【感想・ネタバレ】人類VS感染症のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

感想を一文で申し上げるならば、非常によくまとまっており、面白くためになる作品だったと思います!!

タイトルにもある通り、本作は人類と感染症との絶えざる闘いを歴史的事柄を交えて説明しています。病原菌が種としての生き残りをかけて宿主に感染し子孫を増やすという構図に、私はR.ドーキンスの『利己的な遺伝子』をふと思い出しました。

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例えば天然痘。死亡率は20%程度でクスリもなかった当時、人々にできるのはただ祈ることだけ。その威力はスペイン人ピサロが南米インカ帝国を滅ぼす際に、人口1000万人から130万人までへと激減させたほど。
そんな天然痘を予防することに成功したのは英国の医師ジェンナー。彼は近所の牧場で牛の病気の牛痘にかかった農夫たちが天然痘にかからないことに着想を得て、牛痘の膿を人に接種し天然痘への予防法への端緒となりました。

ルネサンス期に流行したペスト。英仏100年戦争をも休戦させたこの病気はネズミとノミを媒介し感染を増やし、人間に感染した後は空気感染で拡散していった。病気は人心を荒廃させ、流言飛語によって多くの罪のないユダヤ人が殺されたという。

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このように、かつてはシルクロードを伝って物品と共に伝播した病原菌は、大航海時代にはより大きな範囲を行き来するようになり、今や飛行機を使うことで数週間で世界中を伝播することが可能になった時代に我々は生きています。

こうした中で特効薬が未だになく母子感染がおこりうるAIDSや、妊娠中にかかると胎児に障がいをおよぼす可能性がある風疹、これと言った特効薬がない麻疹等々、我々が気を付けなければならない感染症は未だに数多くあります。その一部はワクチンを打ちさえすれば感染の危険から逃れられるという事であれば、やはり使用を考えるというのが一般的な厚生の考えであることは間違いないと思います。

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本作は、元々コロナワクチン接種をうつかどうかで迷ったことで買った本です。ワクチン接種には反対でしたので。
結局、手元に本が届く前にすでにワクチンは接種してしまいましたが、特効薬がない中でのワクチンの有効性や感染症の拡大が引き起こす悲劇について非常によく理解できました。
内容が非常にまとまっており語り口も優しいので、私も中学生の娘にも読ませてみたいと思っています。また、妊婦さんや若い女性は自分の体を守る上でも読んでみることをお勧めします。ジュニア文庫とありますがジュニアに独占させておくのがもったいないほど。感染症について具体的にはよくわからない私みたいな大人にも読んでほしい作品です。

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2021年10月22日

Posted by ブクログ

2020年春から生活に大きな影響を受けているコロナウイルスのこと。
ご多分にもれず私もまた、テレビやSNSを通じて発信される情報の数々に、強く左右されたり憤りを感じる日々を送っています。
そうした状況の中でも、少しでも能動的でありたい、自分なりに基礎知識を身につけて日々を過ごしたい、という気持ちから手にとった本書。
おおお、自分から自然科学分野の本を読みたいと思って購入するのは、人生で初めてかもしれない!
典型的な文系人間なのです。

本書は、感染症学、公衆衛生学、児童文学を専門とする研究者である岡田晴恵先生による、感染症史の入門的解説書。
天然痘、ペスト、新型インフルエンザといった代表的な病の原理と社会的影響を紹介するとともに、岩波ジュニア新書という若者向けレーベルの一冊ということもあってか、エイズや風疹の予防等についても多くページがさかれ、丁寧に解説されています。

インフルエンザウイルスの遺伝子構造に関する解説の部分などで、ところどころ理解がつっかえながらも、なんとか最後まで読み通せたのは、それぞれの感染症が人の社会にもたらした影響が、驚くほど今の状況と似ていて、刺激的だったから。
そして、新型インフルエンザについて、途上国への経済援助と対策プログラムの装備を援助することが、グローバル化した現代において必須であることは、コロナウイルスの鎮静化についても同じことが言えるのではないかと感じました。
そう考えると、感染症の問題は、感染症の専門家だけが解決策を提示できるのではなくて、一つの国の行政の、そして国家間の政治の問題でもある。
よく行政側の責任者が「専門家に聞いて」という言葉を口にするけれど、そして専門家の意見を正確にヒアリングすることは絶対に必要なことだけれど、少なくとも行政や物事の仕組みを司る側の人間には、「その道の専門家としての」責任が、ある。
もう少しその自負と自覚をもって、行動したり発言したりして欲しいな、と感じてしまう人が時折いることが、今、すごく残念です。

マスメディアに登場する機会が多いからか、週刊誌などで批判をうけることもある、岡田先生。
でも、私は、シビアな事柄を述べていても、どこかユーモアや温かさが透ける彼女の発言や考え方が、好きです。
感染症は恐ろしいし不安だけれど、立ち向かうためには命を大切にして守るんだという前向きな気持ちが力になることを、教えてくれる一冊だと思います。

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2020年08月06日

Posted by ブクログ

歴史は繰り返す。ペストや天然痘のときと現代人の反応がそれほど変わらないのは少し恥ずかしい。HIVはワクチンもまだ開発されていないなど知っているようで知らず、感染症はまだ終わっていないのだと驚く。

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2020年04月12日

Posted by ブクログ

人類が体験してきた、感染症との戦いを学べることができる本。
ハンセン病、天然痘、ペスト、エイズ、インフルエンザ等正しい知識を知っておくことで、感染を防いだり、我が子にいらぬハンデを与えずに済むことができたりする。
新型コロナウィルス肺炎のように、人類が未だに対峙していない未知のウィルスが常に生まれて、私達人間を介して繁殖しようとしている。
こんな時代の基礎知識の一つとして感染症についての理解を深める学びは続ける必要があるのだと思う。

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2020年03月21日

Posted by ブクログ

 ハンセン病、天然痘、ペスト、風疹と麻疹、エイズ、鳥インフルエンザ、の順に人類を危機を陥れた病原菌やウイルスについて、非常にわかりやすく解説してある本。 
 大まかなことは知っているけれど、ときどき驚くようなことが書かれている。
 
 例えば、スペイン人が持ち込んだ天然痘によって、新大陸のインディオたちが数百万から数千万亡くなったとの統計はなんとなく知っていても、半世紀前の天然痘の根絶のために、医師団が紛争地帯や未開の地域に乗り込み、命がけでワクチン接種を続け、ついに根絶した経緯などは知らなかった。
 
 または、第一次大戦時にパリを射程圏内に捉え、敵の4倍の兵力で包囲していたドイツ軍が新型インフルエンザ(一般的には「スペイン風邪」と言われている)の猛威により、兵士がバタバタと倒れたことにより撤退を余儀なくされ、敗戦したことなど。このときインフルエンザが流行しなければヒトラーも出現しなかったじゃないかと想像してしまう。
 
 風疹や麻疹にいたっては知らないことだらけだった。 
 妊婦が妊娠初期に風疹にかかると生まれてくる子供が難聴になる(先天性風疹症候群)ことや、麻疹のワクチン接種を努力接種義務(なるべく受けるようする)にしている日本は、ワクチン接種をしていない人もかなりおり、そういった人たちが海外に行って麻疹ウイルスをばらまいて、その国で大勢の犠牲者をだしていること。
「日本は車と麻疹を輸出している」と非難されているらしい。

 人類と感染症の戦いに終わりはない。感染拡大を防ぐことには協力できるが罹患してしまったら完全に他力本願だ。医学の進歩と行政の対応に期待するしかない。鳥インフルエンザに関してはすぐにでも起こりうる可能性があるので、これだけでも一読の価値あり。

 それにしてもジュニア新書は面白い。
 ジュニア新書という名前だと大人が手を出さないから、プライオリティー新書とかに名前を変えて大人の入門書として売り出してもいいと思う。

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2017年11月08日

Posted by ブクログ

ルキノ・ヴィスコンティ「ベニスに死す」、
ヴェルナー・ヘルツォーク「ノスフェラトゥ」、
などから、感染症と、小説や映画などで行われた表象について、調べたいと思っていたが、世間はコロナコロナうっせぇ状況になってきたのでもううんざりだーっと思って、2004年の本を読んでみた。
SARSとかが流行っていた頃だ。
なかなか面白い。
一番面白く読めたのはペストの歴史、死の舞踏の絵画、あたりなので、やはり病と芸術についてはぼちぼち調べていきたい。
ところでこの作者、最近は「コロナの女王」と呼ばれているらしい。
どうなんだ……。

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2022年04月26日

Posted by ブクログ

インフルエンザの基本的なことが書かれておりわかりやすかった 新型が流行る前に書かれており岡田さんの人間的な芯の優しさが読み取れた

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2021年01月30日

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