小説 - 若合春侑作品一覧
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-盆用品を買ってくれそうな親戚は少ない上に、父親の件を尋ねられたら上手く答える自信がない。父親がいなくなってから十日が過ぎたが、具体的にいつ帰るとは言えず、ましてや磯十の家内との事を既に耳にしているかも知れないのだ。毎日、自転車を貸してくれる茂平伯父も、その妻のサダ伯母も、綜一が「貸してけらいん」と声を掛けると、以前のように「おー、綜一、アイスば仕入れたら、二、三本、置いで行げや」などとからかう事もなくなり、無言で頷くだけになった。(「海馬の助走」より) 漁港で逞しく生きる青年の成長を描いた2篇を収録。表題作は第24回野間文芸新人賞を受賞、「掌の小石」は第121回芥川龍之介賞の候補作に選ばれた。 *海馬の助走 *掌の小石 ●若合春侑(わかい・すう) 宮城県塩竈市生まれ。東北学院大学経済学部経済学科を卒業。1998年、「腦病院へまゐります。」で第86回文學界新人賞を受賞する。同年、同作が第119回芥川龍之介賞の候補作に選ばれる。同年、「カタカナ三十九字の遺書」が第120回芥川龍之介賞の候補作に選ばれる。1999年、「掌の小石」が第121回芥川龍之介賞の候補作に選ばれる。同年、『腦病院へまゐります。』が第21回野間文芸新人賞の候補作に選ばれる。2002年、『海馬の助走』で第24回野間文芸新人賞を受賞する。2005年、國學院大學文学部神道学科を卒業。
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-「おまへさま、まうやめませう、私達。私は、南品川のゼエムス坂病院へまゐります。苦しいのは、まう澤山だ。」御免ね、堪忍して頂戴ね。出会った最初が悪いのだから、もう出会いはなかった事にしておこうと決めて何度も堅く決めたのに、どうしてこうして今でも縁が続いているのか、苦しいばかりの縁なのに、なんで切れてしまわなかったのか……。 愛する男から虐げられつづける女にとって、魂の救済とは何だったのか。第86回文學界新人賞を受賞し、第119回芥川龍之介賞最終候補に選ばれた表題作と、第120回芥川龍之介賞最終候補となった「カタカナ三十九字の遺書」の中篇2作品を収録。 *腦病院へまゐります。 *カタカナ三十九字の遺書 ●若合春侑(わかい・すう) 宮城県塩竈市生まれ。東北学院大学経済学部経済学科を卒業。1998年、「腦病院へまゐります。」で第86回文學界新人賞を受賞する。同年、同作が第119回芥川龍之介賞の候補作に選ばれる。同年、「カタカナ三十九字の遺書」が第120回芥川龍之介賞の候補作に選ばれる。1999年、「掌の小石」が第121回芥川龍之介賞の候補作に選ばれる。同年、『腦病院へまゐります。』が第21回野間文芸新人賞の候補作に選ばれる。2002年、『海馬の助走』で第24回野間文芸新人賞を受賞する。2005年、國學院大學文学部神道学科を卒業。