【感想・ネタバレ】チャイニーズ・タイプライター 漢字と技術の近代史のレビュー

あらすじ

本書の主軸をなすのは、西洋のラテン・アルファベットを基にして作られた「近代」の象徴としてのタイプライターと、中国語との間にある距離感である。その隔たりゆえに中国語そのものに「問題」があるとみなされ、それを克服するための「パズル」が形作られることになる。常に西洋の「本物」のタイプライターを意識しつつ、この「パズル」を解こうとしていく人々の群像を描いていくなかで、漢字についての発想の転換や戦時中の日中関係、入力や予測変換といった現在につながる技術の起源に至るまで、さまざまな話題が展開されている。タイプライターというモノを起点としつつ、それの単なる発明史をはるかに超える射程を持った本であり、関心や専門を問わず広く読まれるべき一冊である。



目次



謝辞

序論そこにアルファベットはない

第1章近代との不適合

第2章中国語のパズル化

第3章ラディカル・マシン

第4章キーのないタイプライターをどう呼ぶか?

第5章漢字圏の支配

第6章QWERTYは死せり!QWERTY万歳!

第7章タイピングの反乱

結論中国語コンピューターの歴史と入力の時代へ



訳者解説



索引

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Posted by ブクログ

坂崎かおるさんの作家の読書道で読みたくなった。名著。

初読の印象だけど、読んでくと、多分これ造語もかなり作れたんじゃないかな、という気分になってくる。ちょっと実際のタイプライターを探して使ってみたいかもしれない。ケンリュウの趣味が古いタイプライターのコレクションらしいけど、彼なら前衛的な造語いっぱいの作品を作れるかもしれない。

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2025年09月27日

Posted by ブクログ

とっても真面目な技術の発展史。
興味のあるところだけ拾い読みしました。
それでもじゅうぶん楽しかったけど。

一文字ずつ印字するタイプライターは
表意文字である漢字には対応できない。
それを可能にするべく考えだした
先駆者たちの発想と技術がすごい!
やがてパソコンへと応用され
こうして漢字文化圏の人間も
気軽に機械で文字を打てるのね(^_^)
ありがたや。

実物写真も掲載されていますが
でっかい円盤みたいなやつ
(回転させて任意の文字を印字する)
偏と旁を別々に印字するやつなど。
うまく言えないけど…
ドット絵みたいにして打つのもあったわ。

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2023年04月20日

Posted by ブクログ

 日本語は、ひらがな+カタカナ+漢字の表音文字と表意文字の組み合わせだ。
 読み慣れていないせいだが、英語の文章のアルファベットが並んでいるのを見ていると、ぱっと見で文全体の意味を把握できない。
 日本語だと、漢字をつまみ取れば、ひと目で何となく文意を探ることができる。
 アルファベットを採用している英語の方が簡単だから、世界共通語足りえるのは当然なのだが。

 さて、本書は表意文字しか持たない中国語のタイプライター開発史である。
 タイプライターはキーボードに記されたアルファベットをクリックすると、そのアルファベットが紙に印字される。
 ところが、中国語の漢字の総数は膨大すぎて、中国語タイプライターといえば巨大な機械という風刺画に描かれるほど。

 まず中国語タイプライターを必要としたのは、宣教師だった。
 中国語版の聖書を作るためである。
 そして時が進むごとに、中国語タイプライターで、どんな内容の文章を作成するのかにより、漢字の配列が変わっていく。

 中国語キーボードは、単純にアルファベットの入力と決定的に異なるところは、入力と出力が一致しないことだ。
 この違いこそが、機能に決定的な違いを生み出した。

 普段、日本語のIMEで変換していたり、何気なくパソコンで文章を作っているけど、英語との決定的な違いは入力⇒文字変換⇒出力という、文字変換の行程を無意識に行っているのだと気づかされた。
 パソコンなら文字変換できるけど、タイプライター時代の技術で、どうやって文書を作っていたのかを改めて思い知った。

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2021年08月09日

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