは、実にうまい設定だなと感心させられました。

掛丸先生は、「世界卓球2016」の時に出場選手へ似顔絵つきの応援メッセージを送ったことで話題に。また、「世界卓球2017」でもコラボし、日本卓球界を盛り上げました。

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『灼熱の卓球娘』

完結『灼熱の卓球娘』 全7巻 朝野やぐら / 集英社

萌え系の女の子達が、卓球に真剣に向き合う『灼熱の卓球娘』

萌え系のキャラクターが登場しつつ、ストーリーとしてはスポーツ漫画の王道を貫いている本作。美少女漫画ファンにもオススメしたい卓球漫画です。

雀が原中学の卓球部でランキング1位の2年生・上矢あがり。部員達にエースとあがめられる日々に満足していた彼女の前に、転校生で新入部員の旋風こよりが現れます。普段はドジっ娘ですが、部内ランキング4位の3年生を負かせてしまうほどの腕前を見せ、一気に注目の的となるこよりを、ライバル視するあがり。ランキング1位の座をかけての、二人の勝負が始まります。

得意技の高回転をかけた山なりのボールを打ち出すループドライブで、こよりを翻弄するあがり。しかし、こよりは相手が強ければ強いほど実力を発揮するタイプでした。
「ドキドキが止まらないよ──…っ」と高揚し、スマッシュの威力を強めていくこより。そんな彼女のドキドキがあがりにも伝染し、二人はお互いのことが大好きになっていきます。

雀が原中学の卓球部は、こよりとあがり以外にも個性派の美少女が勢揃い。明るく前向きで超攻撃型の天下ハナビ、洞察力に優れ、相手の心理だけでなくパンツの色まで言い当ててしまう出雲ほくと、胸が大きくて優しいムネムネ先輩と鉄壁の守備を誇る部長・後手キルカのダブルスコンビとともに、主人公二人は団体戦に臨むのです。

卓球のルールや技の解説も丁寧で、ほくとが卓球ショップの娘という設定により、用具についての説明も豊富。物語後半には、かつての仲間で、今は強豪校に転校した月ノ輪紅真深(ツキノワ クマミ)が、あがり達の最大のライバルとして登場し、ストーリーを盛り上げます。

『少年ラケット』とともに、「世界卓球2017」とコラボして話題に。2016年にはTVアニメ化もされました。

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『卓上のアゲハ』

完結『卓上のアゲハ』 全3巻 古屋樹 / 集英社

「黄金の後継者」と呼ばれる卓球の強者がしのぎを削る『卓上のアゲハ』

『フルドライブ』と同じく、週刊少年ジャンプに連載された卓球漫画です。

学校一の美少女で、全校の男子生徒をほぼ手中に収めている高校1年生の大塚リリカ。彼女の唯一の悩みは、実家がオンボロの卓球場ということでした。

「卓球なんて地味でダサいスポーツ」

と言うリリカの前に現れるのが、本作の主人公でメガネ男子の花園アゲハです。

公衆の面前でラケットでボールを突きながら、

「卓球はカッコイイ」

と言うアゲハ。リリカが奇妙なナンパだと思って断ろうとすると、

「僕は卓球に全てを賭けているが故 あなたと不純異性交遊にいそしむ暇はありません」

と言い放ちます。そのひと言で、リリカのプライドはズタズタ。しかもアゲハは、自分の祖父がドイツから日本に呼び寄せた弟子で、同居することになっただけでなく、許嫁候補にされてしまうのでした。

アゲハは知的でクールなルックスですが、リリカの裸エプロン姿を妄想して鼻血を出してしまうムッツリな一面も。しかし、ラケットを握ると一転して精悍に。普段は自分を

「僕」

と言っているのに、闘志に火がつくと

「俺」

に変わるのが特徴です。

アゲハが最初に取った行動は、廃部となっていた卓球部を再建すること。まずは元卓球部の宮地剛と対決し、彼の卓球への情熱を甦らせます。続いてアゲハの前に現れたのが、2年生の塔堂武虎(トウドウ タケトラ)。日焼けしたチャラ男で、学校中の女子をメロメロにさせている彼ですが、卓球の腕前は相当なものがありました。彼は

「黄金の継承者」

の一人だったのです。

日本卓球界の黄金時代だった1950年代に活躍した13人の名選手によって、日本卓球の再興のために育成した13人の若者。それが「黄金の継承者」です。アゲハの師匠であり、リリカの祖父である大塚伊智葉に鍛えられたアゲハもその一人。本作は「黄金の継承者」同士の出会いと戦いが、柱になっていきます。

塔堂の次にアゲハの前に現れる「黄金の継承者」は、強豪校・海燕学園の牧瀬羊と犬子春介の二人。「黄金の継承者」はそれぞれに特性を持っていて、塔堂は「最速」、牧瀬は「幻惑」、犬子は「螺旋」と呼ばれます。いかにもジャンプ漫画らしい設定と彼らの繰り出すスーパープレイ、それに対抗するアゲハの活躍が見どころです。

『卓上のアゲハ』を試し読みする

『卓球Dash!!』

完結『卓球Dash!!』 全15巻 本田真吾 / 秋田書店

茨城のヤンキーが主人公の正統派スポーツ漫画、『卓球Dash!!』

ヤンキー漫画と卓球漫画が、見事にミックスされた作品。ヤンキー漫画らしい軽快なノリと、格闘漫画かと思うほどの派手でケレン味溢れる卓球シーンが魅力です。

主人公・天道春久(テンドウ ハルク)は、今もヤンキーという存在が残り続ける茨城県牛久無頼学園の1年生。彼自身もリーゼントに特攻服という生粋のヤンキーです。

仲間と校舎裏でダベったりケンカに明け暮れる春久の前に、東京からの転校生で、美少女の一ノ瀬沙羽が現れて、物語はスタートします。実は牛久無頼学園の女子卓球部は、関東に敵なしと呼ばれる強豪。そこに加わるために転校して来た沙羽と、卓球勝負をすることになった春久は、彼女のパワー溢れるプレイに手も足も出ず敗北。「自分より卓球の弱い男は認めない」と言い放った気合いに一目惚れし、自らも卓球部への入部を決意するのでした。

女子に比べ、男子は弱小の牛久無頼学園卓球部。しかし、春久や、沙羽を追って東京から転校してきた高槻洸士郎、春久の不良仲間で卓球経験者だった結城百々といったメンバーが加わってパワーアップし、公式戦に挑んでいくことになります。

春久の入部テストと同じ日にヤンキー同士の抗争が勃発したり、学園の番長に春久が見込まれて、強引に番長グループに入れられそうになったりと、序盤はヤンキー漫画の要素が多め。熱いケンカや仲間との友情が描かれるとともにギャグシーンも多く、楽しく読める作品となっています。

そして、春久が卓球にハマって腕を上げ、ヤンキー仲間も卓球部に入部することで、徐々に卓球漫画度がアップ。後半では、春久達と関東のライバル高校との卓球による激闘が描かれていきます。

「この感覚はまぎれもねぇケンカ!! 長さ数mの台をはさんだどつき合い!!」

と、喜びを爆発させる春久ですが(3巻)、そのセリフ通り、本作の卓球シーンは、炎や煙、蛇や龍が背景に舞い、スマッシュが決まれば派手に敵が吹っ飛ぶ、ど派手なもの。球が加速するバックハンドドライブ

「爆速魔駆須駄屁!!」(ばくそくまっくすだっぺ)

を得意技とする春久。そのネーミングセンスは、さすがヤンキーです。

この技の名前にある「マックス」とは、茨城と千葉で売られている、甘いことで有名なマックスコーヒーのこと。それ以外にもご当地ネタが盛り込まれ、茨城を知る読者にとってはさらに楽しめる作品になっています。

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『行け!稲中卓球部』

完結『行け!稲中卓球部』 全13巻 古谷実 / 講談社

卓球部のバカ騒ぎに大笑いしながら、思春期ならではの葛藤も味わえる『行け!稲中卓球部』

某県某市にある稲豊中卓球部を舞台にしたギャグ漫画。90年代のヒット作で、当時、TVアニメ化もされました。

稲中卓球部のメンバーは、全員が2年生。
ギャグメイカーの変態・前野、その親友で『あしたのジョー』の矢吹ジョーを信奉し同じ髪型にしている伊沢ひろみ、比較的マジメな部長の竹田、副部長でルックスがよく女子にモテる木之下ゆうすけ、坊主頭で背が低く、一番何を考えているかわからない田中、アメリカ人とのハーフで体格がよく体臭がキツい田辺・ミッチェル・五郎の5人です。

序盤は練習風景が描かれていたり、女子部と部室を巡っての団体戦をおこなったり、地区大会に出場してライバル校に勝利したりと、それなりに卓球シーンがあるのですが、連載が進むごとに少なめに。その一方、竹田の幼なじみである不良少女の岩下京子と、伊沢を「教官」と慕う神谷ちよこがマネージャーとして部に加わって、中二らしい、実にバカバカしいギャグを繰り広げつつ、要所要所で甘酸っぱいエピソードが混ざっていきます。

10巻では、稲豊市の全中学校から集められた選抜チームに、マトモな竹田と木之下だけでなく、なぜか前野も選ばれることに。しかし卓球の腕は他のメンバーから格段に落ちる前野は、怪我を偽って練習から逃げ出す始末。居心地のいい稲中に留まるか、それとも卓球選手として(人間として?)ちゃんとするか。ギャグで自分をごまかしながらも、前野は悩みます。こんなふうに、笑いの中に思春期ならでの葛藤が入り込んでいるのが本作の特徴。誰もが自分が中二だった頃のざわめく心を思い出さずにはいられない作品です。

『 行け!稲中卓球部』を試し読みする

『ラバーズ7』

完結『ラバーズ7』 全7巻 犬上すくね / 小学館

卓球を通してつながるヤクザと女子高生。淡々とおもむきのある物語が進む『ラバーズ7』

「伊勢佐木町真剣卓球師外伝」というサブタイトルが付いている本作。ラバーズというのもRubbers(ゴム)のことで、ラケットに掛かっていて、キャラクターが卓球に少しずつ関わりを持っているのが特徴です。しかし、物語の中心となるのは、登場人物達が織りなす味わい深い恋模様です。

横浜の伊勢佐木町で、ヤクザ稼業をしている東ノ本宗則。父親から引き継いだ組は、組員がほとんど抜けてしまい、今は一つのビルにあるコンビニ「ラバーズ7」とカラオケボックス、卓球場の経営が主なシノギとなっていました。

小さくてもヤクザはヤクザ。東ノ本組には独特のもめ事解決法があり、それは卓球でした。もめている相手に宗則が得意とする卓球で勝負を持ちかけて、強引に言うことを聞かせるのです。それは組とトラブった一般人に対しても同じで、高校2年生の男子・森岡ひろみは、「ラバーズ7」での万引きが見つかり、宗則との勝負に負けたために店でこき使われているのでした。

本作のヒロインである添野なつきもまた、「ラバーズ7」での万引き容疑で、物語に関わることに。宗則はなつきを卓球場に連れていき、勝負に勝てば無罪放免、負ければ「身体で返してもらうよ」と脅します。そんな出会いから、万引きの無罪が証明された後も「ラバーズ7」で働くようになったなつき。宗則は次第に、なつきを異性として意識している自分に気づき、さらに、ひろみもなつきのことが気になっていくのでした。

宗則は、高校時代に卓球部に所属。当時からの友人として、「ラバーズ7」に出入りするニューハーフのスー(本名・須賀淳也)がいて、ひろみは宗則に卓球の相手をさせられたことで腕が上がり、学校の卓球部からスカウトされるように。そんな環境の中で、なつきも卓球に興味を持っていきます。

キャラクターの心情を細やかに描き、ほのぼのとしたムードが進む中、ヤクザ絡みの危ない展開があったり、なつきの母親に対する愛憎が描かれたりというフックが。そして、最終的にキャラクター同士の感情のもつれを解決するのは、やはり卓球勝負。卓球がつなぐ恋物語をじっくり味わってください。

『ラバーズ7』を試し読みする

『P2! -let’s Play Pingpong!-』

完結『P2! -let’s Play Pingpong!-』 全7巻 江尻立真 / 集英社

諦めない気持ちを持ち続ける主人公を応援したくなる『P2! -let’s Play Pingpong!-』

小さい頃から背が低くて足が遅かった主人公が卓球を通して成長していく、正統派のスポーツ漫画。絵柄もかわいくて、爽やかな印象の作品です。

中学入学をきっかけに、コンプレックスをはねのけて、運動部に挑戦しようとした藍川ヒロム。しかし、どの部にも入部テストがあり、どれも合格できないまま、最後にたどり着いたのが卓球部でした。卓球には全くの素人で、入部テストでは先輩に全く歯が立たなかったヒロムでしたが、諦めることなく果敢にチャレンジ。最後に見事にスマッシュを決めて、入部が許されたのでした。

この諦めない気持ちが、ヒロムの最大の持ち味。卓球部の練習は厳しく、1年生の新入部員がどんどん脱落していく中、一番体力のなかったヒロムは自主練を重ねて、先輩に認められていくのでした。

ヒロムが入部した久勢北中卓球部は、昨年、全国屈指の名門・王華学園中等部を破ったことで、一躍注目されたチーム。その時のメンバーは”破王”と言われ、その一人が入部テストからヒロムに関わった2年生の川末涼でした。マジメで自分にも他人にも厳しい川末でしたが、ヒロムの強い意思には最初から一目置き、素人である彼を地道に鍛え上げていきます。

「口惜しいと思える人間だけが強くなれる」

「口惜しい それはお前の才能だ」

という川末の言葉がヒロムの心に刺さります。

川末とは対称的に、飄々とした性格ながら県下ナンバーワンのドライブマンである遊部遊。巨体の持ち主でいつもにこやかな主将・岩熊鉄男もまた、”破王”。1年生には、小学生時代に市大会のカデット(中学2年以下)の部で優勝した”天才”眞白裕也がいるという強力な布陣の中、ヒロムはやがてレギュラーの一角に。王華をはじめとしたライバル校がひしめく公式戦に挑戦していきます。

古傷をかかえて苦しむ岩熊、王華の監督となにやら因縁のある裕也などなど、サブキャラクターにもそれぞれの物語があり、ヒロムをずっと応援し続ける早乙女乙女をはじめ、女性陣もかわいいキャラ揃い。後半には、コーチとして破天荒な女性教師も登場し、盛り上がっていきます。公式戦の最中に描かれる、ヒロムの覚醒のシーンは感動モノ。小さな主人公を応援せずにはいられなくなる作品です。

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『しらたまめぐり』

完結『しらたまめぐり』 全1巻 有馬ツカサ / スクウェア・エニックス

街の卓球場を舞台にした、ほのぼのストーリー『しらたまめぐり』

極めれば奥が深い卓球ですが、老若男女が気楽に楽しめるスポーツでもあります。最後に紹介するのは、街の卓球場に集まる人々を描いた、ほのぼのとした作品です。

引っ込み思案で臆病な性格の白坂光希(ミツ)は、中学時代の知り合いがいない高校に入学して、友達ができるか不安な高校生活をスタートさせます。そんな彼女が下校途中に偶然たどり着いたのが、柳台卓球センター。そこには同じクラスで、自分の後ろの席に座っていた玉澤杏珠(アン)がいたのでした。

アンに導かれて、久々にラケットを握ったミツ。実は幼い頃、台所のテーブルを使って、卓球経験者である祖母に卓球を習ったことがあったのです。ボールを打っているうちに祖母とやった卓球の楽しさを思い出したミツは、自然に笑顔に。そして、帰る時に勇気を振り絞って、「また…来てもいいですか…?」と言うことができたのでした。

そこから、ミツの卓球センター通いが始まります。部活ではないので、基礎トレーニングや先輩との上下関係もなく、気楽にボールを打てる日々。44歳の安西さんと36歳の佐野さんという女性コンビや、小学生の航太と祖父の仁二郎といった、年齢も性別もバラバラの人達とも仲良くなり、なによりも、明るい笑顔で自分を引っ張ってくれるアンに安心感をいだいていきます。

しかし、ミツの遠慮がちな性格はなかなか直りません。ちょっとミスをしただけで自己嫌悪に陥ったり、初対面の相手と練習試合をするだけで心臓がはち切れそうになったり。やがて、ダブルスとして市民大会に出場することにしたミツとアン。いったいどんな相手が二人を待っているのでしょうか?

卓球センターを通して偶然仲良くなったミツとアンですが、実は意外な線で結ばれていたことが、ストーリーの中でわかってきます。それは時代を越えて、人々の憩いの場所であり続ける卓球場ならではのエピソード。全1巻と読みやすく、幸せな気分になれる作品です。

『しらたまめぐり』を試し読みする

最後に

今回紹介する卓球漫画を読んで知ることができたのは、試合をただ見ているだけでは、素人には見分けのつかない卓球の面白さでした。ラバーによって打ち返す球の質が変わり、前に出るか、強烈なドライブを繰り出すか、後ろに下がってカットするか、戦型もいろいろ。各キャラクターは自分の性格や適性に合わせて戦い方を選び、敵の一手先を読んでボールを繰り出すのです。現実の選手を応援する前に、ぜひ漫画で卓球を「体験」してみてください。

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