【感想・ネタバレ】自然の哲学史のレビュー

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Posted by ブクログ

西洋哲学史のなかで「自然」の概念がどのように論じられてきたのかということを紹介し、現代の哲学において「自然」がどのような意味で問題となっているのかを論じている本です。

著者はフランス哲学の研究者であり、古代以来の哲学史をたどって「自然」の概念にまつわる問題を整理するさいにも、フランス現代思想の観点がはっきりと示されています。具体的には、「自然」を「人為」との対立の枠組みのなかで理解する見方や、「自然」を「一なる全体」として理解する有機体論のような見方を、脱構築的な手法によって批判するという試みがおこなわれています。

そのうえで、シモンドンとドゥルーズの議論が参照され、前者の「前個体的存在」という概念が、現代における自然哲学の新しい可能性を示していると主張するとともに、後者の「自然」と「機械」の対立を乗り越える哲学の現代的な意義について考察をおこなっています。

正直なところ、前半の哲学史についての議論は、フランス現代思想的な立場からの整理になっていて、著者の問題意識は理解できるものの、西洋哲学史をこのようなしかたで概括することはやや恣意的ではないかという気もします。とはいえ、「幕間」にデリダの名前が出されていることからもわかるように、「自然」にかぎらず哲学史の脱構築を通して当該テーマにかんする議論の領域を増殖させていくのは、スリリングな読書体験でした。ドゥルーズやシモンドンについての議論は、それ自体としてもおもしろく読めましたが、こちらの議論をメインに据えてほしかったようにも思います。

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2021年07月11日

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