【感想・ネタバレ】資源争奪の世界史 スパイス、石油、サーキュラーエコノミーのレビュー

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Posted by ブクログ 2021年10月17日

先日ネットで見つけたのですが興味を持って読みました、調べたところその本の著者である平沼氏が今年(2021)5月に本を書かれていたので早速読んでみました。歴史の好きな私には最適なタイトルでした、覇権国が変遷してきたのを資源争奪の観点から見るのも面白いですね。

イギリスの場合は石炭と蒸気機関、アメリカ...続きを読むの場合は石油と内燃機関は知っていましたが、第一章の大公開時代がなぜ始まったかの内容は始めて知りました。西洋が東洋に打ち勝った原点について理解できたような気がしました。

この本で書かれているように、内燃機関の次は、電気自動車に代表されるようにモータになると覇権国はどこになるのでしょうか。この本を読んでその様な考え方ができるようになったと思います。

以下は気になったポイントです。

・350種類以上あるスパイスのうちで、胡椒・クローブ・ナツメグ・シナモンは、世界の歴史を動かした四大スパイスと言われる。スパイスの王様は、インド南西部のアラビア海に面するマルバラ海岸が原産地で、長い間通貨と同等に扱われてきた。胡椒には、黒胡椒、白胡椒、緑胡椒などがあるが、すべ同じ実を時期を変えて収穫したものである。今でもマルバラ海岸産の黒胡椒は最高級品とされている(p18)

・ナツメグはナツメグの実の種子の部分であるが、種子の周りの網目状の赤い皮の部分はメースと呼ばれるスパイスとなり、2種類のスパイスが取れる。メースはナツメグの10分の1しか取れないことから高級品とされる。ナツメグは漢方でニクズクと呼ばれ胃腸薬として知られる(p19)

・バスコ・ダ・ガマは、アフリカ大陸最南端の喜望峰を回航し、1498年についにインド西海岸のカリカット(現在、コーチン)に到達した、東方見聞録に胡椒海岸と記されたマルバル海岸の探索を実現し、船を満杯にするほどのスパイスを持ち帰ることに成功した、これによりイスラム商人に独占されてきた利権を打破し、胡椒・シナモンを安価に手に入れる海のスパイスロードと開拓した、これにより、中継地として栄えていた、アラビア・ペルシア・ベニスは衰退した(p22)

・マゼランはインド沿岸やマラッカの制圧で活躍したが、その功績は母国ポルトガルでは評価されなかったので、スペイン市民権を得て世界終航計画をスペイン王室に持ち込んで、1519年に5隻、265名からなるマゼラン船団で出発した、マゼランはセブ島で非業のしを遂げるが、1522年9月に1隻となったヴィクトリア号(18名)が帰国した、この航路はスパイスを奪い合うスパイス戦争へと向かわせた(p24)

・モルッカ諸島の各島には国王や有力者がおり、互いが常に争っている状況であった、なかでもテルナテ島とティドレ島は二大勢力であった、先行してモルッカ諸島の占有を進めていたポルトガルは、テルナテ島と結びつき、後からきたスペインはティドレ島に与して、モルッカ諸島における覇権を争う戦闘を繰り返すことになった。ポルトガルはマラッカなどの要衝を押さえ補給基地としていたが、スペインは持たなかったので次第に疲弊していった。またスペインは補給部隊を派遣することも難しかった。そうした中、ポルトガルとスペイン本国同士が条約を締結して争いの終止符が打たれた。1526年、お互いの王室が結婚して両王家が親戚関係となった。1529年のサラゴサ条約にやり、スペインは一切の権限をポルトガルに売却することで決着がついた(p29)

・1770年、アフリカ西海岸でポルトガル船を略奪していたが、マダガスカル東にあるモーリシャス島のフランス人提督が、監督管下にある島にクローブとナツメグの苗をこっそり持ち込み移植することに成功した、またイギリスがクローブやナツメグをマレー半島のペナン島に移植するなど原産地以外の栽培地が広がり、原産地よりも生産量が増す様になりスパイス戦争は自然消滅した(p36)

・石炭で鉄の精錬を行なった場合、石炭に含まれる硫黄分により鉄が脆くなってしまっていた、1709年このデメリットを解消したのが、エイブラハム・ダービーによる石炭を蒸し焼き(乾留)することで抽出される硫黄分の低いコークスを用いた製鉄技術である(p43)

・今日の石油の主な用途となるガソリン車を世に送り出したのは、フォードではなく、カール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーである(p72)第一次世界大戦後には、旧オスマン帝国の領土は、ペルシア(イラン)とクウェートを除く中東の重要地帯全てとされ、赤線協定と呼ばれた(p78)

・日本は戦前に遼河油田(30万バレル/日)から東に山一つ超えた地点で石油炭鉱を行った経緯がある、当時は発見できなかったがもし見つかっていれば、当時の日本の石油輸入量(7.3万バレル/日)、消費量(5.8万)を考慮すると、第二次世界大戦の行方も変わっていたかもしれない(p82)

・第二次世界大戦後の石油産業の大きな変化として、それまで世界最大の石油輸出国であったアメリカが輸入国になったこと、1948年に石油生産量の59%を占めていたが、1955年には44%となり、石油の純輸入国となっている、そしてアメリカは中東の石油確保に乗り出すことになる(p85)しかしアメリカは2018年についに45年ぶりに生産量世界一位となった(p111)

・メキシコ湾岸からアジアへは、LNG船はパナマ運河を通れなかったのでスエズ運河経由で42日間、マゼラン海峡経由で50日もかかったが、2016年のパナマ運河の新運河開通により、2017年1月から25日間で日本に到着可能となった(p102)

・再生可能エネルギーの天候などによる変動性という技術的課題が、第4次産業革命により登場した、IOT(インターネットオブシング)・ビックデータ・人工知能という3種の技術革新の登場により克服されることになった。この3つを活用した革新的エネルギーシステムは、インターネット・オブ・エネジー(IOE)と呼ばれる、これでは、各発電所や需要者をIOTで繋ぎ、発電データと需要データ、さらには気象予測データをIOTで集めてビックデータ化し、そのデータをAIで解析することで、いつどこの発電所で、どれだけ発電を行うのが最適化を導き出し、それを実行する、余剰電力が発生した場合には、送電網に接続された定置型蓄電池、充電中の電気自動車に蓄電する(p145)

・1995年に発効した世界貿易機関(WTO)のTBT協定では、WTO加盟国は強制・任意規格を必要とする場合において、関連する国際規格が存在する場合は、その国際規格を自国の強制・任意規格の基礎として用いらなければならないとしている(p148)

・これまではいくら再生可能エネルギー発電を行なっても、送電網に電気が送られてしまえば化石燃料で発電した電気を混ざってしまい末端の需要者に届く電気は何で発電されたかわかないとされていたが、ブロックチェーンの技術を活用することで、需要者に届く電力の原産を証明できる様になった。パリ協定が採択からわずか1年で発行されたのは、IOEという再生可能エネルギーの導入拡大を可能にするエネルギー技術の革新があっただけでなく、必要なエネルギー変換が巨大なクリーンエネルギー市場を生み出す点もある(p155)2013年の40兆円から2030年には160兆円とされている(p156)

・再生可能エネルギーが他のエネルギー源と大きく違うのは、限界費用がゼロであること、限界費用とは生産量の増加分1単位あたりの総費用の増加分で、簡単にいうと、ある生産量を1つ増やした時にかかる費用の増加分である。発電であれば、石炭・石油・天然ガスなどの燃料費となる。それを順番に並べると、限界費用ゼロの再生可能エネルギー(風力・太陽光・地熱など)→原子力→石炭→天然ガス→石油となるので、安い順番に買われていくことになる(p171)

・ロックフェラー家の資産を運用するロックフェラー・ファミリー・ファンドは、2016年3/23に、エクソンモービルの株式を売却すると発表した(p176)化石燃料から脱却する動きは、石油メジャー各社(エクイノール、シェルなど)にも広がっている(p177)

・太陽光発電や風力発電は昼夜の差や天候によって発電が左右されるが、海洋温度差発電であればその様な変動はない、また季節変動が予測可能で通年して安定して発電可能なので、ベース電源として使える。またCO2排出がゼロであり海水は無尽蔵でタダという優れた特徴を持つ。(p201)

・再生可能エネルギー発電の需給コントロールを行うには大型蓄電池を置くことも有効だが、高性能な蓄電池を搭載した電気自動車に充電して必要な時には放電して活用する(V2G:Vehicle to Grid)の活用が始まっている(p208)

・国際標準化を勝ち取ったチャデモ(トヨタ、日産、三菱、富士、東京電力が2010年3月に設立)充電ポイントは2020.9時点で3万箇所を超えて世界で最も充電地点の多い急速充電規格となった、中国の中国電力企業連合会と共同開発することも発表l、中国側の規格発行は2021年内に完了予定でそれに基づいたEV車両が大型車両を皮切りに2021年にも可能となる見通しである(p215)

・余剰電力を貯めて使うもう一つの方法として、電力を水素にする(=P2G)がある、余剰電力を使って水を電気分解して水素を生成するものである。蓄電池にためた電気は時間と共に消耗するが、水素に転換しておけば目減りすることもない、水素ガスや液体水素といった形で運ぶことも可能(p219)

・捨てられた廃棄物を都市鉱山として位置付けるなら、日本は紛れもない資源国である、金は6800トンあり、世界一位埋蔵量の南アフリカ(6000)、オーストラリア(5000t)を超える、同様に、銀・鉛・インジウムも世界一位、銅は世界2位、白金・タンタルは3位となる(p282)

2021年10月16日作成

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Posted by ブクログ 2021年06月27日

日本の基礎研究は海外のイノベーションで活用されていることや環境に対する取り組みはコロナが始まる前から世界で始まっていた。世界的の潮流が分かりやすく描かれていた。2014年の都知事選で小泉純一郎と細川護熙タッグでいまこそ脱原発し、自然エネルギーに転換すべきと訴えていたのが記憶によみがえった。

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Posted by ブクログ 2022年12月29日

世界史の内容は半分くらいでタイトルとのギャップは感じたが、近年のエネルギー、資源についても学ぶことができたので私としては良書。資源の考え方、見方がよく定まってない人、知識がない方におすすめ。

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Posted by ブクログ 2022年06月19日

石炭から石油を作る人造石油という技法、日本統治時代に発見できなかった満州の石油など、当時を象徴するかのような事実に触れて胸熱。

この本には明確に書かれないが、シェールガスとシェールオイルの生産本格化により、世界1位の原油生産国となったなったアメリカが中東に関心を寄せなくなり、カタールは輸出先を求め...続きを読むて安価でLNGガスを欧州へ輸出。そうなるとロシアがLNGの売り先を探して日本にすり寄る、というのが最近までの出来事。中国にもシェールガスが大量に埋蔵されていて、アメリカの技術が欲しい。アメリカや中東から化石燃料依存の状態を脱却したい欧州はカーボンニュートラル路線へ。勿論、LNGや原子力もクリーンエネルギーに含めた。日本はこの動きに乗じて、本当は原子力化を再開したい所。

これらは極めてザックリとした構図で整理ができるような気がするが、原子力も齧り、シェールガスもメタンハイドレードも半端な感じがする中国。欧州や日本より10年遅らせ、2060年にカーボンニュートラルを設定した意図がどこにあるのかが不明瞭であった。本著で解説してくれる蓄電池に必要なコバルト、風力発電タービンに必要なジスプロシウム、これらネオジム磁石に用いられるネオジムなどのレアアースがヒントかと思った。世界のレアアースの9割は中国に依存されていた。どの国もカードを持ち、戦略的に切り始めている。

日本は大丈夫か。

そうした中で確かにサーキュラーエコノミーを、脱石油と同方向の脱プラスチックに限らず、希土類の回収という観点で強化していくのは重要な戦略になるかも知れない。

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Posted by ブクログ 2022年02月13日

なんで大航海時代まで欧州はわざわざ高い金を払ってまで西アジアの商人からスパイスを買っているのか疑問だったが、航海技術が未発達だったこと、西アジアの商人がスパイスの原産地であるインドや東南アジアについての情報を隠していた、という説明はストンと理解出来た。

再生可能エネルギーとかサーキュラーエコノミー...続きを読む(資源のリサイクル)って環境政策のイメージが強かったけど、今や欧州を中心に立派な市場になっていることを知って興味深かった。
日本がこのムーブメントで主導権を握り資源大国になれることを期待したい。

資源は人間によって資源の地位を得たという主張はまさにその通りだと思った。

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Posted by ブクログ 2022年02月27日

スパイスの話はとても興味深かった。欧州列強の移り変わりなどは特に。それだけにさらに踏み込んだ話があるとよかった。スパイスも広義の資源であるという視点はおもしろいので、この類のテーマがもう一つあるとなおよかった。

そのほかはわたしの知っている話しだったり、著者のほかの本での主張と重なる部分も散見され...続きを読むたり、世界史というより産業リポートといった印象を受けた。

こってりした歴史ものと期待して読まなければ楽しめると思う。

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